中小タスクが行く!
第12回:HACCP導入編
2019年 7月 22日
HACCP導入で
販路拡大を目指せ!
食品事業者必見!HACCP完全義務化へ
輸入食品の増加など、食のグローバル化が進む中、食の安全についても世界的な基準への対応が求められるようになりました。それがHACCP(ハサップ)です。
「Hazard Analysis and Critical Control Point」の頭文字をとったもので、「危害要因分析重要管理点」と訳されます。
食中毒や異物の混入などの危害要因を把握した上で、危害の防止につながる特に重要な工程を継続的に監視・記録し、製品の安全性を確保する衛生管理の手法です。従来行われてきた最終製品の抜きとり検査に比べて、より効果的に問題製品の出荷を防ぎ、安全性の向上を図ることができます。
【 HACCP方式と従来方式の違い 】
HACCPは、もとはNASA(アメリカ航空宇宙局)で宇宙食の安全確保のために生み出された管理手法でした。その後、国連の機関により国際的な食品規格として公表され、現在では、アメリカ、EUをはじめ、世界各国で導入されています。
日本でも、2018年に改正食品衛生法が成立し、2020年に施行、1年の猶予期間を経て2021年までに「HACCPに沿った衛生管理」が完全義務化されることが決定しました。
では、具体的にどのような対応が必要なのでしょうか? 続きを見てみましょう。
HACCPの「2つの基準」
HACCPの対象となるのは、食品の製造、加工、調理、販売など、食品を扱うすべての事業者です。食品スーパーや飲食店も含まれる点に注意が必要です。
導入にあたっては、次のいずれかの基準によることとなります。
(A)HACCPに定められた7原則12手順に沿って行う
「HACCPに基づく衛生管理」
(B)弾力的な運用による
「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」
対象事業者は以下のとおりで、(B)「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の基準の対象となる事業者を除き、(A)「HACCPに基づく衛生管理」の基準によることとなります。
(B)「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象事業者
- 小規模な製造・加工事業者(従業員数50人未満)
- 併設された店舗で小売販売のみを目的とした菓子や豆腐などを製造・加工する事業者
- 提供する食品の種類が多く、変更が頻繁な飲食店等の業種
- 一般衛生管理のみの対応で管理が可能な業種
新たな設備導入は必要か
(B)「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象事業者が行う、7原則と12手順
上記「7原則と12手順」を見ると、「なんだか大変そうだ。何か新しい設備が必要になるのでは?」と考える方も多いと思いますが、その必要はありません。
HACCPは、従来から食品を取り扱う事業者に求められてきた衛生管理を、製品や工程の特性などをふまえた衛生管理となるように計画策定し、記録し、見える化するものです。既存の設備を前提とし、ハードの整備を求めるものではないからです。
具体的には、
- 冷蔵、冷凍庫の管理→温度を毎日記録する
- 二次汚染の防止→水道の蛇口をレバー式に変更
- エアシャワーの設備がない→粘着ローラーで対応
- 金属探知機導入の代わりに目視を徹底する
など、ちょっとした工夫をすることでもHACCPの導入は可能です。
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理
さらに、(B)「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象となる小規模事業者の場合は、事業者団体が作成し、厚生労働省が確認する手引書を利用して、温度管理や手洗い等の手順を定め、簡便な記録を行うこととなります。つまり、原材料や製造工程の特性をふまえた手引書に沿って比較的容易に取り組めるものなのです
手引書のイメージ
HACCP導入のメリット
農林水産省の「食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況実態調査」によると、HACCP導入のメリットとして回答が多かったのは、
具体的には、
- クレームやロス率が下がった
- 取引先からの評価が上がった
- 従業員の衛生管理意識が向上した
- 工程ごとに確認すべきことが明確になった
- 海外販路の開拓につながった
などが挙げられ、特に従業員の衛生管理意識の向上が大きいとされています。
さらに、同じ調査によれば、平成30年度の食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況は、全体の41%。HACCP導入に二の足を踏んでいる事業者も多いようですが、このまま未対応が続くと、保健所の指導対象に、ひいては業務停止などということにもなりかねません。
完全義務化まで時間がありません
2021年の完全義務化までは長いようであっという間。今こそHACCP導入に取り組みましょう!