中小タスクが行く!
第26回:インバウンド対応編
2020年 2月 17日
インバウンドを取り込む効果的なサービス設計とは?
- https://chibra.co.jp/taiken/jnto-2018year-repo/ ※株式会社地域ブランディング研究所「インバウンド コト消費ラボ」掲載のグラフをもとに作成
増え続ける訪日外国人旅行者数
近年、「インバウンド」が注目を集めています。 インバウンドとは、一般に外国人観光客が日本を訪れることを指します。政府観光局の調査によると、2019年の訪日外国人の数は3,188万人※1で過去最高を記録。インバウンドによる消費額は4.8兆円で、2011年の8,135億円から8年連続で増加しています※2。
また、政府は2016年3月に策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」の中で、訪日外国人数を2020年に4000万人、30年に6000万人に増やすことを目標として掲げており、この先もインバウンドの要となる観光戦略のいっそうの強化が期待できます。
3大消費項目は「買い物」「宿泊」「飲食」
ちなみに、2018年度のインバウンド消費額の構成比を見てみると、「買物代」が34.7%と最も高く、次いで「宿泊費」が29.3%、「飲食費」が21.7%となっています※2。こうした消費に関わる企業にとって、インバウンドの増加は大きなビジネスチャンスと言えます。
- https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/visitor_trends/ ※1 出典:日本政府観光局(JNTO)
インバウンド対応、3つのメリット
ところで、インバウンド対応は企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?代表的なものは以下のとおりです。
(1)国内の消費額の減少をカバーできる
インバウンド市場は拡大傾向にあるため、少子化などで先細りする国内の消費額の減少をカバーできます。
(2)比較的競合が少ない
早い時期に着手すれば、比較的競合が少ないことから、市場におけるシェアを高めることができます。
(3)国内再認知
例えば「忍者体験」「和食づくり体験」といった外国人観光客に向けた体験型サービスなどが彼らの間で話題になることで、国内消費者にも企業や商品・サービスが再認知されます。
では、打つべき具体的な策は? マンガの続きを見てみましょう。
サービス設計、4つのポイント
マンガに登場したビジネスホテルの取組みは、インバウンドの呼び込みに一定の効果を発揮しました。このように成果につなげるには、次の4点に留意してサービス設計を行う必要があります。
その1 外国人観光客の受け入れ環境整備
外国人観光客がストレスなく滞在できる環境を整えましょう。具体的には以下のような対策が挙げられます。
(1)多言語に対応できる環境を整備
<例>
- 館内の案内表示を多言語対応に変更する
- 外部講師を招いてスタッフの英会話による接客研修を行う
- タブレット端末等による翻訳ソフトの使用
- 外国人スタッフの採用
- 簡単な会話文を英語や中国語でボードに記載し指差しで会話ができるようする
など。
(2)無料Wi-Fi環境を整備
(3)クレジットカードやQR決済など、キャッシュレスへの対応
(4)特定の宗教や考え方に根差した食事への対応
<例>
- ハラール(イスラム教〔ムスリム〕の戒律で食べることが許された食べ物)対応のメニュー設定
- コーシャ認定(ユダヤ教で定める食べ物に関する規定)対応のメニュー設定
- ベジタリアンやヴィーガン用のメニュー設定
など。
取組み内容によっては、国の助成金・補助金を活用するのも一つの方法です。過去には宿泊施設においてWi-Fiの整備、自社サイトの多言語化などインバウンド対応事業の経費の一部を支援する補助金が実施されています(「宿泊施設インバウンド対応支援事業」/観光庁)。
- http://www.mlit.go.jp/kankocho/page06_000142.html 観光庁「宿泊施設インバウンド対応支援事業」
その2 インターネットを活用したマーケティングの実施
比較的手軽で低予算から始められるSNSやブログ等、インターネットを活用した集客、販売促進、ブランディング等に取り組みましょう。
その3 体験型サービスの導入と越境EC対応
日本ならではの体験をしたいと考える訪日観光客は多いでしょう。例えば、サービスであれば、「うどんづくり体験ができる宿泊施設」「古民家をリノベーションしたゲストハウス」など、体験型のサービスを導入することで、訪日リピーターになってもらう取り組みが考えられます。
物販であれば、越境ECに対応することで、体験した商品を帰国後にリピート購入してもらうことにつながります。
その4 国内日本人旅行者と外国人観光客の対応
国内日本人旅行者と外国人観光客と並行してサービス提供する場合には、両者に満足してもらえる環境づくりに留意しましょう。外国人観光客にばかり目が向いてしまい、日本人旅行者への対応が疎かにならないようにする注意が必要です。
インバウンド対応は今からでも遅くない!
コラム前半で紹介した予測推移の表を見ても分かるように、インバウンド対応は今から取り組んでも遅くありません。また、海外・国内のすべてのお客様に対するサービスのありかたを経営者が再考する機会でもあります。これから来る様々な機会に向け、戦略を立てていきましょう!