ビジネスQ&A
仮想通貨はビジネスに使えるものでしょうか?
当社は製造機械のメーカーです。小規模ながら輸出も手がけています。海外の顧客から仮想通貨での決済を打診されることが、最近出てきました。仮想通貨はビジネスに使えるようなものなのでしょうか?
回答
仮想通貨はブロックチェーンという技術を活用したバーチャルな私的通貨のことを指します。外国との決済においては便利な側面もありますが、中央銀行が管理するような正式な通貨ではありません。リスクを承知のうえで活用することが重要ですが、現時点ではリスクが多いものであると認識すべきでしょう。
【仮想通貨とは】
仮想通貨とは、コンピュタの暗号化技術を用いて取引される、デジタル通貨の総称です。すべてがデジタルで行われるため、通常の通貨のような紙幣や硬貨は存在しません。
世界中にはさまざまな仮想通貨があります。2018年現在では1,500種類以上あると言われており、その数は増加し続けています。
仮想通貨は国家が発行するものではなく、私的なものであるということをまず大前提としてください。つまり、国家の中央銀行が国家の信用を後ろ盾に発行する通貨とは、根本的に成り立ちが違います。
お互いに、この仮想通貨は信用できると思った人同士が、その仮想通貨に参加し、売買や決済を行っているというのが実情です。
投機目的で仮想通貨の売買を行っている人も多く、通貨の価値が一日で数十%乱高下することも、決して珍しいものではありません。
【仮想通貨を使用するメリット】
しかし、そのような仮想通貨をビジネスで使用するケースも、特に海外では増えているようです。なぜでしょうか。
仮想通貨をビジネスに使用する最大のメリットは、送金のスピードと手間、およびコストでしょう。通常の通貨で海外へ送金しようとすると、為替や両替の問題が出てきます。ドルのような基軸通貨であれば、回収後、ドルのままでも使用用途がありますので、必ずしも円に両替する必要はありませんが、それ以外の通貨を使用した場合は、日本では通用しませんので、円に両替する必要があり、両替手数料が発生します。
また、商談が成立した日の為替と、決済をする時の為替が異なっていた場合に、為替差損、為替差益が発生します。差益になればまだいいのですが、どちらにせよ、商談時に日本円でいくら払えばいいのか、あるいはいくら入ってくるのかが読めないというのも問題です。送金に時間がかかるとリスクは大きくなっていきます。
銀行間取引の場合は、これに加えて送金の手数料もかかってきます。これまでの商習慣で取引しようとした場合、これらの手数料やリスクを価格に上乗せする必要があり、どうしても割高になってしまうといったケースもあると思います。
仮想通貨を使用した場合は、即時に送金することが可能で、各種手数料や為替のリスクを最小限にすることができます。決済もスピーディに進むことから、ビジネスがスムーズに進みます。
このメリットを感じている人々が、ビジネスにおいて仮想通貨を使用しているのです。
【仮想通貨を活用する注意点】
(1)決済後は通常通貨に換金すること
仮想通貨は、先述した通り、まだ投機目的で売買されることが多く、価格が乱高下することも珍しくありません。また、国家の信用の後ろ盾もないことからいつ破綻するか分かりませんし、仮に破綻したとしても何の保証もありません。
現時点では、決済に必要な分だけを換金し、決済が終わると同時に、仮想通貨を売って通常通貨に換金することでリスクを避けることが望ましいです。
(2)現地の法規制を守ること
仮想通貨は国によっては違法とされていたり、厳しい取引制限がある国もあります。取引先の国の実情をよく調べ、知らぬうちに現地の法を犯すことのないよう、注意を払うべきです。仮想通貨への対応は国によってまちまちですし、まだ新しいものですので、様子見をして法規制をかける国もあります。前回の取引で、大丈夫だったからといって、今回の取引も大丈夫とは限りません。必ず最新の情報を元に取引するようにして下さい。
【仮想通貨の今後】
仮想通貨はまだ始まったばかりのものです。利便性の一方で、マネーロンダリングの温床になるという可能性も指摘されるなど、今後どうなっていくのかを予測するのは現時点では困難です。
日本でも大手金融機関が研究を始めるなど、10年後には普通の存在として扱われている可能性もあります。
現時点で一つだけ言えるのは、ビジネスの運転資金を仮想通貨で保有するのはたいへんリスクが高いということです。あくまで現金の代替として一時的に使用するツールくらいに思っておいた方がよいでしょう。
- 回答者
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中小企業診断士
遠藤 康浩
- 関連情報
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J-Net21
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