ビジネスQ&A
株式会社の会計帳簿の作成と保存について教えてください。
会社法上、株式会社においては、どのような会計帳簿を作成し、保存しなければならないのでしょうか?税法上の会計帳簿の作成・保存と合わせて教えてください。
回答
会社法では会計帳簿の形式について、明確な規定をおいていません。法人税法には詳細な帳簿の規定が存在しますので、これを参考にするのがよいと考えます。なお、会社法上の会計帳簿の保存期間は10年、法人税法上の帳簿の保存期間は原則として7年です。
【会社法の規定による会計帳簿】
会社法では、株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない(第432条第1項)と規定しています。
この規定中の法務省令とは、会社計算規則のことです。
会社計算規則は、その第二編を会計帳簿と題して、会計帳簿に付すべき資産や負債の評価などについて規定しています。しかし、会計帳簿とはどのようなものかということについては、具体的に規定していません。
そうすると、会社計算規則第3条の「この省令の用語の解釈及び規定の適用に関しては、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行をしん酌しなければならない。」という規定にしたがい、会計帳簿という用語を解釈していくことになります。
その解釈の指針となる「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行」とは具体的にはなんでしょう?
それは、「企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものであって、必ずしも法令によって強制されないでも、すべての企業がその会計を処理するに当ってしたがわなければならない基準」として、昭和24年に設定された企業会計原則と考えられます。
企業会計原則には、会計帳簿について、次のような記載があります。
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則にしたがって、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
正規の簿記とは一般に、網羅性、立証性(検証可能性)、秩序性の3つの要件を満たすものと言われています。
以上のように、会社法の規定からは、会計帳簿の具体的な形式を読み取ることができません。
【税法の規定による帳簿書類】
一方、法人税法は、青色申告法人が備えるべき帳簿書類を明確に規定しています。
まず、法人税法施行規則の第54条において、「青色申告法人は、すべての取引を借方および貸方に仕訳する帳簿(次条において「仕訳帳」と言う)、すべての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿(次条において「総勘定元帳」という。)そのほか必要な帳簿を備え、別表二十一に定めるところにより、取引に関する事項を記載しなければならない。」と規定し、帳簿とは何かを具体的に示しています。
続く第55条で、仕訳帳には取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目および金額を記載すべきこと、総勘定元帳には、その勘定ごとに記載の年月日、相手方勘定科目および金額を記載すべきことを規定しています。
そして、第54条の帳簿と、以下の書類を7年間(注)保存することを要求しています(同規則第59条第1項)。
(注)ただし青色欠損金の繰越し制度の適用を受けるためには、平成20年4月1日以後に終了した欠損金の生じた事業年度においては9年間、平成29年4月1日以後に開始する欠損金額の生ずる事業年度においては10年間、帳簿書類を保存する必要があります。
- 青色申告法人の資産、負債および資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたそのほかの帳簿
- 棚卸表、貸借対照表および損益計算書ならびに決算に関して作成されたそのほかの書類
- 取引に関して、相手方から受け取った注文書、契約書、送り状、領収書、見積書そのほかこれらに準ずる書類および自己の作成したこれらの書類で、その写しのあるものはその写し
以上の法人税法が要求している帳簿が、正規の簿記の原則を満たす唯一の方法とは言い切れませんが、正規の簿記の3要件を満たしていることは確かです。
したがって、法人税法上の帳簿を作成すれば、会社法上の会計帳簿を作成したことになると考えられます。
なお、会社法における会計帳簿は、事業に関する重要な資料とともに10年間保存しなければなりません(第432条第2項)。
この期間は、法人税法の規定よりも長いので、10年間保存すれば、当然に法人税法の保存期間の要件を満たすことになります。
なお、税法規定では一定の要件を満たす場合、税務署長に申請し、承認を受けたときは電子データでの保存が可能です。
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