ビジネスQ&A
競合製品との比較について、やり方とポイントが知りたい。
2021年11月 5日
新しいECモールと出店サポートをパッケージにしたサービスを始めました。類似の既存サービスに比べて価格は高めですが、富裕層の集客が見込めることと、運営がお任せできてラクな点は優れていると思います。ただ、競争相手も多いため良い点をうまく伝えられていません。比較表を作ろうと思うのですが、具体的な手順とポイントが知りたいです。
回答
比較の目的を明確にし、比較によって伝えたい優位性が表現できるように比較対象と比較項目を選びます。比較対象と比較項目の数を絞りこんで買い手が購入を検討しやすいように配慮すること、できるだけ客観的に比較することがポイントです。
比較表を作るタイミングは商品開発段階か、または販売段階が多いと思います。前者では既に市場にある製品・サービスと比較調査した結果をまとめ、ニーズやポジショニングを明確にするために行います。後者では買い手の選択肢となり得る競合品と比較検討した結果を提示し、商品の優位性を表現するために行います。ここでは、後者の販売段階の場合を念頭に手順とポイントを解説します。
① 比較対象の選び方
比較する対象は、買い手が自社の商品を選ばない場合に、代わりに選ぶ可能性のある商品にするのが原則です。ライバルとして意識している直接的な競合品があれば当然含めます。多数の同種製品・サービスが存在する場合は、ある程度価格帯やスペックが近く自社商品のターゲット顧客と重なっている範囲に絞り込みます。例えば、廉価な男性化粧品を売るときに女性向け化粧品と比較する必要性は低いですし、高価格帯の高級な男性化粧品と比べても(そこからのスイッチングを狙っているのでない限り)あまり有効な比較にならないということです。
また、これから新規に購入するのでなくても、多くのターゲット顧客が既に使っている同種の商品・サービスがある場合はそれが比較対象となります。ECモールであれば楽天やAmazonなど誰もが知っているものと比較しておくと新製品の特長が際立ちわかりやすくなるでしょう。
なお、まだ何の製品・サービスも使っていない買い手が多い場合は、全くの別手段を比較対象に含めることもあります。ECモール未出店の企業に対して「店舗販売のみで売る」「自社で注文を受け、個別に出荷する」などと比較する場合がこれに当たります。購入に先立ち新しい販売方式導入の意思決定も合わせて行ってもらう必要があるときに有効です。
② 比較項目の選び方
買い手が購入の際に判断基準にする項目については必ず入れるのが原則です。商品によって選択時に重視される項目が変わるため、優先度の高いものから入れていきます。「サイズ・容量・材質」などが上位に来る商品もあれば、「品質・サービス・期待効果」などが上位に来る商品もあります。なお「価格」は通常必須の項目ですが、単純比較が難しい場合は「初期費用」「維持費用」などに分けて記載すると良いでしょう。質問者の場合、ECモールなので初期登録料、月額費用、決済手数料、商品点数上限、利用者数、利用者の特徴などは必須になると思います。富裕層が多いという点は「利用者の特徴」項目の記載事項になります。
この他に自社商品が優れていると思う項目があれば、加えていきます。質問者の場合、運営がラクということなので、「運営の手間」が比較項目として入ります。
ここで重要なことは、自社商品の弱点である項目についても入れる姿勢です。強み弱みは必ずあるはずなので、納得のうえで購入してもらうためにも避けずに入れましょう。その結果、富裕層が来訪するが絶対数は少ない、運営の手間がかからない代わりに維持費用は余分にかかる、などメリットとデメリットを踏まえた購入判断がしやすい比較表が作れます。
③ 比較の方法
できるだけ客観的に、買い手が納得できるような根拠を持って記載することが重要です。数値で表現できる定量的な比較項目については、なるべく数値を記載します。数値での表現が難しい定性的な項目については、○×△で優劣判定を記載することが多いですが、その場合でもなぜその判定をしたのか、説明できるようにしておく必要があります。
また、良い評価ばかり並べるとかえって説得力が落ちることがあるので要注意です。自社商品の優劣判定に○ばかりが並んだ比較表を時々見かけますが、そのような状態になっている場合は判定の客観性が疑われ比較表自体の信憑性を低下させていないか見直すことをお勧めします。
まとめ
適切な比較表が作れると、自社商品の優位性が際立って伝わりやすくなり、販売に有利に働くことが期待できます。実務上はパワーポイントの1ページに収まるように比較対象は最大5製品以内、比較項目は最大10項目以内くらいを目指すことで買い手側に理解しやすい比較表が作れるでしょう。
- 回答者
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中小企業診断士 橋本 良一
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