ビジネスQ&A

「日本一おいしい」とのぼりに表示する際の、注意点を教えてください。

ラーメン店を経営しています。当初は比較的売上げがよかったのですが、最近、隣にチェーンのラーメン店ができたため、次第にお客さんを取られつつあります。そこで、「日本一おいしい」といったような派手なのぼりを立てて客足を戻そうと思うのですが、何か問題はあるのでしょうか?

回答

「日本一」や「世界初」といったような最上級の表現を使って宣伝することは、その客観的な裏づけに乏しい場合、「不当景品類及び不当表示防止法」や「不正競争防止法」により、その使用を制限されてしまうことがあります。実際に賞を取ったり、雑誌で紹介されたりしたことがありましたら、そのことを宣伝として使うなど、客観的に偽りのない表示を心がけましょう。

宣伝・広告のための表示については、「不当景品類及び不当表示防止法」(「景品表示法」と言います)という法律により、規制されています。この法律は、取引に関連して不当な景品類を提供したり、不当な表示を行ったりすることによって生じる顧客の誘引を防止することにより、一般消費者の利益を保護することを目的としています。

なお、ここでいう『表示』とは、商品・容器による広告をはじめ、ビラ・パンフレット、看板・ネオンサイン、インターネット、実演、新聞・雑誌・放送による広告が、すべて含まれます。

景品表示法において、禁止されている「不当な表示」は大きく

  1. 商品・サービスの品質、規格、その他の内容についての不当表示(優良誤認
  2. 商品・サービスの価格、その他の取引条件についての不当表示(有利誤認)
  3. 消費者に誤認されるおそれがあるとして内閣総理大臣が指定した不当表示(その他誤認されるおそれのある表示)

の3つに分類されます。

商品・サービスの品質、規格、その他の内容についての不当表示では、「商品の内容について、実際のもの、または競業他社のものよりも、著しく優良であると一般消費者に示す表示」をすることにより、一般消費者に、自社製品が優良であると誤認させる表示が対象となります。

たとえば、シャツの綿の混合率が50%なのにもかかわらず、「綿100%」と表示するような場合は、商品の品質に関する不当表示、ということになります。また、「この新技術は日本で当社だけ」と広告したのに、実際は競争事業者でも同じ技術を使っていたような場合は、事実に相違して競争事業者の商品より著しく優良であると誤認させる不当表示ということになります。

このように、合理的な根拠のないまま、優良性を強調するような表示は禁止されています。

商品・サービスの価格、その他の取引条件についての不当表示では、「取引条件について、実際のもの、または競合他社のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」が対象となります。

ここでいう「取引条件」とは、価格のほかにも、数量や景品類、アフターサービス、保証期間、支払い条件など、取引にかかるさまざまな条件が含まれます。また「価格」には、商品のそのものの価格、役務(サービス)の料金などの直接的なもののほか、割引率などの間接的な表示も含まれます。

たとえば、電気製品の価格として「50% OFF」というように、実際の価格よりも安いかのような表示を行っているにもかかわらず、常にこの価格で販売しているような行為は、「不当な二重価格表示」として、禁止されています。

また、消費者に誤認されるおそれがあるとして内閣総理大臣が指定した不当表示としては、現在、次の6つがあります。

  1. 無果汁の清涼飲料水などについての表示
  2. 商品の原産国に関する不当な表示
  3. 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
  4. 不動産のおとり広告に関する表示
  5. おとり広告に関する表示
  6. 有料老人ホームなどに関する不当な表示

ご質問の「日本一おいしい」ラーメンという表示ですが、直ちに不当表示とみなされるかは別として、やはり、客観的な裏づけが不足していると判断される可能性が高いと考えられます。ただちに問題になるとは限りませんが、不当表示と判断されるおそれがあります。

次に、不正競争防止法上の問題ですが、不正競争防止法では、商品・サービスの広告などに、商品などの品質や内容、製造方法、用途などについて誤認させるような表示をして販売するなどの行為を「不正競争行為」として規定しています。これによって、営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある者は、差止請求をすることができます。また、この不正競争行為を行った者に故意または過失があった場合には、損害賠償請求をすることもできます。

つまり、あなたに故意または過失があって、「日本一おいしい」などというのぼりを立てた場合において、どの程度、不正競争防止法に基づく差止請求や損害賠償請求が認められるかは、さらに具体的な事例によるとは思いますが、その可能性はあると思われます。

したがって、これらの権利に基づき差止請求などされぬよう、たとえば、有名な料理評論家に評価してもらったり、雑誌に掲載してもらったり、また、コンクールで賞をとったりなどして、その結果について宣伝する方が、お客様に対するインパクトも強く、表示上の問題も発生しません。このほかにも、売上げ向上のためにはさまざまな工夫ができると思いますので、中小企業診断士にご相談ください。

回答者

中小企業診断士 竹村 考太

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