経営ハンドブック

商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり

知識を学び、外部に耳を傾ける仕組みを作る

会社の業績を左右するような商品を開発する、まったく新しい販路を開拓して経営の新たな柱に育てるといった挑戦は企業が成長していく過程で必要だ。しかし、見知らぬ分野への挑戦を伴うため、失敗する確率も高く後回しになりがちだ。

ここでは、商品開発・市場開拓の成功確率を高めるための体制について紹介する。

商品開発・市場開拓のための効果的な体制づくりのポイント

  1. 従業員教育の場を設ける
  2. 取引先や消費者の意見を吸い上げる
  3. 異業種や異分野との接点を作る

1.従業員教育の場を設ける

商品開発や市場開拓に当たって、従業員は基礎的な知識を習得しているだろうか? 「新しいアイデアを考えろ」「頑張って営業してこい」というだけでは、なかなか成果は出ない。

代表的な分析手法として、「3C」「4P」「SWOT」が挙げられる。こうしたフレームワークを理解して、商品開発や市場開拓に生かせるように教育しておく必要がある。

「3C」は、「Customer(カスタマー=顧客・市場)」「Competitor(コンペティター=競合)「Company(カンパニー=自社)」の頭文字を取ったものだ。想定顧客のターゲット層や市場規模、競合他社の商品力や取り組みを踏まえたうえで、自社の競争優位性を考えていく。

「4P」は、「Product(プロダクト=商品・サービス)」「Price(プライス=価格)」「Place(プレイス=立地・流通)」「Promotion(プロモーション=広告・宣伝)」という4つのPを指す。競合よりも顧客満足度の高い商品・サービスか、収益性や競争力のある価格設定になっているか、消費者が購入しやすい環境を整えられるか、いかに消費者に購買意欲を持たせるかという視点で戦略を練る。

「SWOT」は、「Strength(=強み)」「Weakness(=弱み)」「Opportunity(=機会)」「Threat(=脅威)」の4つとなる。自社の強みと弱みを整理し、市場のビジネスチャンスと取り巻く環境の変化を押さえておく。環境の変化は、競合他社の動向だけでなく、景気動向や法規制などの要因も含めて考えておく。

従業員にこうした基礎知識があると、商品開発や市場開拓について幅広い視点からの議論を展開しやすくなる。

2.取引先や消費者の意見を吸い上げる

自社が商品開発や市場開拓を考えるうえで、既存顧客の声を集めたり、利用状況を調べたりするのは最も有効だ。既に愛用している人は、価値を認めたうえでさらに良いものを求めているのだから、現状の問題点を改良すれば既存顧客の満足度が高まるケースが多いだろう。また、自社が思いもつかない変わった使い方をしていることが分かれば、その市場向けに既存商品を調整して投入すると、思わぬヒット商品になるかもしれない。

そこで、取引先や消費者の意見を定期的に集めることができる体制を築いておきたい。

その一例として、農機メーカーの株式会社筑水キャニコム(福岡県うきは市)では、直接の取引先である農業機械や土木機械などの販売店でなく、機械を利用している農業や林業に従事する人たちの声を吸い上げている。具体的には、機械を使っている顧客にビデオカメラの前で機械に対する感想や不満を話してもらうのだ。その内容を社内で共有して分析し、新製品の開発や既存製品の改良に生かしている。

3.異業種や異分野との接点を作る

自社とは無関係の企業や商品に的を絞り、会社を見学したり、商品を使ってみたりすることで、それまではまったく想像していなかった商品の開発や市場開拓につながるケースもある。どうしても現場は同じ仕事の繰り返しで、似たような考え方の集団になってしまうため、特定の思考に縛られがちだからだ。

こうした状況を打破しようとする、金属加工メーカーが埼玉県にある。毎週1回、従業員がテーマを決めて勉強会を実施している。経営者から見ると、本業とは一見関係のなさそうな異分野の材料や技術を取り上げていることもあるという。しかし、経営者は従業員の関心事を広げることで新たなビジネスチャンスにつながるヒントが得られると割り切って任せている。また、この経営者は、従業員を連れてミシュラン星付きの高級レストランに連れていく。「本物と接することで、新しいアイデアが浮かぶこともある。どんなところにアイデアがあるか分からない」と経営者はその目的を語る。料理の素材へのこだわりや接客のホスピタリティーなどを目の当たりにすることは、業種は違えども、プロ意識としての行動は刺激になるはずだ。

こうした異業種や異分野との交流は、漫然と参加していても成果は得られない。従業員に問題意識を持たせ、自身が気になっている市場や技術について自分から質問して意見を引き出すようにしなければ、情報は集まらない。異業種や異分野との接点を作ると同時に、参加後に経営者へ報告させる仕組みも必要だろう。

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