経営ハンドブック
商品開発・市場開拓のための発想法
「質より量」が大事、無理やりにでもひねり出す
ゼロの状態から独創的なものを生み出す、切り口を変えることで違う機能を持たせる、モノとモノとを組み合わせて新しい価値を生み出す——。商品開発のヒントはさまざまなところにある。
しかし、普通に考えているだけでは、なかなか思いつかない。商品開発のヒントを見つけ出すための発想法として、よく知られている2つの手法をここでは紹介する。数人でブレーンストーミングをしながら進める「KJ法」と、1人でもアイデア出しができる「オズボーンのチェックリスト」だ。
アイデアを生み出す3つのポイント
- KJ法は4つのステップで進める
- 先入観を捨てて考える
- 「オズボーンのチェックリスト」で発想の枠を広げる
1.KJ法は4つのステップで進める
KJ法の「KJ」は考案した文化人類学者の川喜田二郎氏のイニシャルで、1967年に発表された。顧客や消費者の情報、従業員の意見、会社の方向性や得意分野といったさまざまな情報を要素ごとに分類して関係を整理することから問題解決の糸口を探し出す場合などに向いている。企業研修や大学のカリキュラムで取り上げられることも多く、日本人になじみのある発想法の1つといえる。
- 〔ステップ1〕
思いつきを文章にする -
テーマを設定し(例えば「新商品開発」)、そのテーマについて思いついたことをできるだけ多くカードに書き出していく。この段階では、1枚のカードに1つのことだけを書くようにする。単語だけでなく、完結した文章として書く。
- 〔ステップ2〕
カードを同じ内容で分類する -
集まったカードを分類する。1人ずつ手持ちのカードを読み上げ置いていき、似たような内容のカードは同じグループにまとめる。「一匹狼」的な内容のものは無理してまとめず離して置いていく。すべてのカードの読み上げが終わったら、グループごとに見出しとなるラベルカードを作って上に載せる。その際、ラベルカードは色を変えたほうが見やすい。
- 〔ステップ3〕
グループごとの関係性を整理する -
ステップ2でグループ化されたカードを1枚の大きな紙に配置する。このとき、ラベルカードの意味が近いと感じたカード同士を近くに置き、ラベルカード間の関係を矢印で示す。作用関係にあるときは片方向の矢印、相互関係にあるときは双方向の矢印という感じである。
- 〔ステップ4〕
1つのストーリーにまとめる -
出来上がった配置の中から、出発点となるカードを1枚選び、そこから隣のカードへと進み、すべてのカードに書かれた内容を、1つのストーリーをまとめるように文書化していく。これを「叙述化」という。この作業で、カードの書かれた内容全体が文章で表現される。なお、慣れないうちはステップ4を省略しても構わない。
- 〔ステップ1〕1枚のカードに1つのアイデアを書く
- 〔ステップ2〕似た内容のカードを集め、ラベルカードを作る
- 〔ステップ3〕ラベルカードごとの関係を図解する
- 〔ステップ4〕出発点となるカードを選び、関係に沿って文書化する
2.先入観を捨てて考える
KJ法を実践するうえで、参加者は「自由奔放」「批判厳禁」「質より量」「便乗歓迎」という4つのルールを守るようにする。
自由奔放とは、現実的だとか実現可能だとかを求めないこと。どんなにとっぴな意見でも発言して構わない。
批判厳禁とは、他人の発言に反対したり、否定的になったりしないこと。すべての意見を建設的に捉える。
質より量とは、とにかく数を出すこと。思いついたら何でも書き出す。
便乗歓迎とは、既に出ているアイデアと組み合わせたり、自分なりにアレンジしたりすること。アイデアを広げていくようにする。
うまくアイデアが出てこない失敗の原因としては先入観がある。KJ法の目的は、新しいアイデアのヒントとなる「予期しないつながり」を見つけ出すことだ。「この内容はこういうことだろう」と1つのグループにたくさんのカードを入れてしまうと、関係性が単純になってしまい、「予期しないつながり」が見えてこなくなる。
だから、カードに書かれている意味を踏まえて、細かく分類していく必要がある。どうしてもグループに入らないカードがあっても構わない。それは1枚として置いておく。なるべく多くのグループを作り、そこから関係性を見いだすことが先入観を取り払うことにつながる。
3.「オズボーンのチェックリスト」で発想の枠を広げる
1人でもできる発想法として、「オズボーンのチェックリスト」がある。チェックリストを利用して、無理やりアイデアをひねり出す。かなり強引な手法だが、発想の飛躍によって思わぬアイデアがひらめく場合もある。
チェックリストの項目は9つある。
- 転用:新用途、他への使い道、他分野へ適用
- 応用:似たもの、何かのまね、他からのヒント
- 変更:意味、色、働き、音、匂い、様式、型
- 拡大:追加、時間、頻度、強度、高さ、長さ、価値
- 縮小:減らす、小さく、濃縮、低く、短く、軽く、省略
- 代用:人、物、材料、素材、製法、動力、場所
- 再利用:要素、型、配置、順序、因果、ペース
- 逆転:反転、前後転、左右転、上下転、順番転、役割転換
- 結合:ブレンド、合金、ユニット、目的、アイデア
例えば「傘」を考えると、(1)転用だと紫外線カット、(5)縮小だと赤ちゃん用、(8)逆転だと筋トレ用重い傘、といった具合だ。遊び感覚で構わないので、どんどんアイデアを出してみる。そして、普段からこの9項目を意識して既存の製品やサービスを見直すようにしていると、発想力が鍛えられる。
「オズボーンのチェックリスト」は、1人でもできるが、複数人で取り組んでもよい。自分にはない視点からの意見が出てきて参考になるはずだ。