ビジネスQ&A
よいビジネスプラン(事業計画書)の書き方について教えてください。
IT系の新規事業を検討しているのですが、ベンチャーキャピタルなどからの資金調達のためにビジネスプランを作成する必要があります。作成上の留意点などがありましたら教えてください。
回答
ビジネスプランを作成するうえでは、作成目的を明確化し、読み手のニーズを正確にとらえて作成する必要があります。また、見た目も非常に重要になりますので、グラフや写真などビジュアル的に読みやすい工夫をする必要があります。
ビジネスプラン(事業計画書)は、「資金調達」、「事業連携」、「事業の進捗管理」など、さまざまな目的で作成されます。目的に合わせ、次のような内容に留意しながら作成しましょう。
【ビジネスプランの構成】
ビジネスプランには決まった形式が存在するわけではありませんが、一般的なビジネスプランの構成を、次に示します。
(1)サマリー
サマリーはビジネスプランの最初につける事業の要約文であり、ベンチャーキャピタルなどの読み手が一番初めに読みます。忙しいベンチャーキャピタリストは、このサマリーだけで投資価値があるのか、この後の概要を読む価値があるのかを判断する場合が多いので、非常に重要な項目と言えます。サマリーのボリュームは、あまり長くは書かずにコンパクトに1、2ページで分かりやすくまとめます。文章にインパクトがあるように記載しましょう。
(2)事業コンセプトと商品・サービス
どのような事業なのか?どのような商品・サービスなのか?を明確に示します。自社の商品・サービスが競合他社と比較してどのような差別化要素があるのか、顧客ニーズに合致しているのかを端的に記載する必要があります。
(3)事業戦略
事業戦略は「販売活動」、「生産活動」、「人員計画」、「研究開発活動」などの企業の内部要因を中心に記載し、実際に事業活動を行う場合にも活用します。それぞれの項目ごとに具体的に記載しましょう。
(4)財務計画
財務計画は「売上・利益計画」、「資金計画」などを記載します。財務の内容はとくに重要な項目なので、事業戦略とは別に設ける場合が多いです。運転資金や設備資金によりどのぐらいの資金が必要なのかを明確に記載する必要があります。実際の事業は、売上が予想より伸びない、追加的な投資が必要など予定よりも必要資金が増える場合がありますので、そのような状況を踏まえて余裕をもった資金計画にしておく必要があります。運転資金は、売上高の実現や支払サイトの関係から、通常4-6カ月程度は用意しておく必要があります。
(注)運転資金:運転資金とは、店やオフィスにかかる月々の家賃や従業員に支払う給料、そして小売業の場合、販売する商品の仕入代金など、事業を継続していくために必要な流動的資金のことです。
(5)添付資料
外部支援機関のリスト、特許などの取得証明、市場調査結果データなどを記載します。
【ビジネスプラン作成上の留意点】
ビジネスプランを作成するうえでは、読み手の立場を考えて、次のようなポイントに留意して作成する必要があります。
(1)文章の表現
売上の予測や市場成長率などの数値データは、自社のビジネス環境からある程度の根拠を論理的に示す必要があります。自分のイメージや曖昧で根拠のない資料は、評価者の信頼を失うことになります。
(3)事業リスク
ビジネスには競合状況や法的規制、生産能力などリスクや問題点が当然あります。ビジネスプランに都合のよい要素のみを記載するのではなく、事業リスクや問題点を記載することも評価者の信頼を得るうえで必要な場合があります。その事業リスクや問題点を示し、それらに対して可能な対応策を明記しておくことで、評価者の信頼性が高まるビジネスプランとなるでしょう。
(4)起業家のビジョン
起業家の起業動機やビジョンを情熱的に伝えることが非常に重要です。とくに、ベンチャーキャピタルなどは、事業や製品の良し悪しよりも、起業家の能力や事業に対する気持ちなど人物を重視する傾向にあります。
【ビジネスプランの評価者】
ビジネスプランの読み手は、「金融機関」、「ベンチャーキャピタル」、「自社内の経営層」などさまざまです。ビジネスプランの読み手により、評価するポイントが異なっています。たとえば、融資を行う金融機関は、財務状況の安全性や担保資産の有無など支払い能力が評価のポイントです。
また、株式公開などによるキャピタルゲイン(株価の売却益)を狙う、ベンチャーキャピタルは、対象となる市場の成長性や可能性、起業家の資質やビジョン、経営チームの能力など将来性が評価のポイントです。ビジネスプランを作成するうえでは、誰が主要な読み手なのかを正確に認識して、ビジネスプランの構成やスタイル、トーンを検討する必要があります。
ビジネスプランは一度作成したら終わりではなく、ビジネス環境などに合わせて適時修正していく必要があります。
- 回答者
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中小企業診断士 沢田 一茂
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