ビジネスQ&A
赤字事業から撤退を考えていますが、留意すべき点は何ですか。
創業50年、従業員80名で食品加工業を営んでいます。主に、地元の販売店に商品を納入しています。これまで販売店の要望をできるだけ取り入れるようにしてきました。その結果、商品の種類が増えてしまい、赤字の商品も多くなりました。今回、収益性向上のために、赤字の商品から撤退したいと考えていますが、どのような点に留意すればよいでしょうか。
回答
事業が赤字だからと、直ぐに撤退するということでは危険があります。事業の撤退については、まず企業の経営基本戦略との整合を確認します。次に、その事業の撤退が妥当であるかについて「全社的視点」「長期的視点」「市場・顧客からの視点」の3点から確認します。
事業や商品(以後、まとめて事業とします)の撤退については、まず、企業の経営基本戦略との整合を確認します。次に、その赤字事業からの撤退が妥当であるかについて、3つの視点から検討します。
【企業の経営基本戦略との整合】
赤字事業の存続、撤退を考える際は、まず、自社の経営基本戦略との整合を確認すべきです。このためには、企業の経営基本戦略として、
- 長期的にどのような方向に向かうか
- どの事業や商品を企業の今後の柱として成長させていくか
- 長期的に、どの事業や商品を、どの時期にどのように縮小、撤退を行っていくか
などを明確にしておきます。
赤字事業の撤退は、この経営基本戦略と整合しながら、できるだけ計画的に進めて行くようにします。
【赤字事業からの撤退検討のための3つの視点】
赤字事業から具体的に撤退を検討するとした場合、3つの視点から総合的に撤退が妥当であるかを確認します。
1.全社的視点から確認
- 見かけだけの赤字となっていないかの確認
原価計算のやり方で、見かけ上、赤字となっていないかを確認します。たとえば、本社費用、設備費用、営業費用などの共通費用の配賦(按分)が適切であったかなどを確認します。 - 他の事業への収益貢献の確認
事業単体では赤字でも、他の事業の収益に大きく貢献していないかを確認します。たとえば、その事業があるために、大量仕入れで材料を安く調達できている、顧客が抱き合わせで、他の商品を購入してくれているなどがないかを確認します。
2.長期的視点からの確認
事業は、それぞれのライフサイクルを持っています。これは創業期、成長期、成熟期、衰退期と進行していきます。その事業がライフサイクルのどのステージにあるかを確認します。
- 事業が創業期、成長期の初期の場合は、赤字となっていても、その後の成長、進展により、黒字化が見込まれる可能性があります。撤退については慎重に考えます。
- 事業が衰退期にある場合は、原則として速やかに事業から撤退します。今後の収益は見込めません。
3.市場、顧客の視点からの確認
事業を行う以上、市場や顧客との関係は重要です。今まで提供していたものを、突然、自社の都合でやめれば、相手先に迷惑をかける可能性があります。
特に、貴社の場合は顧客の要望で商品を揃えてきたという経緯があります。事業撤退にあたっては、顧客に十分に理解、そして納得をしてもらうようにします。
- 回答者
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中小企業診断士
芳賀 知
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