ビジネスQ&A

部門・個人レベルの財務目標設定における留意点を教えてください。

電子機器の製造販売を行う中小企業です。経営目標を達成するために、部門、さらには個人まで財務目標を設定する制度を導入しました。しかし、部門や個人の目標と会社の業績との関連が希薄だという意見が社員から出ています。会社の業績につながる部門・個人レベルの目標を設定するためのポイントを教えてください。

回答

部門や個人の財務目標は、責任を負うことのできる項目に対して設定してください。たとえば、製造部門であれば、その期に製造した製品の売上ではなく、製造に関する予算計画にどれだけ沿ったかなどを対象とします。個人についても同様に設定します。

成果主義に基づく業績評価では、数値目標が好まれます。なかでも財務目標は客観的に計測できると思われがちであるために、とくに多用されています。しかしながら、問題の多い財務目標が設定されることがよくあります。

【責任に応じた財務目標を設定する】

部門・個人レベルの財務目標を設定する際におかしやすい誤りは、その部門・個人が結果に対して責任を負えない事項に対して目標を定めてしまうことです。結果が生じるまでの過程に関わることができないのであれば、それを目標とするのは適切ではありません。そのような目標で評価を下しては、当事者にとってはそれこそ運任せで評価されることになってしまいます。

たとえば、製造部門は直接的に販売を行うわけではありませんので、その期に製造した製品の売上を財務目標として設定することは適切ではありません。設計部門についても同様となります。

では、どこが売上に関して責任をもつべきかと言えば、その製品の事業責任を負う部門です。貴社に事業部があれば、そちらということになります。営業部門だけで売上の責任を負うわけではなく、また設計・製造部門が責任を負わないわけでもないことに留意してください。

電子機器事業部 開発部 製造部 販売部 電子機器事業部 開発部 製造部 販売部

製造部門を例に取ると、財務目標は製造に関する予算計画に沿って設定するのが適切です。ただし、評価に当たっては、製造原価をひとまとめにして見るだけでなく、理由も含めて見るようにしてください。標準原価計算を行っているのであれば、たとえば数量差異を見て、予算計画と実績の乖離を判断することが重要です。数量が計画よりも大幅に少なかった場合に、単純に予算計画と実績の製造原価だけを見て成果を判断してはなりません。

個人ごとの財務目標についても、部門単位の財務目標設定と同様に考えてください。結果に対して関与できない事柄を、個人の財務目標として設定することは避ける必要があります。

【単独で財務目標を設定することが困難な場合には】

部門、個人のいずれについても、単独で財務目標を定めることが困難な場合があります。その場合には、部門については事業、個人については部門で財務目標を設定し、賞与で応えるのも一つの方法です。

部門や個人に財務目標を設定するのは、あくまで経営目標を達成するための一つの手段です。これが目的化して、不適切な財務目標を設定してしまい逆効果にならないよう、運用には注意を払ってください。

回答者

中小企業診断士・高度情報処理技術者(SM、AU)
中津山 恒

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