ビジネスQ&A
事業計画の立て方をわかりやすく教えてください。
小売店を営んでいます。これまで事業計画を立てたことがなく、作り方がわかりません。簡単な作り方を教えてください。
回答
事業計画を立てるにあたっては、まず自社の置かれている外部環境と内部環境を整理することから始めます。次に将来の目標とする姿を設定し、そのために解決しなければならない課題を抽出します。抽出した課題を解決する道筋をアクションプランに落とし込み、完成した計画を関係者に周知して、計画の確実な実行を目指します。
事業計画を立てることによるメリットには、次のようなものが考えられます。
- 経営者の考えが明文化されることにより、会社の進む方向を明確にできる
- 会社の内外の関係者に自社の方針を示すことができる
- 金融機関からの融資が受けやすくなる
- 将来発生するであろう問題に対して、事前に対策をとることができる など
これらのメリットを享受するためには、説得力があり実現可能性の高い計画を立て、さらにその計画を実行に移していくことが必要となります。どうしたらそのような計画を立てることができるのか、計画を立てる流れに沿って、できるだけ簡単に説明していきます。
【外部環境・内部環境を分析する】
1.外部環境
外部環境とは政治、経済、競合他社の動向などの自社で統制不可能な条件のことです。外部環境は自社ではどうすることも出来ない経営上の制約であることから、自社に悪影響を与える条件(脅威)を避け、自社に好影響を与える条件(機会)を活かしていくために、次に述べる内部環境を変化させ、外部環境に適応していく必要があります。
2.内部環境
内部環境とは、自社内部における人材、設備、財務状況、保有技術といった経営資源など自社で統制可能な環境条件のことです。競合他社に対して不利な条件(弱み)を克服しつつ、有利な条件(強み)を活かすことが、経営戦略のセオリーとなっています。
以上のように外部環境と内部環境を強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)に分けて分析することを、各項目の頭文字をまとめてSWOT分析といい、経営戦略を策定する上でよく用いられる手法です。しかし、実行可能な計画を作成する上では、S、W、O、Tのどれにも分類されない条件も漏らさずに拾っていくことが必要となります。なぜならば、これから立案する事業計画上の諸施策を考えていく上では、S、W、O、Tに分類されない条件も、制約条件として影響を及ぼしてくる可能性が高いからです。
好ましい傾向 | 好ましくない傾向 | |
---|---|---|
内部環境 | 強み (Strengths) |
弱み (Weaknesses) |
外部環境 | 機会 (Opportunities) |
脅威 (Threats) |
【目標とする姿を設定する】
環境分析が終わると、現在の自社が置かれている状況がこれまでよりもはっきりと見えてくることでしょう。そして、環境分析の次に行うのは、この「現在の姿」を、3-5年後にどのような姿にしたいか考え「目標とする姿」を設定することです。目標とする姿を設定するにあたっては、定量項目(売上高や来店客数、客単価など数値化できる目標)についても決めておきます。当然ですが、定量項目を検討するにあたっては、その数値が現在どのような値となっているかを知る必要があり、これらは現状分析の段階で終わらせておくことが必要です。
【課題を抽出する】
目標とする姿が設定できたら、次に現在の姿と目標とする姿のギャップに目を向けます。そしてこのギャップを埋めるためには、自社にどのような課題があるのか検討します。課題を検討する上では、漠然とした課題を設定するのではなく、具体的な表現や数値などを用いて明確な課題を設定します。
たとえば、現在の売上高が50百万円であり、目標とする姿として売上高60百万円を目指すのであれば、ギャップは10百万円ということになります。そしてこのギャップを埋めるための課題を来店客数の増加とするならば、来店客数を何人増やせばいいのかという数値を決めます。
【課題の解決策とアクションプランを作成する】
課題の抽出が終わったら、抽出した課題に対する解決策を検討します。課題の大小にもよりますが、その多くは一朝一夕では解決できないものとなるでしょう。そのような課題を解決していくために、長期的な視点で段階的に解決策を考えていくことが必要になります。
大きな課題を小さな課題に分割していき、1つずつ解決していくということです。そして、分割した小さな課題をいつ解決していくのかといったことを1つの表にまとめたものをアクションプランといいます。
実際に計画を実行に移す際には、さまざまな関係者がこのアクションプランに沿って行動していくことから、アクションプランはできる限り具体的に記述することが大切です。
そして、アクションプランとともに、計画の各段階で数値目標はどのようになっているべきかということも検討し、計画に盛り込みます。
【計画を実現するために】
以上で、事業計画の立て方について一通り説明が終わりました。大切なことは事業計画を立てることではなく、立てた計画をどのようにして実現していくかということです。そのためには、経営者が計画を達成するという熱意を持ち続けることはもちろん、従業員などの協力も必要です。このためには、できるかぎり計画を一人で立てるのではなく、関係者と一緒に作っていくことが望ましいです。
- 回答者
-
中小企業診断士・一級FP技能士・第三種電気主任技術者
谷口 英人
- 関連情報
-
J-Net21
同じテーマの記事
- 経営の経験が浅いため会社の方向性を決められず困っています。どうしたらよいですか?
- 経営計画を計画どおりに実施するためにはどうしたらよいですか?
- こうすれば、経営革新企業に生まれ変わる!成功の秘訣とは?
- よいビジネスプラン(事業計画書)の書き方について教えてください。
- 経営コンサルタントをお願いすると、どのようなメリットがあるのですか。
- 司法書士は、どのように中小企業の経営をサポートしてくれるのでしょうか。
- 経営革新に取り組む際のヒントを教えてください。
- 自社の知的資産をどのように考えれば良いですか?
- 赤字事業から撤退を考えていますが、留意すべき点は何ですか。
- 事業計画の立て方をわかりやすく教えてください。
- 中期経営計画には何を盛り込めばよいのでしょうか。
- 部門・個人レベルの財務目標設定における留意点を教えてください。
- SWOT分析をする上で自社の強みの見つけ方を教えてください。
- 自社に合う認定支援機関の選び方について教えてください。
- 中小企業・小規模事業者の支援情報サイト「ミラサポ」とはどんなものですか?
- 設備投資の可否を判断する基準について教えてください。
- 知的資産と知的財産権(特許等)の違いを教えてください。
- HRMとはどのような考え方・経営手法なのでしょうか。中小企業の取り組み方などと併せて教えてください
- パーパス経営とはなんでしょうか? 中小企業が取り組むメリットとあわせて教えてください
- DE&Iと、ダイバーシティ経営の違いについて教えてください。