ビジネスQ&A
金融機関に提出する事業計画書の書き方を教えてください。
今度、事業拡大のための設備投資を検討しています。そこで、金融機関から資金調達をしようと思っています。事業計画書を作成して交渉したいのですが、どのようなポイントを強調すればよいかなど、留意点などを教えてください。
回答
金融機関に提出する事業計画書の作成のポイントは、大きく分けて3点です。なぜお金が必要なのか、どのように返済していくのか、万が一のときはどうするのか、の3点を具体的な根拠とともに明示することが必要です。貸す側の立場になって作成してください。
所得税法では、事業を行う者または不動産事業を行う者等が、一定の帳簿を備え付けて税務署長に青色申告の承認申請を行ってその承認を受けた場合、青色の申告書を提出することができます。
金融機関から資金調達をする際に、主に必要とされる書類には以下のようなものがあります。
- 決算書(2〜3期分)
- 納税証明書
- 試算表
- 商業登記簿謄本
- 資金繰り表
- 事業計画書 など
この中で、未来のビジョンを語るもの、自社の意思で創り得るものといった観点から「事業計画書」に焦点をあて、その作成ポイントを見ていきます。
大きく分けてポイントは以下の3点です。
- なぜお金が必要なのか
- どのように返済していくのか
- 万が一のときはどうするのか
以上3点について詳しく見ていきます。
【なぜお金が必要なのか】
金融機関に融資を申し込むということは、必ず資金需要があるということです。この需要の内容を金融機関に明確に伝えなければなりません。
資金需要は大きく分けると、設備資金と運転資金の2つと考えられます。つまり、長期的に使用する「物」を購入する資金か、それ以外の資金かということです。どちらにしても、事業計画書に記入する際には「この資金を活用することで利益が増える」と金融機関に印象付けなければいけません。「設備導入により、夢であった月産100万個体制が整います」ではなく、「設備導入により、月10万個の増産、コスト5%カットを実現し、新規取引先への拡販と合わせて10%の増収増益を確保します」と具体的に数字を示しながら効果を説明します。
【どのように返済していくのか】
2つの観点から返済実現性を明示しましょう。1つは、返済原資をどのように確保するのか、もう1つは返済スケジュールをどのように組むのか、この2点を具体的に示してください。
返済原資は、前項でも若干触れたとおりに、原則的には売上・利益を伸ばして確保するものです。具体的な根拠とともに、売上・利益がいつまでに、どの程度伸びるのか、前向きな見込みを明示してください。先のことなので、どの程度売上・利益が伸びるかは分からないというケースを聞きますが、そのような状態では融資を受けることも厳しいですし、仮に受けられても遅滞なく返済できる可能性は低いと言わざるを得ません。
一方、返済スケジュールですが、これは余裕をもって確実に返せる見込みで計画してください。あくまで最終的には金融機関の意向も踏まえたスケジュールということにはなりますが、計画よりも売上や収益が多少下方に振れても問題なく返済できる程度の期間を見込んでおくとよいでしょう。
【万が一のときはどうするのか】
万が一のときとは、返済が滞るほどの予想外の不振、あるいは突然のアクシデントなどが起こったときのことで、事前にいくつかのケースを想定しておくことによって、より被害の小さい選択をすることが可能になります。最初から不調に終わるだろうと考えて設備投資をする経営者はいませんが、実際に不調に終わるケースは多数存在します。金融機関側もうまくいく話だけよりも、うまくいかないときの話があった方が、より現実味をもって案件に取り組んでくれるというものです。
万が一のときには、保有資産を売却するのか、担保処分や保証人による返済をするのか、当然のことではありますが、十分な検討ならびに準備をしてから融資を依頼することが大切です。
以上、事業計画書の作成ポイント3点を見てきましたが、もちろんこれだけではなく、それぞれのケースで融資を受けるのに有効と思われる資料などは、躊躇せずに提出してください。
借りる側の立場で判断に苦しむことがあるときには、貸す側の心境を考えてみましょう。貸す側の一番の心配、それは貸したお金が返ってこないことです。つまり、この会社にお金を貸しても大丈夫と思ってもらえばよいのです。さらには、この社長にはお金を貸したいと思ってもらえればしめたものです。妥当性のある提出資料に、誠実で夢がある経営者がいれば、前向きな事業展開のための融資を受ける可能性は高まります。
(参考)
政府系金融機関の融資については、各金融機関の窓口にお問い合わせください。
- 回答者
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中小企業診断士
櫻井 正人
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