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役員借入金と役員貸付金について教えてください。

2025年 4月 4日

サービス業の中小企業事業者です。役員借入金と役員貸付金には、どのようなメリットとデメリットがあるのか教えてください。

回答

法人の事業運営において、会社と役員間の金銭の貸借には、法律に基づいたルールが存在します。役員借入金は、役員から会社への貸付金です。これは相続や事業承継において課題となるケースが見られます。一方、役員貸付金は、会社から役員への貸付金です。役員貸付金があると、金融機関からの融資審査において不利になる可能性があります。以下では、役員借入金と役員貸付金の違い、それぞれのメリット・デメリットなどについて、順を追って解説していきます。

1.役員借入金と役員貸付金の違いと位置づけ

「役員借入金」と「役員貸付金」は、企業と役員(取締役など)の間で行われる資金のやり取りを指しますが、それぞれ異なる意味と役割を持っています。

(1)役員借入金について

役員借入金は、役員が会社に対して資金を貸し出すことを指します。つまり、会社が役員から借りるお金のことです。この資金は、会社の運転資金の補填や一時的な資金不足の補填に使われることが多いです。役員借入金は、会社の負債として会計上記録され、返済義務があります。

▼役員借入金の特徴

貸付側

役員

借入側

会社

会計上の処理

会社の負債として記録

返済義務

あり

(2)役員貸付金について

一方、役員貸付金は、会社が役員に対して資金を貸し出すことを指します。つまり、役員が会社から借りるお金のことです。この資金は、役員個人の一時的な資金需要に応じて貸し出されることが多いです。役員貸付金は、会社の資産として会計上記録され、返済を受ける権利があります。

▼役員貸付金の特徴

貸付側

会社

借入側

役員

会計上の処理

会社の資産として記録

返済義務

あり

(3)違いと位置づけ

役員借入金と役員貸付金の主な違いは、資金の貸し手と借り手が逆転している点です。役員借入金の場合、会社が役員から資金を調達し、負債として扱います。一方、役員貸付金の場合、会社が役員に資金を貸し出し、資産として扱います。

これらの取引は、企業の財務状況や役員との関係性に影響を及ぼすため、適切な会計処理と透明性の確保が求められます。また、税務上の処理も重要であり、役員借入金や役員貸付金に関する利息の扱いや返済計画なども含め、慎重に管理されるべきです。

まとめとして、役員借入金と役員貸付金は企業と役員間の資金のやり取りを円滑に進めるための手段であり、それぞれ異なる会計処理と法的義務が伴います。企業はこれらの取引を通じて、柔軟な資金運用を行いながら、透明性と公正性を維持する必要があります。次に「役員借入金」と「役員貸付金」について、それぞれのメリット・デメリット等を順に解説します。

2.役員借入金のメリットとデメリット、および役員借入金の解消法

役員借入金は、企業と役員の間で資金をやり取りする方法の一つですが、そのメリットとデメリット、そしてその役員借入金を解消するための方法について説明します。

(1)役員借入金のメリット

迅速な資金調達

役員からの借入は、外部からの融資や投資を受けるよりも迅速に資金を調達できるため、急な資金需要に対応しやすいです。

柔軟な条件

通常、役員借入金は役員と企業の間で条件を柔軟に設定できます。例えば、返済期限や利息の設定を必要に応じて調整可能です。

低コスト

役員が自己資金を提供することで、外部金融機関からの融資に比べて低い利率で資金を調達できる場合があります。

(2)役員借入金のデメリット

債務超過リスク

役員借入金の金額が多額である場合、資産合計額よりも負債合計額のほうが大きい、いわゆる債務超過となるリスクがあります。金融機関等からの信用面では、債務超過は財務の安全性がないという印象を与えます。

返済義務

役員借入金は企業の負債として計上されるため、返済義務が生じます。企業のキャッシュフローに影響を及ぼす可能性があります。

税務リスク

役員借入金に対する利息の設定や返済条件が不適切な場合、税務上の問題が発生することがあります。税務当局による否認リスクが存在します。

役員が亡くなった場合の相続税の問題

相続税は、故人の財産に課税されます。役員借入金は故人の貸付金とみなされ、プラスの財産として相続税の対象となるため注意が必要です。

(3)役員借入金の解消法

適切な返済計画

企業のキャッシュフローに基づいた現実的な返済計画を立てることで、資金の不安定性を軽減し、返済義務を確実に履行します。

DES(Debt Equity Swap:債務と株式の交換)の活用

DESは、債権を現物出資に転換し資本金を増加させる取引です。債務消滅益は課税対象ですが、繰越欠損金で対応可能です。社長が100%株主なら債権放棄も有効ですが、同様に債務免除益が発生するので注意が必要です。

役員借入金は企業にとって有効な資金調達手段の一つですが、そのメリットとデメリットを十分に理解し、適切な管理を行うことが重要です。これにより、企業の財務状況を健全に保ち、持続的な成長を促進することができます。

3.役員貸付金のメリットとデメリット、および役員貸付金の解消法

役員貸付金は、企業と役員の間で資金をやり取りする方法の一つですが、企業にとってはメリットがほとんどなく、デメリットが多く存在します。ここでは主にデメリットについて、および役員貸付金を解消するための方法について説明します。

(1)役員貸付金のメリット

不意の出費の対応

役員個人の納税や不動産取得等で、役員が会社から借り入れする場合があります。役員は役員賞与などから返済し、適正な処理をすべきです。

(2)役員貸付金のデメリット

金融機関からの評価の低下

役員貸付金が多いと、金融機関は経営者の私的流用を疑い、融資を渋る傾向にあります。長期化は返済能力を疑われる要因となり、資金調達を困難にします。

使途秘匿金として違法と判断される

不明瞭な支出を役員貸付金とすると、使途秘匿金とみなされる可能性があり、重い追徴課税や重加算税が発生します。資金管理の徹底が重要です。

相続時に回収不能となる

役員貸付金は相続対象となり、役員死亡時、相続人に債務が引き継がれます。高額な場合、相続放棄や限定承認を招き、会社は貸付金回収不能となる恐れがあり、生前の回収が重要となります。

法人税の負担の増加

役員貸付金には利息徴収義務があり、会社の利益増加、法人税負担増に繋がります。法定利率での徴収のため、貸付金が増えるほど税負担も増大します。

(3)役員貸付金の解消法

役員報酬の利用

役員貸付金の減額には、役員報酬の一部を返済に充当する方法があります。会社と社長の資金負担を増やさずに役員貸付金を回収できます。個人の所得税・住民税節税にもなり、小規模会社には有効な手段です。ただし、役員報酬変更は期首から3か月以内に限定されています。

退職金との相殺

役員貸付金は、役員退職金(生前退職金)と相殺することで解消できます。死亡退職金は相続税負担や回収リスクがあるため、生前退職金との相殺が役員・企業双方の負担軽減に繋がり、有効な手段となります。

自己株式との相殺

役員貸付金は、役員保有の自社株式と相殺可能です。貸付金相当額の株式を会社が自己株式として取得することで、貸付金を解消できます。ただし、議決権割合の変動に注意が必要です。

役員の個人資産の売却

役員が個人資産(土地・建物等)を会社に売却し、その資金で役員貸付金を返済する方法があります。ただし、会社として活用できる資産かどうかに注意が必要です。

役員貸付金の利用は注意が必要です。安易な利用は会社に損失をもたらす可能性もあります。多額化すると解消が困難になるため、早期の対応が重要です。

回答者

中小企業診断士 矢野 仁士

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