ビジネスQ&A
経営者保証ガイドラインについて教えてください。
2021年 8月内容確認
「経営者保証に関するガイドライン」が策定され、2014年2月1日から適用されましたが、このガイドラインの内容を教えてください。
回答
「経営者保証に関するガイドライン」は、中小企業の経営者保証に関する契約時及び履行時等における中小企業、経営者及び金融機関による対応についての中小企業団体及び金融機関団体共通の自主的ルールです。
【制度の策定の背景】
経営者保証には、経営者への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面があります。一方で、経営者保証に依存することにより、保証債務履行時にさまざまな問題(経営者の原則交代・不明確な履行基準・保証債務の残存等)が発生し、これが経営者による思い切った事業展開や早期の事業再生、円滑な事業承継等を阻害する要因ともなっています。
これらの課題解決のため、中小企業の経営者保証に関する契約時や履行時等における中小企業、経営者及び金融機関による対応についての中小企業団体・金融機関団体共通の自主的ルールとして、「経営者保証に関するガイドライン」が策定されました。
【制度の概要】
「経営者保証に関するガイドライン」は、中小企業への融資について、合理的な保証契約のあり方を示すとともに、保証履行時の保証債務の整理手続や経営者の経営責任の在り方、残存財産の範囲についてのルールを示しています。
主な内容は、次のとおりです。
1.合理的な保証契約のあり方
(1)金融機関は、融資先が将来にわたって以下のような要件を充足すると見込まれる場合には、経営者保証のない融資の可能性や、経営者保証を代替する融資手法(注1)の活用を検討すること。
- 融資を受ける中小企業とその保証人である経営者個人の資産・経理が明確に分離されている。
- 法人と経営者との間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えない。
- 法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る。
- 法人から適時適切に財務情報が提供されている。
- 経営者等から十分な物的担保の提供がある。
(注1)停止条件または解除条件付保証契約、ABL(流動資産担保融資)、金利の一定の上乗せ等
(2)金融機関は、やむを得ず経営者保証を求める場合には、保証契約の可能性等について丁寧かつ具体的に説明することとし、また、保証金額を形式的に融資額と同額とするのではなく、保証人の資産・収入状況や主債務者の信用状況等総合的に勘案して設定すること。
2.保証履行時の保証債務の整理手続
(1)原則として法的債務整理手続(注2)は行わず、中小企業の主債務と経営者個人の保証債務を準則型私的整理手続(注3)により一体整理すること。
(2)主債務について法的債務整理が行われる場合であっても、保証債務の整理に当たっては、原則として準則型私的整理手続を利用すること。
(注2)破産手続、民事再生手続、会社更生手続もしくは特別清算手続
(注3)中小企業再生支援協議会による再生支援スキーム、事業再生ADR、私的整理ガイドライン、特定調停等利害関係のない中立かつ公正な第三者が関与する私的整理手続及びこれに準ずる手続
3.経営者の経営責任の在り方
金融機関は、上記2.(1)の場合において、一律に経営者交代は求めず、経営者が引き続き経営に携わることに経済合理性が認められる場合には、これを許容すること。
4.残存財産の範囲
金融機関は、保証債務の履行に当たり、保証人に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて100万円から360万円)を残すことや、華美でない自宅等に住み続けられるよう検討すること。
5.その他
(1)金融機関は、一定の要件(注4)が充足された場合には、保証債務の一部履行後に残存する保証債務の免除に、誠実に対応すること。
(2)金融機関は、経営者保証に関するガイドラインによる債務整理を行った保証人の情報を信用情報登録機関に報告・登録しないこと。
(注4)保証人が自らの資力に関する情報を誠実に開示し、開示した情報の内容の正確性について表明保証し、表明保証した資力が事実に反した場合には、追加弁済する旨の契約を締結する等
【相談窓口】
(独)中小企業基盤整備機構の地域本部、最寄りの商工会、商工会議所または認定支援機関(経営革新等支援機関)が、経営者保証に関するガイドラインについての相談を受け付けています。
また、これらの相談窓口を通じて、専門家の派遣を申し込むことができます。
- 回答者
-
税理士・中小企業診断士 野村 幸広
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