経営強化・起業
省エネ関連の支援
2023年1月内容改訂
事業活動を行ううえで、電力等のエネルギーの使用は欠かせません。これは、どのような事業であっても必ずかかるコストです。エネルギーの消費を抑えることができれば、継続的なコスト削減が可能になります。ここでは、省エネに活用できる支援について説明します。
省エネに関する取組の必要性
資源の乏しい日本にとって、エネルギー問題は深刻です。日本のエネルギー自給率は非常に低く、近年は10%を下回る状況が続いています。したがって、エネルギーを安定供給する仕組みとともに、エネルギーを効率的に活用する取組が必要です。
一方、企業の側から見ると、エネルギーはコストです。エネルギー消費の大きい製造業では、費用の数%を占めます。電気料金の値上げ等により、このコストは着実に企業の経営に影響を与えているでしょう。また、事業リスクの観点からも、エネルギー消費の大きい設備に依存することは問題です。電力の使用が制限されると、設備を動かせないということも起こりうるのです。
省エネの必要性は誰もが当たり前に認識していますが、中小企業では省エネのための投資が難しいこともあります。そこで、さまざまな施策により省エネの取組を支援しています。
省エネルギー投資促進に向けた支援補助金
省エネ関連の支援制度として補助金、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)、省エネ再エネ高度化投資促進税制の3つがあります。以下では、省エネルギー投資促進に向けた支援補助金についてご紹介します。その他の施策は、資源エネルギー庁の省エネポータルサイトをご参照ください。
省エネルギー投資促進に向けた支援補助金として、令和4年度は以下のように多くの施策が実施されています。ここでは、中小企業で利用が多いと想定される省エネルギー設備への入替支援(先進的省エネルギー投資促進支援事業)を見ていきます。なお、令和4年度の公募はすでに終了していますが、令和5年度も実施される見込みです。
- 省エネルギー設備への入替支援(先進的省エネルギー投資促進支援事業)
- 住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業費補助金
- 中小企業等に対するエネルギー利用最適化推進事業費補助金
- 省エネ最適化診断・IoT診断
- 無料講師派遣
- 省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金
- AI・IoT等を活用した更なる輸送効率化推進事業費補助金
- 脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム
省エネルギー設備への入替支援(先進的省エネルギー投資促進支援事業)
事業者の省エネルギー対策を支援する施策として、先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金があります(※令和4年度は公募終了)。この補助金には以下の4つの事業区分があります。
出典:事業概要パンフレット
先進的省エネルギー投資促進支援事業の概要
先進的省エネルギー投資促進支援事業の4つの事業区分の概要についてまとめると、以下のとおりです。
事業区分の選択方法
先進的省エネルギー投資促進支援事業には4つの事業区分があり、導入する設備の内容やその省エネ効果によりどの事業区分で応募ができるかが異なります。導入する設備は以下の4つに区分されます。
a.先進設備・システム
b.オーダーメイド型設備
c.指定設備
d.EMS機器
このうち、a.先進設備・システム、b.オーダーメイド型設備、c.指定設備の省エネ効果を合算し、その合算された省エネ効果がA先進事業、Bオーダーメイド型事業、C指定設備導入事業のいずれの要件を満たすかによって、申請する事業区分を選択します。また、Dエネマネ事業はd.EMS機器による省エネ効果のみで判定します。
複数の設備を導入する場合、省エネ効果の要件を満たすことを前提として、a.先進設備・システムが含まれていればA先進事業、b.オーダーメイド型設備が含まれていればBオーダーメイド型事業に申請することができます。また、Dエネマネ事業は他の事業区分と併せて申請が可能です。
指定設備の設備区分
先進的省エネルギー投資促進支援事業では、導入する設備の要件が詳細に定められています。導入予定の設備が要件を満たすものかどうかは、公募要領をよく確認のうえ、メーカーや販売会社に相談をするとよいでしょう。なお、指定設備導入事業は一定の指定設備の導入を求められるもので、従来の省エネ補助金と類似のものです。設備区分として以下の15が挙げられており、比較的汎用性の高い設備導入を行う場合に適しています。
- 高効率空調
- 産業ヒートポンプ
- 業務用給湯器
- 高性能ボイラ
- 高効率コージェネレーション
- 変圧器
- 低炭素工業炉
- 冷凍冷蔵設備
- 産業用モータ
- 調光制御設備
- 工作機械
- プラスチック加工機械
- プレス機械
- 印刷機械
- ダイカストマシン
計画省エネルギー量、計画省エネルギー率、原単位改善率
本事業で最も重要なのは、どれくらいの省エネ効果を得られるかです。A先進事業、Bオーダーメイド型事業では申請書に計算過程、計算結果を記入することが求められますので、あらかじめエネルギー使用量等のデータを収集しておかなければなりません。省エネルギー計算では、事業実施前後の事業所全体の年間エネルギー使用量の比較を行います。計画省エネルギー量は事業実施前後の使用量の差であり、これと事業実施前の使用量に対する割合が計画省エネルギー率です。また、使用量の生産量に対する割合をエネルギー消費原単位といい、事業実施前後で原単位がどの程度改善したかを計算します。計画省エネルギー量、計画省エネルギー率、原単位改善率のいずれかで要件を満たす必要があります。
C指定設備導入事業の省エネルギー効果の計算では、補助事業ポータルに導入予定設備の稼働時間等を入力することで、省エネルギー量が自動的に計算されるようになっています。また、申請者が独自に省エネルギー計算を行い、省エネルギー量を算出して申請することもできます。
全体スケジュール
公募期間、事業期間ともに短いため、注意が必要です。令和4年度は5月25日~6月30日の約1ヵ月間に公募がなされました。例年、ほぼ同じスケジュールで実施されていますので、本事業の活用を検討する場合は、早めに準備をしておくとよいでしょう。
まとめ
- 省エネはコスト削減や事業リスク軽減の観点から取組が必要であり、さまざまな支援メニューが用意されている
- 一定の設備導入では、先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金を活用することで設備投資にかかる負担を軽減できる
- 先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金にはA先進事業、Bオーダーメイド型事業、C指定設備導入事業、Dエネマネ事業の4つの事業区分があり、導入する設備によって申請する区分が異なる
- A先進事業、Bオーダーメイド型事業は設備の要件や省エネルギー効率の計算方法等が複雑であるため、事前にメーカーや販売会社を交えた準備が必要である
- C指定設備導入事業は汎用性の高い設備投資にも利用できる
- その他税制や診断・情報提供等の支援も行われている