経営強化・起業
女性、若者/シニア起業家支援資金
2023年1月更新
労働力人口の減少が懸念される中、日本経済の活性化のためには女性や若者、高齢者等を含む多様な事業者による活発な開業が求められています。近年では、趣味や子育ての経験を活かして新たなサービスを展開する女性や、IT等の先端スキルを持つ若者、あるいは長年の経験や特技を活かしてビジネスを行おうとするシニアの起業が注目されています。
こうした起業意欲のある女性や若者、シニアを支援することで、新規事業や雇用の創出を図ることを目的に創設された融資制度として、「女性、若者/シニア起業家支援資金」があります。
女性、若者、シニアは開業資金の調達に困難を極める
実績のない創業期の企業が、民間の金融機関から融資を得るのは簡単ではありません。特に、信用力を低く評価されがちな女性や若者、シニア起業家は、資金調達において困難に直面する場合が多くあります。そこで、政府系の金融機関である日本政策金融公庫が実施している「女性、若者/シニア起業家支援資金」の活用についてご紹介します。
女性、若者/シニア起業家支援資金の概要
この制度は、女性、若者(35歳未満)、高齢者(55歳以上)の方で、新規開業から概ね7年以内の方を対象とした融資制度です。つまり、35~54歳までの男性以外なら誰でも対象となります。年齢制限を設けている点は、他の融資制度にはない特徴です。
貸付は、日本政策金融公庫または沖縄振興開発金融公庫が行います。対象となる資金は設備資金および運転資金で、融資限度額は7,200万円です。貸付期間は、設備資金の場合は20年以内、運転資金の場合は7年以内となりますが、最初の2年以内は据え置き期間として元本の支払いが猶予されます。つまり、最長で2年間は利息のみを支払えば良いということになります。
貸付の利率は、(1)女性の方、35歳未満または55歳以上の方は基準利率から0.4%引き下げられた特別利率Aが適用されますが、そのうち、(2)技術・ノウハウ等に新規性が見られる方、(3)地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める方や、(4)地方創生推進交付金を活用した起業支援金と移住支援金の両方の交付決定を受けて新たに事業を始める方については、さらに優遇された特別利率B、Cが適用されます。ただし、いずれの場合も特別利率が適用されるのは設備資金および運転資金で、土地取得資金の場合は基準利率となります。基準利率は金利情勢によって変動しますので、最新の情報は日本政策金融公庫のホームページでご確認ください。
参考までに、令和5年1月4日現在で無担保の場合、2.15%~3.15%となっています。
融資限度額 |
7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
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対象資金 |
設備資金および運転資金 |
貸付期間 |
設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内) |
貸付利率 |
(1) 女性の方、35歳未満または55歳以上の方:特別利率A(基準利率より0.4%引き下げ) |
融資を受けるための要件
融資を受けるための要件は、先にお伝えした「年齢・性別が合致しているか」のみです。「取引実績がない」、「貸し倒れのリスクが大きい」等の理由で、民間の金融機関からは貸してもらえないケースのある中小企業者、小規模事業者でも比較的借りやすい融資ですので、ぜひ活用を検討してみてください。
日本政策金融公庫から融資を受けるメリット
<メリット(1)>
日本政策金融公庫の融資の最大のメリットは、過去の実績がなくても融資を受けられることです。民間の金融機関では、貸付リスクの大きい相手にはなかなか融資が下りませんが、国の政策として積極的に新規事業を支援しているため、起業時や独立開業時に積極的に利用することができます。
<メリット(2)>
日本政策金融公庫には、無担保・無保証の融資制度として「新創業融資制度」があります。「女性、若者/シニア起業家支援資金」と併用することで、無担保・無保証で融資を受けることも可能となります。
<メリット(3)>
民間の金融機関では、企業の格付けにより金利が決まり、業績が悪いほど高金利となります。日本政策金融公庫では、融資の種類によって金利が決まっており、財務状況によらず一律に低金利で融資を受けられる点もメリットとして挙げられます。
<メリット(4)>
上述のとおり、融資の種類によって固定の金利が決定するため、安心して中長期の事業計画を策定することができます。
<メリット(5)>
民間の場合、短くて半年、長くても7年で返済するのが一般的ですが、日本政策金融公庫の場合は最長で20年と、長期の借入が可能となっています。
手続きの方法
全国にある日本政策金融公庫の支店窓口で、申請に必要な書類を一式揃えます。提出する書類は、(1)借入申込書、(2)創業計画書、(3)前年度の収入がわかる書類(源泉徴収票や確定申告書の写し等)、(4)身分を証明するもの(運転免許証、パスポート、写真付きの住民基本台帳カード等、公的機関が発行する身分証明書)の4つが必要となります。状況に応じて、その他必要となる書類が異なってきますので、詳しくは支店窓口や日本政策金融公庫相談ダイヤルナビ等にお問い合わせください。
まとめ
- 女性や35歳未満、55歳以上の男性が新規開業する際には、「女性、若者/シニア起業家支援資金」の活用がおすすめ
- 設備資金や運転資金を対象に7,200万円まで融資が受けられる
- 最長2年間、元本返済の据置期間の優遇が受けられる
- 普通貸付よりも利率の引き下げの優遇が受けられる
- 無担保、無保証の融資制度との併用も可能
- 日本政策金融公庫の融資は、「開業資金の借入が可能」、「無担保・無保証制度がある」、「民間の金融機関よりも低利」、「固定金利で借入が可能」、「長期間の借入が可能」といったメリットがある
- 手続きは日本政策金融公庫の窓口で直接行う