経営強化・起業

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

2023年1月内容改訂

企業間の競争がますます激しくなる一方で、人手不足は深刻です。これからの企業経営では、付加価値と生産性の向上を同時に達成していかなければなりません。また、近年は中小企業を対象とした制度変更が多く、設備投資やシステム導入が必要となる機会も増えています。このようなときに利用できる制度として、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)があります。

ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が今後相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援する補助金です。

補助金事業の全体像

補助金による事業には独特な面がありますので、まずは全体像を把握しておく必要があります。補助金を利用する事業の全体的なスケジュールは、次のようになります。

補助金を利用する事業の全体的なスケジュール

応募をする前に知っておかなければならないことが3つあります。

(1)応募申請・審査・採択決定

ものづくり補助金は、所定の期間内に必要書類を揃えて応募申請をしなければなりません。令和元年度補正・令和二年度補正のものづくり補助金から通年募集となり、概ね3ヵ月ごとに〆切が設けられるようになりました。なお、応募申請をすれば必ず補助金を受けられるものではなく、審査に合格しなければなりません。

(2)補助事業実施期間

ものづくり補助金は設備投資等を支援するもので、実施できる期間が決まっています。これを補助事業実施期間といい、交付決定日から10ヵ月以内(採択発表日から12ヵ月以内)とされています。この間に発注、納入、検収、支払や試作開発を行わなければなりません。もし、期間内に納入が間に合わないとなると、補助金を受けることができなくなります。

(3)精算払い

上図でも支払の後に補助金支払いとなっているとおり、補助金は後払いです。したがって、設備投資等の費用を全額準備しておく必要があります。あらかじめ資金繰りの計画を作っておくことも必要になります。

補助対象事業と補助率

ものづくり補助金には、一般型とグローバル展開型の2つがあり、一般型の中にも多くの枠があります。公募回ごとに変更も多いため、最新の公募要領をよく確認するようにしましょう。

一般型の概要を以下に示します。なお、通常枠以外の枠では、基本要件に加えた追加要件や基本要件の返還要件に加えた追加の返還要件、また、大幅賃上げに係る補助上限額の引き上げの特例があるため、公募要領で確認するようにしてください。

<通常枠>

通常枠

<回復型賃上げ・雇用拡大枠>

回復型賃上げ・雇用拡大枠

<デジタル枠>

デジタル枠

<グリーン枠>

グリーン枠

<グローバル市場開拓枠>

グローバル市場開拓枠

補助対象事業の要件

ものづくり補助金では、いくつかの数値目標の達成が求められます。具体的には、以下の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定することが必要です。

  • 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
  • 事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
  • 事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加

付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものをいいます。また、給与支給総額とは、全従業員(非常勤を含む)及び役員に支払った給与等(給料、賃金、賞与及び役員報酬等は含み、福利厚生費、法定福利費や退職金は除く)をいいます。

給与支給総額の増加目標や事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合、補助金の返還を求められる可能性があることに注意しなければなりません。この点は非常に重要となりますので、必ず公募要領で詳細を確認するようにしましょう。

応募手続き

申請は、電子申請システムでの受付となります。申請には、GビズIDプライムアカウントの取得が必要です。GビズIDにはプライムとエントリーの2種類がありますが、申請で使えるのはプライムとなります。プライムではアカウント発行に書類審査があり、不備がなくても1週間程度かかりますので、早めに準備を進めるようにしてください。

申請書作成の前に必要なこと

最後に審査項目を確認しておきます。審査項目には技術面、事業化面、政策面と加点項目がありますが、申請書を作成する際は、技術面と事業化面でどのような点を審査するのかを理解しておくことが必須です。

(1)技術面の審査項目

ア. 新製品・新サービスの革新的な開発となっているか
「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」または「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」に沿った取組みであるか

イ. 試作品・サービスモデル等の開発における課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか

ウ. 課題の解決方法が明確かつ妥当であり、優位性が見込まれるか

エ. 補助事業実施のための技術的能力が備わっているか

(2)事業化面の審査項目

ア. 補助事業実施のための社内外の体制(人材、事務処理能力、専門的知見等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。金融機関等からの十分な資金の調達が見込まれるか

イ. 事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケットおよび市場規模が明確か。クラウドファンディング等を活用し、市場ニーズの有無を検証できているか

ウ. 補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法およびスケジュールが妥当か

エ. 補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して想定される売上・収益の規模、その実現性等)が高いか

まとめ

  1. 設備投資等の計画がある場合には、ものづくり補助金の利用が有効である
  2. 補助対象事業には、一般型とグローバル展開型の2類型があり、それぞれ補助上限額や補助率が異なる
  3. 計画書の増加目標が未達の場合、補助金の返還を求められる可能性があることに留意する
  4. 申請は電子申請システムでの受付となるため、あらかじめGビズIDプライムアカウントを取得しておく
  5. 申請書を作成する際は、審査項目を理解し、その項目に沿った内容とすることが重要である