ビジネスQ&A
越境ECを始めたいのですが、関税について注意すべき点を教えてください
2022年 5月 6日
回答
関税について全てを理解することは難しいです。まずは取扱品目のHSコードを理解しておきましょう。また越境ECの形態と輸出相手先国に応じた対応が必要となりますので、事前の情報収集が大切です。
越境ECを始めるにあたり、最初に決まるのは取扱品目
越境ECを開始する形態は大きく2つに分かれます。Amazonといったマーケットプレイスを利用する場合と、Shopifyなどで自社ECサイトを構築する場合です。それぞれにメリット・デメリットがありますが、いずれを選択した場合でも、物品を輸出する際には関税について対応しなければなりません。
関税とは「輸入品に課される税」と定義されています(財務省関税局HP)。その目的は、(1)国内産業を守るため、(2)国家収入を得るため、とされていますが、先進国においては最近の米中貿易戦争にみられるような政治の道具に使われることも多いようです。各国がそれぞれ設定しており、世界貿易機関(WTO)加盟国地域に対しては一定率以上の関税を課さない取り決めがあります。実務において、国ごとに品目ごとの税率を理解することは専門家でなければ非常に難しいです。
関税の制度は国によって異なり、複雑です。しかし、それが貿易障害になってはいけない、とのことで、これを各国で統一しようという動きが20世紀初めに起こりました。それを発展させたものが「HSコード(国際統一商品分類)」です。HSコードは国際貿易の対象となるすべての商品を網羅するように構成されており、6桁の数字で表現されます。
自社が輸出販売する品目が定まりましたら、まずは財務省関税局の下記URLより、輸出統計品目表にてHSコードを確認しましょう。
なお、古美術品、種子や球根などの植物、ハイスペックパソコン、銃砲や刀剣類など法令により輸出の許可や承認が必要な場合があります。爆発物・危険物やわいせつな物品、貴重品など、輸出入が禁止されているものもあります。このような商品について出品前に確認しておくのが良いでしょう。
初めての通関手続きは国際郵便マイページの活用が簡単です
輸出価格が20万円以下の場合、輸出に必要な書類は税関通知書のみです。20万円を超える場合は輸出申告書が必要となり、諸手続きが増えます。国によってはインボイスが必要になるなど事情が異なります。事業規模が大きくなれば特定の通関業者に委託して税関申告者としてサポートを得ることを検討してもよいでしょう。しかし、越境ECを始めばかりの段階では、自社で対応することが多いのではないでしょうか。
発送時に日本郵便の国際郵便マイページサービスを利用することで、必要な書類を自動で出力できます。英語またはフランス語で受取人の国、住所、氏名、内容品と共にHSコードを入力することで通関がスムーズに進みます。
越境ECにおけるVAT(付加価値税)
輸出時に気をつけなければならないのは関税だけではありません。2021年7月1日にEUにおける電子商取引(EC)に適用されるVATに関する改正が施行されました。従来EU域外の事業者による22ユーロ以下の少額商品のEUへの輸入はVATが免除されていましたが、悪質な事業者による脱税行為が発生していました。改正によりEUへの輸入貨物は全て輸入VATの対象となり、150ユーロを超える取引については、輸入VATに加えて更に関税が掛かります。また新制度「IOSS(Import One Stop Shop / 輸入ワンストップショップ)」が導入されました。IOSSに登録したマーケットプレイスが「みなし供給者」と定義されることで、それを活用する事業者にとってEU向けに販売するときの手続き費用を大きく削減できるようになりました。反対に、マーケットプレイスを利用しない事業者の場合は、自社でIOSS制度に登録するか、消費者が注文した商品を受け取る際に税関やクーリエサービス業者からVATの支払いを請求されることになります。この場合、消費者と充分なコミュニケーションをとっておかないと、税の支払拒否による受取拒否などによって取引が成立しないなど、自社の信用を損なうリスクがあります。
最後の注意点として、関税ではありませんが、現在新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響で全世界の航空機が減便・運休となっています。国によって感染症からの回復度合いに差があるものの、国別に発送の不可や遅延具合をタイムリーに確認することも越境ECビジネスを実施する上では大切なこととなります。日本貿易振興機構(JETRO)などの公的機関や郵便局など各社からのリアルタイムな情報取集に努めて下さい。
- 回答者
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中小企業診断士 打越 大輔
- 関連情報
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財務省関税局
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日本郵便株式会社
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日本貿易振興機構(JETRO)
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