ビジネスQ&A
リスト規制とキャッチオール規制について教えてください。
当社は化学薬品のプラント製造を行っています。海外展開を図るにあたり、法的な部分を勉強していますが、輸出品の規制にはリスト規制とキャッチオール規制というものがあると聞きました。どのようなものなのか、教えてください。
回答
許可が必要となる物や技術を定めたものがリスト規制、リスト規制に該当しなくても用途や需要者により許可が必要となることを定めたものがキャッチオール規制です。法解釈などに少しでも懸念があるようであれば、必ず経済産業省に相談するようにしてください。
日本国から海外に輸出を行う際、「リスト規制」または「キャッチオール規制」に該当する場合は、安全保障上の理由により、外国為替及び外国貿易法に基づく経済産業大臣の許可を得てから輸出を行う必要があります。
「リスト規制」と「キャッチオール規制」の両者を正しく理解することが海外展開への第一歩と言っても過言ではないでしょう。
【リスト規制】
リスト規制とは、その名の通り輸出に際して許可が必要になる物や技術をリスト化したものです。下表のように分類されています。これに該当するものを輸出する場合は、経済産業大臣の許可が必要になります。
1 武器 |
8 コンピューター |
2 原子力 |
9 通信関連 |
3 化学兵器 |
10 センサー・レーザー等 |
3の2 生物兵器 |
11 航法関連 |
4 ミサイル |
12 海洋関連 |
5 先端材料 |
13 推進装置 |
6 材料加工 |
14 その他 |
7 エレクトロニクス |
15 機微品目 |
各々の項目にはさらに細分化された項目が定められています。最新の情報は経済産業省の安全保障貿易管理ホームページで確認することができますので、常に最新の情報で確認するようにしてください。
注意が必要なのは、海外の自社工場や日系企業に輸出しようとする場合でも許可が必要になるということです。自社工場で使用するものだから許可を取らずにいいだろうと、安易に考えないでください。
また、リストには、俗に「GPS」と呼ばれる貨物など、そのとおりの名称が記載されていないものもありますので、注意してください。「GPS」については、「衛星航法システムからの電波を受信する装置」と記載されています。
【キャッチオール規制】
リスト規制に該当しないからと言って、すべての物や技術を輸出や提供できるわけではありません。もうひとつ「キャッチオール規制」という規制があります。
これは、リスト規制品に該当しない物の輸出や技術の提供に対して、その用途と需要者の内容に基づき、大量破壊兵器や通常兵器の開発などに使用されるおそれがある場合に規制を行うものです。
なお、この規制はすべての国が対象ではなく、米、加、EU諸国等の輸出を厳格に実施しているホワイト国と呼ばれる国に対してはキャッチオール規制の対象外になります。ホワイト国は、輸出貿易管理令の別表3に規定されていて、2015年11月現在で27カ国(アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、大韓民国、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国)となっています。
上記のホワイト国以外に輸出や技術提供する場合は下記の2つの要件を審査し、許可が必要かどうか確認を行うことになります。
経済産業省の安全保障貿易管理ホームページで、キャッチオール規制に該当するか否かを確認する際の参考となるフロー図などを公表しておりますので、参照してみてください。
1.用途要件
日本から輸出や提供された物や技術が、最終的に大量破壊兵器や通常兵器の開発などに使用されるおそれがあるか。
2.需要者要件
日本から輸出や提供された物や技術を受け取る者や最終的に使用する者が、大量破壊兵器の開発などを行っている(または行った)か。または外国ユーザーリストに該当するか。
※外国ユーザーリストとは、経済産業省がホームページで公表しているリストで、このリストにある者に物や技術を輸出や提供する場合には、大量破壊兵器の開発等に用いられないことが明らかなときを除き、許可が必要とされています。
【法解釈などに懸念があったら経済産業省に相談を】
自社が輸出や提供する物や技術が、リスト規制に該当するのか、リスト規制に該当しないでもキャッチオール規制に該当するのかどうかなど、法解釈などに懸念があるにも係わらず安易に判断するのは非常に危険です。誤って違法輸出を行ってしまう場合があります。
少しでも懸念があるようでしたら、まずは相談してください。経済産業省では相談窓口を設置しており、そちらに相談をすると適切な部署を紹介してくれます。
<経済産業省 安全保障貿易案内窓口>
電話:03-3501-3679
事前の懸念をクリアにした上で、海外展開にチャレンジしていただきたいと思います。
- 回答者
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中小企業診断士 遠藤 康浩
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