ビジネスQ&A
為替予約の仕組みと留意点について教えてください。
産業材輸出商社の輸出担当者です。これまで為替予約は一切せず、取引時点の相場で決済してきました。しかし、円高対策として為替予約をし、為替メリットを回収するようにとの社長指示がありました。為替予約の仕組みと留意点について教えてください。
回答
先物予約は、為替変動リスクの軽減に有効な手法であり、予約実行時点で取引採算が確定できるというメリットがあります。しかし、一度予約すると原則、取消ができず期日に受け渡しの義務が生じます。先物予約には確定日渡しと期間渡しがあり、それぞれについて利用条件がありますので、あらかじめ金融機関等に相談されることをお勧めします。
【先物予約とは】
先物予約とは、外国為替取引において、将来の一定の期日または期間を、予約の実行日または期間と定めて、銀行と外貨の決済を行う為替レートをあらかじめ取り決めておく為替売買取引です。
将来に関することから「予約」という言葉が使われますが、銀行との外国為替取引では、「外国為替予約取引約定書」により、「売買取引」と規定されており、銀行の事前審査を受ける必要があります。
これは、万一顧客が倒産などの理由で先物為替予約の実行が不履行になった場合に、市場実勢レートとの差損金を顧客から回収できなくなるリスクがあり、先物予約の締結を銀行は顧客に対する与信行為とみなしているからです。
【先物予約の留意点】
先物予約は原則として、あらかじめ決めた予約の実行日または実行期間内に、締結済みの予約金額のすべてを消化しなければなりません。しかし戦争や暴動・テロ、悪天候により輸送ができない等、真にやむを得ない理由がある場合には、銀行に先物予約の期日変更(予約の延長)や取消に応じてもらえる場合があります。
先物予約の期日延長などの必要性が生じた場合には、銀行内部での審査・事務処理などの手続きに時間がかかりますので、できるだけ時間的余裕を持って銀行と相談を開始することが必要です。
【確定日渡しと期間渡し】
1.確定日渡し
確定日渡しは、たとえば2月13日渡しというように予約の実行日を特定します。このように特定日は、たとえば銀行が企業から持ち込まれる輸出荷為替手形の買取りを行う日、または外貨定期預金の預入・満期解約などの外貨の支払期日や、外貨の受領日が事前に確定している外国為替取引に利用されます。
2.期間渡し
期間渡しは、たとえば輸出入契約の締結後、受け払いする外貨建て代金の決済時期が特定日に確定できない場合や、数日間の着金のずれ込みや前倒しで支払を実行するなどの事態が予想されるような場合に利用されます。たとえば「2月渡し」といったカレンダーベースでの決め方を「暦日渡し」と呼んでおり、その暦の1日から月末までの期間であれば、銀行の休業日を除き、いつでも予約の実行ができます。
その他、期間渡しには、「特定期間渡し」「順月期間渡し」がありますが、その予約が可能な期間中であれば、いつでも予約の実行が可能であり、輸出・輸入の同方向であれば、何回でも分割して実行することが可能です。
【取引採算】
為替予約については、予約締結時点で為替上の取引採算が確定します。たとえば、米ドル建ての先物予約であれば、米ドルと円の二国通貨間の金利差と、予約に係る銀行マージン等のコストにより決まります。またその他の直接的な費用(手数料等)は、必要ありません。
- 回答者
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中小企業診断士 林 隆男
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