経営ハンドブック
公的支援の受け方
採用活動や働き方改革で資金的な援助が出る
少子高齢化で、人手不足はますます深刻化する。知名度や資本力に乏しい中小企業にとっては、中高年や女性、障害者の活用といった取り組みも必要になる。生産性を高めるためには、従業員のスキルアップも欠かせない。そのために、資金面から支援する仕組みが用意されている。ここでは、人材の雇用や育成につながる助成金を紹介する。
人材の雇用や育成に利用できる助成金
- 雇用環境を整備する
- 女性や中高年者、障害者を雇用する
- 従業員のスキルを高める
1.雇用環境を整備する
働き方改革や人事評価制度見直しなどによって、従業員が働きやすい環境を整備する際に利用できる「人材確保等支援助成金」がある。2019年に新設された「働き方改革支援コース」のほか、「人事評価改善等助成コース」「設備改善等支援コース」「雇用管理制度助成コース」などがある。
長時間残業を削減するために、人員の拡充を図る中堅・中小企業を支援するのが「働き方改革支援コース」だ。新規雇用労働者10人を上限として、1人当たり60万円(一般労働者)または40万円(短時間労働者)が支給される。条件として時間外労働等改善助成金(時間外労働上限設定コース、勤務間インターバル導入コース、職場意識改善コース)の支給を受けていること、雇用管理改善の取り組み(人材配置の変更や労働者の負担軽減など)に関わる1年間の雇用管理改善計画を作成し、都道府県労働局の認定を受ける必要がある。
「人事評価改善等助成コース」は、人事評価制度を整備し、生産性向上に加えて、賃金アップや離職率の低下を図る中堅・中小企業が対象となる。「設備改善等支援コース」は、生産性向上に資する設備などを導入で、賃金アップなどの実現を目指す中堅・中小企業が対象となる。「雇用管理制度助成コース」は、評価・処遇制度や研修制度、健康づくり制度などの導入を内容とする雇用管理制度整備計画を作成し、都道府県労働局の認定を受けた中堅・中小企業が対象となる。
2.女性や中高年者、障害者を雇用する
人手不足を賄うには、中高年者や女性、障害者といった人材を活用することも考えないといけない。実務経験を持つ中途採用者が業務改善や販路開拓などに貢献すれば、収益を伸ばすことが期待できる。また、女性や障害者が入ることによって、働きやすい職場づくりを考えるきっかけになるだろう。
中途採用者の労働環境を整えて採用することが対象となる「中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)」では、都道府県労働局に中途採用計画を提出する必要がある。中途採用率が50%未満の事業所が2人以上を雇い入れて中途採用率を20ポイント以上高めること、もしくは45歳以上を中途採用したことがない事業所が1人以上雇い入れることが条件だ。中途採用率が向上した場合は50万円、45歳以上を初採用した場合は60万円が支給される。また、「UIJターンコース」という、東京圏からの移住者を雇い入れた中小企業を支援する制度もある。
高齢者の雇用に対しては「65歳超雇用推進助成金」がある。定年の引き上げや廃止などを実施した中小企業を支援する「65歳超継続雇用促進コース」、職業能力評価や短時間勤務制度などを導入した中小企業を支援する「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」、50歳以上の定年年齢未満の従業員を無期雇用に転換させた中小企業を支援する「高齢者無期雇用転換コース」が用意されている。
女性活用では、女性が活躍できる環境を目指す行動計画を策定、その目標を達成した中小企業を助成する「両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)」がある。障害者活用では、雇用管理の見直しや雇用形態の工夫などの措置を講じた中小企業を助成する「障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)」などがある。
3.従業員のスキルを高める
職務に関連した知識や技能を従業員に習得させるための訓練実施や制度導入で、経費や訓練期間中の賃金について一部を助成するのが「人材開発支援助成金」だ。対象は、採用5年以内で35歳未満の従業員。都道府県の労働局で受け付ける。正社員だけでなく、契約社員や短時間労働者などを対象にしたコースもある。
厚生労働省では、ほかにも中小企業を対象とする雇用関連の助成金を用意している。例えば、時間外労働の改善や3カ月のトライアル雇用といった取り組みにも支給される制度がある。