経営ハンドブック
外国人活用
外国人の考え方を理解し、日本の習慣を押し付けない
厚生労働省が発表している「外国人雇用状況」の届出状況によると、外国人労働者は2018年10月末時点で約146万人(前年同期比14.2%増加)と過去最高を更新、2008年と比べると3倍に増えている。人手不足が深刻になる中で、外国人労働者の4分の3が従業員数499人以下の事業所で働いており、中堅・中小企業にとってなくてはならない存在になりつつある。
外国人を採用・定着させるポイント
- 公的機関による外国人採用支援を利用する
- 採用に当たっては在留資格に気をつける
- 日本で働く不安や不満を取り除く
1.公的機関による外国人採用支援を利用する
外国人を採用したことのない経営者はまずは、外国人留学生の公的就労支援機関に相談してみるとよい。厚生労働省は、東京・愛知・大阪に「外国人雇用サービスセンター」(外国人版ハローワーク)を設置するとともに、留学生の多い18地域の「新卒応援ハローワーク」に「留学生コーナー」を設置している(2018年4月時点)。外国人採用に関する相談を受け付けたり、マッチングの機会を用意したりしている。さらに、中小企業の外国人インターンシップの受け入れを支援する制度もある。いきなり雇用するのが不安であれば、このような制度を使ってみてもいいだろう。
また、「高度外国人材」の採用に関心を持つ中堅・中小企業に対し、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)が2018年12月25日から「伴走型支援」と銘打ったサービスを開始した。高度外国人人材とは、技術に詳しい研究者やエンジニア、経営に関わる役員や管理職、法務や会計などの専門職、海外進出担当の営業職などを指す。併走型支援では専門家から継続的なアドバイスを受けながら、高度外国人材の採用や育成・定着など、それぞれの段階で必要なサポートを受けられるという内容になっている。
このほか、地元の大学や高校などのキャリアセンター(就職課)に相談したり、外国人人材を紹介している民間業者を利用したりするなどの方法がある。外国人を1人採用できれば、その後は、その知人が集まってきたり、クチコミなどで募集をかけたりすることも期待できる。
2.採用に当たっては在留資格に気をつける
外国人が日本で働く場合は、就労資格を持っている必要がある。雇用に当たっては、在留資格を証明するパスポートと、就労資格の有無と制限内容が書かれた在留カードなどを確認しておく。留学生は週28時間以内と、労働時間が規定されている。
「技能実習制度」で、外国人を受け入れる中小企業もある。同制度は外国人が自国では修得が難しい技術などを身につけるため、中小企業などと雇用関係を結ぶもの。期間は最長5年。この際、中小企業は技能実習計画が適当である旨の認定を外国人技能実習機構から受ける必要がある。ただ、技能実習制度では、低賃金や長時間の労働環境を外国人実習生に強いているケースがあり、社会問題となっている。
3.日本で働く不安や不満を取り除く
異国で働くことを不安に感じるのは、誰しも変わらない。経営者自らが積極的にコミュニケーションを取る、担当業務を明確にして丁寧に指示を出す、作業の手順書などは母国語版を用意するといった配慮が欠かせない。
全社員148人のうち、18人が南米出身者という愛知県の自動車部品関連メーカーの社長は、休日でも外国人が集まって食事会をすると聞けば、参加者の了解を得たうえで、夫婦で参加して交流を深めている。この結果、外国人の離職率は10%程度に留まっており、外国人の平均離職率14.9%(「平成 29 年雇用動向調査」による)を下回っている。
日本人にとっては当たり前の習慣が、外国人の不満となっているケースもある。例えば、日本企業では「ボスの命令は絶対」で、上長に対して意見を述べることを避ける傾向が強い。しかし、外国人は決定に至るプロセスが不明な場合、自分の主張を述べたり、上長に反論したりしてくることも多い。こうした事態に直面したときには、日本の習慣が世界と比べて異なっているという認識で対応したほうが、外国人材の定着にはプラスに働く。
待遇面でも、国籍に関係なく、平等に処遇する必要がある。日本人従業員の指導役に外国人を抜擢している中小企業もある。この社長は、「新興国から来た人は、日本で働くことに誇りを持っている。選ばれた人という意識がある」と話す。外国籍であっても、能力に応じた役割を担わせることで、モチベーションを引き出している。
社員として迎え入れる以上、単純な労働要員ではない。その人の能力や意識次第で昇格・昇給できる道を整えたほうが、仕事を積極的に覚えるようになったり会社を辞めなくなったりするなど、経営者にとってもプラスになる。
在留資格別外国人労働者数の推移