経営ハンドブック

アウトソーシング

2023年 8月 2日

アウトソーシングのイメージ01

アウトソーシングでコスト削減や生産性向上、人材不足解消を改善する

アウトソーシングは中小企業にとってコスト削減や生産性向上に繋がりうる有用な手段だ。とはいえ、未だ認識不足や不安が残ったままで、導入に至れていない場合も珍しくないだろう。また、アウトソーシングを効果的に活用するには、企業側も計画的に準備を行う必要がある。本記事では、中小企業のアウトソーシング導入方法やメリット・デメリット、注意点などを事例も交えて多角的に解説する。アウトソーシングは、中小企業が抱える人材不足解消にも繋がるので、一度検討してみることをお勧めする。経営改善を目指す事業者は是非一読して頂きたい。

アウトソーシング導入のポイント

  1. アウトソーシングとは
  2. アウトソーシングの導入方法
  3. アウトソーシングのメリット
  4. アウトソーシングのデメリット
  5. クラウドソーシングとアウトソーシング

1.アウトソーシングとは

アウトソーシングとは、「outsource」という英語に由来しており、日本語では「外部委託」を意味する。「企業価値を維持・向上させるために外部リソースを活用する」という側面が強く、ただ単に業務を外部に委託するだけではない。

アウトソーシングは、コスト削減を目的に情報システム関連、総務、人事、財務・経理、購買などのバックオフィス分野で急速に普及した。しかしながら、現在では単にコスト削減だけでなく、会社のコア事業に集中するためのリソース配分や、人材不足解消など目的も多様化している。

【人材派遣との違い】

アウトソーシングを行う目的である「人件費削減やコア業務の強化、人手不足解消」の方法としては、人材派遣の活用も一般的だ。人材派遣とアウトソーシングの大きな違いは、提供するサービスの内容である。派遣は人材の提供でありその「労働」に対して対価が発生するが、アウトソーシングは業務や成果物の提供であり、その「結果」に対して報酬が発生する。

また、契約の形態についても異なる。人材派遣の場合は派遣会社と受入企業が「派遣契約」を締結するが、アウトソーシングでは受託会社と受入企業との間で「請負契約」が成立する。

2.アウトソーシングの導入方法

アウトソーシングは、目的や作業内容を明確化し、戦略的・計画的に行う必要がある。実際の導入にあたっては、アウトソーシング会社の提案力を活用することで、効果を飛躍的に向上できる。

(1)ヒアリングを受けることによる現状把握

アウトソーシングの導入成功の鍵は、現在の課題を明確にし、共通の目的を定めることから始まる。最初に行うべきは、導入前にヒアリングを受けることで問題の本質を特定し、今後の方向性や将来像を確認することだ。

(2)課題分析と改善計画の策定

ヒアリングによって抽出された課題を分析し、今後の方向性を決定する。自社ですら気付かなかった問題点を、積極的に見直す好機となる。方向性を決定した後は、アウトソーシングの範囲を決めていくが、明確に線引きしておかなければ、トラブルの原因となるため注意が必要だ。

(3)業務標準化

課題分析や改善計画の結果をもとに、業務内容を社内で標準化し、情報共有を図る。業務の標準化を図り「同一業務を同一手順化」しなければ、作業時間が無駄に長くなり、アウトプットが低下する。業務標準化や手順見直しは、無駄な時間を省き、生産性を向上させることに繋がり、アウトソーシングの効果を向上させる。

(4)導入計画

作業の優先度および重要性を分析し、具体的な運用方法を構築する。システム構成と運用作業の間にズレがないことを確認し、最終調整を行う。アウトソーサーとの連絡や対応方法、業務時間外の対応など詳細に決めておくことが重要だ。状況に応じて、社内の組織再編を検討する必要もある。

(5)業務範囲と品質の調整

アウトソーシングにおいて最も注意すべき点は、受託企業と受入企業の認識のズレにより発生するトラブルだ。こうしたトラブルを回避するためには、依頼内容について事前に綿密に協議し、共通認識を確立する必要がある。

重視するべき点として、口頭ではなく、必ず書面による伝達や合意を行うことだ。記録が残る形でのコミュニケーションを行うことで、トラブルの予防と迅速な解決が可能となる。

(6)テスト運用

実際にシステムを運用し、問題が生じていないか確認する。時間や人員によって生じるムラを最小限に抑え、安定したサービス提供を目指す。もし問題が生じた場合は、何度でも話し合いを重ねて、適切な改善策を見つけ出す必要がある。

(7)運用開始

テスト運用に問題がなければ、本格導入を行う。導入後も、常に改善点のチェックを怠らず、提案や疑問点はアウトソーサーと協議しなければならない。日々問題点を洗い出す場を作り、改善点を共有することはスムーズな運用のために必須となる。

3.アウトソーシングのメリット

アウトソーシング市場が好調である背景には、急速に変化するビジネス環境において、企業が競争力を高めていくために外部リソースを活用する必要性が高まっていることが挙げられる。アウトソーシングの導入で、企業には以下のようなメリットが発生する。

(1)コスト削減に繋がる

アウトソーシングを行う目的の1つである、人件費や固定費の大幅な削減が可能になる。一連の業務をアウトソーシングすることで、人件費だけでなく関連する固定費のコストカットも期待できる。アウトソーシング費用はかかるが、自社で運営する場合よりも低コストで済む場合が大半だ。

(2)専門的ノウハウを活用できる

アウトソーシングを利用することで、自社で人材育成をせずに、必要な専門スキルを直ちに利用することが可能となる。人材育成は時間やコストがかかり、そのプロセスには退職などのリスクが伴う。特に、急速に進歩するIT業務や汎用性の高い業務は、アウトソーシングを活用することで素早く・効率的に対応でき、そのメリットを最大限に享受できる。

(3)業務品質が向上する

外部の専門的な知見を取り入れることで、企業の業務品質を高めることができる。通常、業務品質を向上するには、最新ツールやテクノロジーを必要とすることがあるが、自社内で導入するのではなく、アウトソーシングによって最新技術を導入することで手軽に品質を向上できる。

(4)コア業務を強化できる

競争力を高めるには、企業が提供するサービスの価値を高めることが不可欠だ。しかし、サービスの開発・成長に集中するには、多大なリソースを投下する必要がある。多くの企業は、日々の雑務に追われ、サービスの改善に集中できていないのが現状だ。アウトソーシングを有効利用することで、企業は自社のコア業務にリソースを集中することが可能になり、競争力の強化に繋がる。

(5)組織健全化に繋がる

企業が拡大するにつれ、従業員数や部署数が増加し、それに伴って従来は直接的でなかった業務も増えていく。これが組織の肥大化に繋がり、事業の収益に悪影響を与えることになる。このような状況を避けるためには、一部の定型業務をアウトソーシングしたり、外部の専門家を活用したりして、業務を効率化することが重要だ。こうした取り組みによって、組織の健全化が可能となる。

4.アウトソーシングのデメリット

アウトソーシングには、多くのメリットがある一方で、デメリットも存在する。特に、外部スタッフに業務を委託することで引き起こされるリスクには注意が必要だ。

(1)社内にノウハウが蓄積しない

アウトソーシングを行うことにより、社員の担当する業務量が減少し負担が軽減される一方で、「経験値を高めることができない」というデメリットが発生する。しかし同時に、アウトソーサーが持つ高度な技術や長年にわたるノウハウを吸収できるメリットもあるため、丸投げするのではなく、定期的な報告ややりとりを通じてノウハウを共有していくことが肝要である。

(2)ガバナンス低下のリスクがある

ガバナンスとは、企業が健全に運営されるように、監視・統制する仕組みを指す。アウトソーシングでは、業務プロセスを管理できなければ、品質低下リスクや、情報漏洩の危険性もある。このリスクを回避するには、「迅速かつ円滑なコミュニケーションを確保し、信頼性の高い受託企業を選定すること」また「その業者に一任せず適宜監視を行うこと」が必要である。

(3)運用方法を誤るとコストが高くなる

自社内で効率化が進んでいる業務などをアウトソーシングする場合、逆にコストが上昇する可能性がある。アウトソーシングする業務は慎重に選定し、効果的に行うことが重要だ。

5.クラウドソーシングとアウトソーシング

クラウドソーシングとは、インターネット上で不特定多数の者に業務を委託することだ。業務委託という意味では、アウトソーシングの一種とも言える。

業務を請負うのは、クラウドソーシングサイトに登録している個人事業主やフリーランスが多く、業務の品質は千差万別だ。業者選びが非常に重要で、一定水準に達したサービスを継続して受けるのは、非常に難しく注意が必要である。

業務品質が一定レベルで担保されるアウトソーシングとは、この点で大きな違いがある。しかし、クラウドソーシングでは、非常に安価に仕事を依頼できることがあり、この点は魅力的だ。手軽さと低コストで選ぶならクラウドソーシング、業務品質と安心感で選ぶならアウトソーシングと言えるだろう。

近年増加傾向にあるのが、企業で働きながら個人として仕事をする「副業人材」だ。企業というバックボーンを持ちながら、そこで培ったスキルや知識を活かせる仕事も請け負うことができるので、今後クラウドソーシングやアウトソーシングを考える際の選択範囲の一つにはなるだろう。

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