経営ハンドブック

女性活用

女性の就業を促すだけでなく女性の能力をフルに活用する

2016年4月から女性活躍推進法が施行され、女性活躍の重要性を理解し、取り組みを加速させていくことが求められるようになった。従業員数300人超の企業は女性の活躍推進に向けた行動計画の策定などが義務付けられ、300人以下の企業は、一般事業主行動計画の策定・届け出が努力義務とされた。

女性の年齢階級別の労働力率は「M字カーブ」という言葉でよく表される。子育て世代の女性が、いったん仕事を辞めてしまう状況を示したものである。国はこの状況を改善するため、仕事と子育ての両立支援や女性活躍推進への取り組みを続けている。

女性の育児世代における就業状況は、近年、少しずつ改善の兆しを見せているが、十分とは言えない。長く働いてもらうための環境整備と、スキルアップを求める女性を増やすための取り組みが中小企業においても求められている。

女性を活用するための職場環境づくりのポイント

  1. 「男性本位」「男の仕事」を見直す
  2. 育児休業に対する理解と男性社員の取得推奨
  3. 女性を管理職に積極的に登用する

1.「男性本位」「男の仕事」を見直す

建設業や製造業などの現場は、従業員のほとんどが男性で、女性はゼロというケースもある。その結果、一般的な女性は扱えないような重労働が残っている。また、「危険な職場だから女性を入れられない」という先入観から女性を遠ざけている企業もある。しかし、そうした「男でなければダメ」という発想が根強い企業では、自覚しないうちに女性を敬遠する空気が定着し、それが女性を寄せ付けなくしている。経営者だけでなく、男性従業員が女性の就業に反発するケースもある。労使ともに既成概念を取り払い、どうしたら女性が働きたいと思う現場になるかを、女性社員の意見を聞くだけでなく、男性社員も巻き込みながら検討する必要がある。

神奈川県の金属加工業者では、女性の現場技術職を増やすために、更衣室付き女性専用トイレを設置するなど女性が働きやすい職場環境を整えて、求人広告でも女性を積極的に採用しようとしていることをアピールした。そして、女子学生を対象とした現場見学時には、女性専用トイレを新設したこと、女性が使いやすい設備や機器の導入を検討している点など、女性が働きやすい職場づくりの推進を強調した結果、技能職においても新卒女性の採用に成功している。

2.育児休業取得に対する理解と男性社員の取得推奨

育児休業を就業規則に定めていても、実際に取得する社員がいない、あるいはほとんどいないという中小企業も多いのではないか。育児休暇は育児介護休業法で、社員の権利として認められていることを経営者は認識しておく。そして、具体的な休暇時期を当事者と打ち合わせたうえで、テレワークなどで対応可能な時期と、育児休暇を取得させたうえで、人員を補填する必要がある時期の明確化などから始める。

復帰についても、時期と業務内容を当事者と相談する。この「相談する」という手順を踏まないと、良かれと考えて実施した辞令や指示が逆効果となり、トラブルにつながるので注意したい。

そんな中でも、香川県にある卸売・小売企業では、産前・産後休業、育児休業制度について、利用者の声を交えた制度説明、メリットについてパンフレットを作って制度の利用促進、職場理解の啓発を行っている。併せて、アニバーサリー休暇、配偶者出産休暇などの自社独自の休暇制度の導入と周知も実施。利用率の向上につなげている。女性だけでなく男性の育児休業取得も進み、仕事と育児の両立を支援するという協力的な雰囲気が、当事者だけでなく全社的に広がっている。制度だけを整えても、利用しにくい状況などがクチコミで広がれば、女性は敬遠するだろうし、最悪の場合、他社に移ることも考えられる。

3.女性を管理職に積極的に登用する

比較的女性が多い企業でも、管理職となると女性の比率が極端に低くなるケースが多い。長く勤めたいと思っている優秀な女性は、キャリアプランが見通せないと分かると転職を考える傾向にある。生き生きと働く女性管理職が多い職場は、ロールモデルを見つけやすく、女性が活躍しやすい雰囲気が醸成されている。「管理職を任せられる女性がいない」と足踏みをしている間は、女性の幹部登用は進まない。管理職になりたがらない不安を、ヒアリングなどを通じて取り除き、まずは抜擢。そこから育てる姿勢で臨まなければ幹部候補になり得る人材はほかに活躍の場を求めてしまう。

新潟県の印刷業者H社では、女性の配属に偏りがあり、管理職に占める女性割合が低いなどの課題を抱えていた。そこで、女性が管理職として活躍できる雇用環境を整えるために、繁忙期における労働時間を前年比で10%以上削減し、年次有給休暇の取得率を前年比10%以上向上させた。また、男女で公平な昇進基準になっているかの精査を行い、女性の管理職(課長以上)を増やす取り組みを進めた。

上記の事例は女性の活躍できる職場づくりに取り組み、国から「えるぼし」認定を受けた中小企業のケースだ。このような制度を利用して女性活用に取り組む会社だとアピールすることも1つの手だろう。

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