ビジネスQ&A

減資をした場合の税制上の影響について教えてください。

当社は現在、資本金が1億2,000万円で、青色申告をしています。今回、欠損金を整理するため資本金を8,000万円にする減資を考えていますが、減資をした場合に税制上どのような影響が出てくるのか教えてください。

回答

減資をした場合に影響する税として、法人税、法人事業税、法人住民税の3つがあります。法人税では、税率や交際費課税など、法人事業税では外形標準課税と税率、法人住民税では法人税割の税率に影響が出ることになります。なお、減資の際は専門家に相談して、実際に税額の試算をするとよいでしょう。

【減資を行うにあたっての留意点】

今回、欠損金を整理するため減資を行うということですが、「減資は業績不振の会社が行うもの」との認識が世間では定着していますので、減資をすると株主や取引先、金融機関の評価が下がるおそれがあります。よって、減資を実行する場合は、株主や取引先の理解と協力が得られるようにしておく必要があります。

【税制上の影響】

さて、減資を行った場合の税制上の影響ですが、法人税、法人事業税、法人住民税について、下記のような影響が考えられます。

ただし、平成22年度税制改正でグループ法人税制が導入されたことから、資本金5億円以上の親会社の100%子会社については、平成22年4月1日以後開始事業年度について、下記1.(1)(2)の影響は生じません。

1.法人税への影響

まず、今回は1億2,000万円から8,000万円にするということで、大きな影響があります。それは、資本金が1億円以下となったことで、法人税法上、資本金1億円以下の中小法人として扱われることになります。たとえば、下記の税制が適用となります。

(1)軽減税率の適用

年所得800万円以下の部分については、通常の法人税率ではなく、15%が適用されます。

(2)交際費課税の緩和

交際費は原則として損金算入ができませんが、資本金1億円以下の中小法人は、年800万円までの支出額全額が損金算入できるようになります。

(3)その他

そのほか、機械・装置などの設備を導入した場合に適用がある中小企業投資促進税制について、中小法人は特別措置を受けることが可能になるほか、少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例制度(30万円未満の減価償却資産を即時償却できる制度)の適用を受けること等が可能となります。

2.法人事業税への影響

平成16年4月1日以降開始する事業年度から資本金1億円超の法人を対象として、法人事業税に外形標準課税が導入されました。

資本金1億円超の法人の場合、従来の法人所得に加えて、外形基準として資本金および付加価値額が課税標準となります(資本金1億円以下の法人は、従来どおり法人所得のみが課税標準となります)。赤字会社の場合、従来は法人事業税がゼロでしたが、資本金1億円超の法人は今後資本金・付加価値額に対して課税されます。

資本金が1億円を超えるかどうかは、原則として、各事業年度終了日の現況によって判定されます。したがって、期首の資本金が1億円超であっても、減資により期末時点の資本金が1億円以下であれば、外形標準課税は適用されないという影響があります。

また、所得を課税標準とする事業税についての超過税率の適用がなくなります。

3.法人住民税への影響

法人住民税は、道府県民税と市町村民税を合わせた地方税として位置付けられており、東京都23区については、道府県民税と市町村民税ではなく、両方を合わせた都民税として課税されるものです。法人住民税は、さらに所得に関係なく資本金等の額に応じて課税される「均等割」と、所得に応じて課税される「法人税割」があります(さらに「利子割」がありますが、説明を割愛します)。

減資をすると、法人住民税の均等割の税率区分の基準である「資本金等の額」から無償減資額を減算することができるため、均等割額が安くなります。

また、法人税割についての超過税率の適用がなくなります。

【減資には慎重な判断が必要】

冒頭でも説明しましたが、減資には慎重な判断が必要です。税制上のことのみならず、株主や取引先、金融機関との関係など、大局的に判断する必要があります。税制について言えば、実際に試算をすることが必要です。また、税務・経営の専門家に相談するのもよいでしょう。中小企業・ベンチャー総合支援センターや、各都道府県の中小企業支援センターなどで相談を受け付けておりますので、ご相談ください。

回答者

中小企業政策研究会