ビジネスQ&A

青色申告とはどのようなものですか?メリットは何でしょうか?

2021年 2月26日

飲食店でコックとして30年ほど勤務してきましたが、この度経験を生かして妻とレストランを開こうと考えています。先日友人から、開業当初から青色申告でやった方が得だよとアドバイスがありました。青色申告には、どのようなメリットがありますか。また、どのようにすればよいのでしょうか。

回答

所得税の青色申告には、以下のようなメリットがありますので、有効に活用しましょう。

  1. 最大65万円までの青色申告特別控除が受けられる
  2. 家族への給与を全額経費に算入できる
  3. 赤字の場合の損失を3年間繰り越すことができる
  4. 30万円未満の資産を取得した場合、一度に経費に計上できる

所得税法では、事業を行う者または不動産事業を行う者等が、一定の帳簿を備え付けて税務署長に青色申告の承認申請を行ってその承認を受けた場合、青色申告をすることができます。
青色申告を選択することで、さまざまな特典を受けることができます。

【青色申告が認められる要件】

青色申告が認められる要件は次の通りです。

  1. 所轄の税務署に青色申告承認申請書を提出し、承認を得ていること
  2. 法定の帳簿書類を備え付けて取引を記録すること
  3. これらの帳簿や書類を7年間(一定のものは5年間)保存していること

保存が必要なもの

保存が必要なもの

帳簿(仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳など)

7年

決算関係書類(損益計算書、貸借対照表、棚卸表など)

7年

現金預金取引等関係書類(領収証、小切手控え、預金通帳、借用証など)

7年(※)

取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など)

5年

※前々年分所得が300万円以下の方は、5年

【青色申告のメリット1(最大65万円までの青色申告特別控除が受けられる)】

青色申告者に対しては種々の特典がありますが、その一つに所得金額から55万円(一定の場合には65万円)又は10万円を控除するという青色申告特別控除があります。

1 55万円の青色申告特別控除

この55万円の控除を受けるための要件は、次のようになっています。

  1. 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
  2. これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。
  3. 2.の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること。

2 65万円の青色申告特別控除

この65万円の控除を受けるための要件は、次のようになっています。

  1. 上記1の「55万円の青色申告特別控除」の要件に該当していること
  2. 次のいずれかに該当していること
    1. その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること。
    2. その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。

3 10万円の青色申告特別控除

この控除は、上記1及び2の要件に該当しない青色申告者が受けられます。

※税制改正により、令和2年分以後の確定申告から青色申告特別控除の金額が65万円から55万円に変更になりました。ただし、上記の2で説明したとおり電子帳簿保存かe-Taxにより確定申告書を提出することで従来どおりの65万円の控除が受けられます。
e-Tax とは、申告などの国税に関する各種の手続について、インターネットを利用して電子的に手続が行えるシステムです。令和2年分以後の確定申告からは、65万円の青色申告特別控除を受けるためには、ご自宅等のパソコンにより、e-Taxで確定申告書・青色申告決算書等のデータを提出(送信)する必要があります。なお、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で確定申告書・青色申告決算書等のデータを作成し、e-Taxで提出(送信)することもできます。

【青色申告のメリット2(家族への給与を全額経費に算入できる)】

生活をともにしている配偶者などがその年中に6ヶ月超の期間事業に従事し、給与支払がなされる場合(この給与を専従者給与と言います)、その給与の金額のうち次の1.の届出書で届け出た給与の金額の範囲内の金額を必要経費に算入することができます。
なお、白色申告の場合は、事業専従者控除として配偶者の事業専従者は86万円、配偶者以外の事業専従者は最高50万円が控除されます。
その際、下記の2点についてご注意ください。

  1. 必要経費として算入するには、青色事業専従者給与に関する届出を税務署に提出する必要があります。
  2. 青色事業専従者給与や事業専従者控除を受けた人は、配偶者控除や配偶者特別控除の適用を受けることはできません。

【青色申告のメリット3(赤字の場合の損失を3年間繰り越すことができる)】

青色申告には今年の赤字を翌年以降(最長3年間)の所得から差し引ける、「純損失の繰越控除」という制度があります。翌年の黒字から今年の赤字を差し引くことができるので、その分翌年度の所得税を低くすることができます。

具体例
1年目 300万円の赤字
2年目 100万円の黒字 → 1年目の赤字(100万円分)と相殺 →所得金額0円
3年目 100万円の黒字 → 1年目の赤字(100万円分)と相殺 →所得金額0円
4年目 200万円の黒字 → 1年目の赤字(100万円分)と相殺 →所得金額100万円

なお、白色申告の場合は、純損失が出てもその年で切り捨てられて繰り越すことはできません。

【青色申告のメリット4(30万円未満の資産を取得した場合、一度に経費に計上できる)】

通常、購入した備品や車両などの資産が10万円以上なら「減価償却資産」として、数年にわけて減価償却費として経費に計上するのが原則です。しかし青色申告には、「少額減価償却資産の特例」という制度があります。
これは、1個あたり30万円未満の少額減価償却資産に関しては、購入・使用開始した年度に一度に経費に計上できるという特例です。その分利益(所得)を減少させることで、結果的に支払う税金を安くすることができます。ただし、1年間で300万円が上限額となります。

【青色申告を始めるための手続き】

青色申告をするためには、所轄の税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。この用紙は、最寄りの税務署で配布していますので、お近くの税務署から入手してください。なお、インターネットでも入手可能となっていますので、こちらで入手してもよいでしょう。次に、提出期限ですが、開業の日が1月15日以前のときは、適用を受けようとする年度の3月15日までに提出しなければなりません。また、開業が1月16日以降のときは、開業の日から2カ月以内に提出しなければなりません。
申請書は、納税地(自宅の所在地)を所轄する税務署長宛に提出することになりますので、提出先を間違えないようにご注意ください(必ずしも最も近い税務署ではないこともあります)。
上記メリット2の専従者給与の必要経費算入については、「青色申告承認申請書」のほかに「青色事業専従者給与に関する届出書」も提出しなければなりませんので、注意してください。こちらも、「青色申告承認申請書」と同様の提出期限(ただし、開業の日と専従者がいることとなった日が異なる場合は、専従者がいることとなった日から2カ月以内)となっています。

回答者

税理士 中小企業診断士 行政書士 事業承継士 農業経営アドバイザー 大西 周