経営ハンドブック

情報発信の意義と方法

メディアの関心事を理解して、上手に付き合う

自社の商品やサービスを広く伝える情報発信は大企業が取り組むべきもの、というイメージを持っている中小企業経営者がいたら、その考えを改めてほしい。中小企業こそ、情報発信によるメリットをより享受できる。

情報発信の手法として、まずは新聞や雑誌に広告を出したり、テレビコマーシャルを打ったりといった取り組みがあるが、十分な広告費をかけられない中小企業も少なくない。

コストをかけない情報発信にもいくつか手法はあるが、ここでは、メディアの取材を受けて放送・掲載されやすくなる方法について紹介する。

メディア取材による情報発信の基本となる3つの考え方

  1. 実績のある商品・サービスをさらに伸ばすための手段である
  2. 商品・サービスのアピールをしてくれるインフルエンサーと捉える
  3. とにかく具体性のある資料をそろえ、地元メディアを最初に狙う

1.実績のある商品・サービスをさらに伸ばすための手段である

意識しなければいけないのは、メディア取材による情報発信は基本的に「既に実績がある商品・サービス」をさらに伸ばしていく、という観点だ。まったくの新商品をメディアが取り上げてくれるのは、それまでにヒット商品を出した実績があったり、企業・経営者自身の知名度が十分に高かったりする場合に限られる。

なぜなのか。メディア側もビジネスだからだ。テレビであれば視聴率、新聞や雑誌であれば発行部数や発売部数、ネットメディアなどであればページビューなどが狙えるコンテンツを取材して掲載したいと考えている。

従って、メディアが実績のある商品の紹介に偏ることは仕方のない面があり、この姿勢を批判しても始まらない。それよりも、メディアの掲載基準を知ったうえで、自社の商品やサービスをどう売り込んでいくかを考えていったほうがよい。

2.商品・サービスのアピールをしてくれるインフルエンサーと捉える

信頼性の高いテレビ番組や雑誌記事で取り上げられることによる露出によって、自社の商品やサービスの信用を高める効果が期待できる。食品などが典型だが、一部の人たちの間で話題になった商品などがテレビなどへの露出がきっかけでブームとなり、売り切れが続出する光景はよく起こる。スーパーマーケットなどの棚では、「テレビの〇〇で紹介されました」「雑誌の〇〇ランキングで1位」といった告知のついた商品が、消費者の目に留まりやすい場所で売られている。メディアを、「売れていない商品の後押しをしてくれる人たち」ではなく、「売れている商品をさらにアピールしてくれるインフルエンサー」と捉えて接するほうがよい結果を生む。

3.とにかく具体性のある資料をそろえ、地元メディアを最初に狙う

実際に訴求する際には、メディア側が気に留める要素をしっかりと記載することが重要だ。それは、販売個数や売上高のような実績や、その商品が類似品と成分や製法などで客観的に差異化できる点などだ。例えば「丁寧に熟成させた」ではなく「〇〇という製法で1カ月間熟成させた」、「材料を厳選した」ではなく「〇〇等級の原料のみを使用した」など、具体的・客観的に紹介できるようにしておけば、メディア側は興味を持ちやすくなる。

そして、繰り返し、メディアに発信することだ。メディアには大量の情報が寄せられる。1回だけ送っても、まず覚えてもらえない。手を替え品を替え、何度も送ることで目を引く可能性が高まる。メディアが考えている企画内容と合致するといった可能性も高まる。

中でも、広報活動を始めたばかりの企業では、経営者自らがメディアと接点を持つようにする。経営者が最も企業・商品の魅力や経営に関する数字について強いからだ。同時に、メディア側にとっても、経営者自らが対応してくれるのは、取材元として魅力的だ。

狙うメディアは地元の新聞を最初に考えたい。地方紙はエリアごとに担当記者がいて、地元の話題になる経営者や商品を紹介する企画を定期的に実施するため、常に取材先を探している。決して押し付けるのではなく、きちんと実績のある企業・商品であることを伝えておけば、取材につながる確率は全国紙などへの売り込みに比べて格段に高くなる。まずは客観的な資料の整備と、会社見学/工場見学を受け入れることで自社について知ってもらうことなどが有効だ。短期で無理やりメディア露出を図るのではなく、中期的な目線での対応がカギになる。

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