経営ハンドブック
コーポレートブランディング
コーポレートブランディングは中小企業こそ重要
ブランドは2種類に大別できる。自社の商品やサービスに関するブランドがプロダクトブランド(商品ブランド)、企業名そのものがブランドである場合がコーポレートブランド(企業ブランド)である。ここでは、コーポレートブランディングに絞って紹介する。
ブランディングというと、「大企業のする経営戦略であって、中小企業には関係ない」と考える人がいるかもしれない。しかし、大企業に比べて一般的な知名度に劣る中小企業にこそ有効な戦略だ。金属深絞り加工の岡野工業株式会社(東京都墨田区)や、工業用ナット製造のハードロック工業株式会社(大阪府東大阪市)など、海外に知れ渡り、海外の大企業から注文が来る日本の中小企業の例は枚挙にいとまがない。
コーポレートブランディングの手順
- 自社の存在意義、目的を明らかにする
- 継続的な発信の場を築く
- ブランドを維持するためのルールを設け、守る
1.自社の存在意義、目的を明らかにする
最初に行うのが自社の存在意義を明らかにする作業だ。一般的には、社内で部署横断型のプロジェクトチームを立ち上げ、従業員の意見を吸い上げながら実施するケースが多い。単に「売上高〇〇億円を目指す」「市場シェア〇〇%を目指す」は、社内の数値目標であって、対外的に発信するものとしては不適格だ。
自社が、商品やサービスを通じて社会にどのような影響を与えたいのか、といった視点での打ち出し方が必要だ。これをブランドコンセプトという。
コーポレートブランディングでは、商品やサービスだけでなく、従業員の待遇や接し方について明確な方針を打ち出すのもブランディングにつながる。方向性としては、「地元に根差して地域社会に貢献する」「従業員を大切にする」などといったものが考えられる。地域社会への貢献の事例を紹介したり、「従業員を大切にする約束として、年間休日〇〇日を実現する」「年に1回は必ず海外に社員旅行に行く」と数値目標を伴う宣言をしたりするほうがよりよい。
2.継続的に発信する場を築く
ブランドコンセプトを構築したら、次は相手に伝えるための工夫が必要だ。大手企業であれば、ヒトやカネといった資源をふんだんに使えるが、中小企業はどうすればいいか。
まず考えられる手段がウェブサイトによる発信である。ブランドコンセプトをトップに掲げ、デザインもそれに合わせる。ブランドコンセプトに合わせて新たなロゴを用意してもいいだろう。
クチコミも実は効果的な発信手段である。かつて、クチコミは直接人と人との関わりによって伝えられるものだったが、今ではネットを介在するTwitterやFacebookなどのSNS(交流サイト)がクチコミ媒体の主流といっていいだろう。そのためには、第三者がSNSで伝えたくなるような、特徴的なブランドコンセプトが重要となってくる。
3.ブランドを維持するためのルールを設け、守る
構築した自社の存在意義が曖昧にならないようにするために、業務上、意思決定上のルールを設け、それを守ることで打ち出しているブランドイメージを定着させる必要がある。
顧客第一をうたいながら不正をしていたり、数字面での約束事を違えたりするとブランドは大きく傷つく。周囲からも社内からも、嘘つきと認識されるからだ。約束事として掲げた以上は最大限守らなければならないし、過失であったとしても、ブランドコンセプトと反する事態になったら、誠実さを見せた迅速な対応が必要だ。特にBtoC業態では、トラブル発生時に事態が異常に過熱する「炎上」が起こりやすい。炎上につながるのは、ほとんどが非常事態に対して沈黙を通したり、虚偽の説明をしてそれが露見したりするケースだ。くれぐれも注意したい。