経営ハンドブック
顧客とのコミュニケーションの仕組み
顧客とコミュニケーションをとると、従業員のやる気が高まる
顧客と接点を持つことで、企業が得られるメリットは数多くある。製品の開発や改良に直接役立つアドバイスや要望が得られることは、イメージしやすいだろう。「従業員のモチベーションが上がる」と断言する経営者も多い。これは、自分が開発や製造にかかわった商品を愛用している顧客の姿を知ることで、自分の仕事にやりがいや誇りを感じるためだ。さらに、普段から顧客との信頼構築ができていれば、トラブルが発生したときにも理解を得やすいなど、リスク対策にもつながる。
どのように顧客と接点を持つか——。その方法は様々だ。自社の事情に合わせた接点を確保してほしい。
顧客とコミュニケーションを取る3つの方法
- ポジティブな意見を従業員に伝えてもらう
- アンケートなどで率直な意見を集める
- SNSを活用して広く社会全体と接する
1.ポジティブな意見を従業員向けに伝えてもらう
顧客の声が現場に届くことで、現場のモチベーションが高まるケースがある。商品やサービスの評価が高くても、それを工場などで生産している人にはなかなか届かない。
そこで、経営者や営業担当者が社外の顧客からもらった感想を全従業員に伝える機会を意識して設けている企業は多い。中には、工場見学などを兼ねて、顧客から現場作業者に話をしてもらっている企業もある。
また、会社見学や工場見学を繰り返すことが従業員の自信につながる。外部の人が時間やお金を使って見にくる価値がある現場で働いているとはっきりと認識できるからだ。
2.聞き取りやアンケートなどで率直な意見を集める
顧客との接点を持つことによる一番分かりやすいメリットは、商品やサービスの反応を実際に購入した人から得られる点だ。実際に取引先に出向いて話を聞いたり、顧客が集まる場を設けて意見を聞いたりする方法が一般的だろう。それ以外にも、様々な方法で顧客との接点を持つ企業がある。
重要なのは、しっかりと本音を吸い上げる仕組みにできるかどうかだ。
カレー専門店「CoCo壱番屋」を全国展開する壱番屋の創業者も、顧客との接点を持ち続けていた。店舗数が100店を超えたあとも、店舗で回収した顧客アンケートすべてに目を通し、必要に応じて店舗に改善などを直接指示していたという。いずれにしても、強い目的意識で顧客との接点を持ち続けると、顧客の声を生かしやすくなる。
3.SNSを活用して広く社会全体と接する
最近は、SNS(交流サイト)を活用する経営者も出てきている。顧客と直接つながることで、自分の知らないところで起きた様々な情報が寄せられるようになる。現場の不備に対する厳しい指摘もある一方で、社員の対応を褒めるものもある。会社に対する“忖度”のない意見を入手する一つの手段として活用できるというわけだ。また、不祥事の場合に、経営者自らの言葉で発信して理解を求めるといった使い方も可能だ。
SNS活用で大事な点は、自社にとって都合のいい情報ばかりを発信しないこと。製品の紹介はするが、不具合が発生した場合はノーリアクションというのでは、顧客との信頼関係は構築できない。迷惑をかけたことに対する謝罪だけでなく、原因究明や再発防止策といった対応までしっかりと説明する。“隠し事をしない”姿勢を示していれば、顧客は簡単には見放さないはずだ。