経営お悩み相談室

お店の改善「小さなことから少しずつ取り組もう」(相談室5回目)

文:山崎泰嗣(中小企業診断士)

Taiji YAMAZAKI

皆さま、こんにちは。相談員の山﨑泰嗣です。秋もだんだんと深まってきて、もうすぐ師走。小売業やサービス業の皆さまも、忙しい季節を迎えているはずです。

そんな忙しい時期を前に、テナントビルで衣料品店を経営する40代女性の方から相談を受けました。相談内容は、「店にいろいろな問題があるのはわかっているのですが、日々の業務に追われて、なかなか店を改善できません。どこからどのように手をつけたらいいですか?」というものです。本日は、この相談にお答えしましょう。

たしかに皆さま、日々忙しくお仕事をされていることと思います。どの仕事もきっと欠かせないもの。中でも経営者などお店の管理をしている方は、普段の仕事だけをしているわけにはいきません。「もっとお店を良くして、売上を上げていきたい。そのためにはどうすればいいの?」と考えていらっしゃるはずです。

では、お店改善の取組みを、5つのステップで考えてみましょう。

お店の改善取組み5ステップ

次に、ステップごとに考えてみます。まずは、

(1)経営者自身が自由時間を作る

つまり、お客様やご家族から自由になる時間を作るのです。仕事はたくさんあるでしょう。でも、そのすべてが、あなたでなければできないことでしょうか。従業員さんに教えてやってもらったり、時間を削減して簡単に済ませたりできる仕事を探してみましょう。どんなに忙しい方でも、きっとそんな仕事があるはずです。

従業員さんに新しく教える仕事は、(1)毎日のようにやっていることで、時間を変えて実施しても大きな問題がない仕事、(2)やってもらった仕事の確認を取れる仕事、から始めましょう。新しく仕事を学ぶ従業員さんにとっても、新鮮な気持ちで仕事に取り組んでもらえるはずです。

続いて、

(2)空いた時間で現状分析を行う

自由になった時間を使って、改善したいことを考えていきましょう。まずは現在、経営者のあなたがやりたいことをピックアップしていきます。その時は、「どうしてそれをやりたいのか?」、「本当に店の経営に良いことか?」という視点で改善案や取組みを考えていきます。そして、具体的な改善方法や取組み方法を決めます。この時、経営者のあなた一人で行う場合と、従業員さんを使わないとできない場合に分けておきましょう。

次のステップは、

(3)小さなことから改善をスタート

つまり、実際に始める段階です。前のステップで、あなた一人で行うことにした取組みから始めます。経営者だけでも、改善できることは多いはずです。小さなこと、簡単にできることから始めましょう。

そして、うまくできたら、できたことを従業員さんにアピールします。「こんなことをやってみた。どう思う?」と、一緒に取組みを確認しましょう。たとえば、お店のバックルームの整理整頓や、マンネリ化した通常商品売場の模様替え。工夫したポイントや、今までできなかったわけ、今後どうするのかなどを、従業員さんと確認しましょう。従業員さんにも、時間の使い方など協力してもらった点があるはず。その感謝やねぎらいもあると、取り組んだあなたも従業員さんも、一緒に嬉しくなれますよ。

4段階目は、

(4)仕組みにして従業員に引き継ぐ

実は、改善したことを従業員さんと確認したのには、理由があります。そう、取り組んだことを仕組みにして、従業員さんにもやってもらうためです。たとえば、お店のバックルームの整理整頓ならば、あなた自身が続ける必要もある一方、従業員さんの協力も必要です。うまくいった取組みは、仕組みにして従業員に引き継ぐことで、継続的な改善に結びつけます。経営者のあなたがいつもやっていては、改善にならないのです。

そして最後は、

(5)新たな改善の取組みを行う

ここまで頑張ってきた、経営者のあなたがやるべきことは、さらに次の改善の取組みを進めることです。経営者が常に新しい何かをやることで、店は活性化します。再び第1段階に戻って、新しいことに同じように取り組んでいけばよいのです。この取組みは、従業員さんの能力アップにもつなげられます。

私の支援している雑貨店では、このようなやり方で、お店の仕事をしながら商品開発から倉庫管理までどんどん仕事の幅を増やし、レベルが上がっていった例があります。お店は、経営している皆さまやお店を任されている従業員さんの仕事の仕方で、いかようにも変わります。改善は、「小さなこと、簡単なことから少しずつ」。あきらめずに頑張ってくださいね。

掲載日:2011年11月17日