経営お悩み相談室

商品の陳列方法「手に取りやすい陳列量を意識しよう」(相談室4回目)

文:田中聡子(中小企業診断士)

Satoko TANAKA

皆さま、こんにちは。第4回のお悩み相談室を担当する田中聡子です。どうぞよろしくお願いいたします。

今回の相談者は、地方都市にあるセレクトショップのオーナーです。少しお値段は張りますが、1点1点こだわって仕入れるニットやパンツ、ジャケットは、着心地のよさやシルエットの美しさで、目の肥えたリピーターのお客さまから、高い評価をいただいています。でも、オーナーは浮かない顔。新規のお客さまが、なかなか増えないのです。一度試着していただければよさがわかるはずなのに、商品をあまり手に取ってもらえません。

さっそく店内を拝見したところ、商品の陳列量が多すぎる印象を受けました。こじんまりとしたお店の造りはアットホームで居心地がいいのに、ラックや棚には商品がぎゅうぎゅう詰め。これでは、自慢のインポートジャケットのデザインやシルエットも、手に取ってみないとわかりません。

こう思う方もいらっしゃるかもしれません。「でも、取り出してもらえれば、そのよさはわかるはず」

いえいえ、ぎゅうぎゅう詰めのラックや棚を見たら、多くのお客さまは、「取り出しにくそう」、「手に取ったら、元に戻しにくそうだな」と考えます。そして、「今日は見なくてもいいかな」、「ここで見なくてもいいかな」と素通りしてしまうのです。

もちろん、「どうしても今日、パンツが買いたい!」と考えているお客さまなら、頑張って商品を取り出してくださるでしょう。でも、通りすがりで、ちょっと立ち寄ったウィンドウショッピングのお客さまにとっては、手に取りにくい棚はハードルが高いもの。けれど、こうしたお客さまにこそ、さまざまな商品を手に取って、お気に入りを発見していただきたいですよね。

となれば、適切な陳列量の「見やすく、手に取りやすく、元に戻しやすい」ラックや棚を維持することは、とても大事なこと。商品の魅力をアピールし、「ちょっと着てみようかしら」と思っていただくためには必要な取組みなのです。

また、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた商品は、それだけで安っぽく見えがちです。セールの季節に、「お店が安っぽくなった」と感じることはありませんか?

商品の陳列量が多すぎると、商品やお店のイメージを損なってしまうこともあるのです。これは、オーナーのこだわりをうたうセレクトショップでは、絶対に避けたいところですね。ちなみに、適切な陳列量は店舗イメージによっても異なりますが、一般的には商品を増やすほど、安価な商品のお店に見えるので注意が必要です。

ここで、ぎゅうぎゅう詰めのラックや棚がもたらす、マイナスの作用をまとめてみました。

  1. 商品のシルエットがひと目でわからない
  2. 取り出しにくく、お客さまが気軽に触れない
  3. 安価なイメージがついてしまう

さて、相談者のお店ではルールを決め、以下のようにして商品陳列の適量化に取り組みました。

  1. 棚の上部3分の1はスペースを空ける
  2. 商品の間にネガティブスペースを設ける
  3. ラックにかけるハンガー数を決める

ハンガー数は、オーナーの好きな都内の高級ブティックを参考に、思い切って3割減らしました。また適切な陳列量を維持するために、ラックや棚を常に客観視できるよう、定期的にカメラで撮影し、陳列量を確認することにしました。変更したのは一部のラックと棚だけでしたが、以前より商品の動きがよくなりました。

多くのお店が、「商品をたくさん置けば、どれかは選んでもらえるはず」と考えます。でも、手に取ることを楽しめないお店には、お客さまの足は向かなくなります。適量を意識した、「見やすく、手に取りやすく、元に戻しやすい」陳列をぜひ、心がけてみてください。

掲載日:2011年11月 4日