ビジネスQ&A

効果的な新商品開発のポイントとは?

取引先数社の下請をしている製造業(従業員10数名)ですが、取引先の海外展開などで受注が低迷し、かつ単価引下げも激しく、利益が出ない状態が続いています。このままでは、将来展望も開けないので、これまでの経験を活かし、自社製品の開発に挑戦したいと考えていますが、これというほどの技術や人材も、もち合わせていません。いまなら多少の資金も何とかなりそうです。どのように取り組むべきでしょうか?

回答

まず、市場・客先のニーズを掴み、御社の強みが発揮できる分野を見極めます。小粒なテーマでもよいので、成功体験を積むことが大切です。また、開発の際は、環境や製造物責任法、知的財産権の侵害に注意し、事前調査を怠らないでください。

自社製品の開発にあたっては、最初から高度なものを狙わず、小額の資金でも取り組み可能な身近なところから着実に進め、根気よく開発努力を続けていくというやり方が適していると考えます。下記の留意点を参考に、取り組んでください。

【市場・客先ニーズから出発する】

世の中にない独創的なものがつくれれば、それにこしたことがないのですが、まずは身近なところに目を向け、市場や得意先で困っていることや必要とされることの中に、自社の技術を活かせそうなことを探すことから始めます。現在、市場に出ている製品の欠点を取り除いた改良品などが、取り組みやすいと思われます。

「下請け」の関係は、長年の取引を継続しているという信頼がもとになります。既存顧客と下請け関係を結んでいて、設計や技術、購買の担当者と面識があること自体、他社と比べ大きな優位となっていることを再認識してください。そして、顧客ニーズの把握には、やはり、こまめに顧客を訪問し、直接ヒアリングをすることが必要でしょう。長年の取引があれば、担当者へのアプローチもスムーズに行くと思われます。継続的なヒアリングを通じ、「困っていることは何か」、「(顧客の)製品をよりよくするために必要なものは何か」など、生の声を聞くことができます。

このような「市場を見る眼」は、簡単に養えるものではなく、日ごろから何事に対しても、強い目的意識(ユーザーは何に不便を感じているかなど)をもって対処していくことが望まれます。

〔事例〕

親企業が採算性の悪化で、その分野からの撤退を決めたが、客先では今後もその製品を必要としており、強く生産継続を求めていた。その話を聞きつけた下請メーカーが種々調査したところ、大企業では人件費や経費負担が高くてその程度の売上高では採算性が悪いとされていたが、ぜい肉のない中小企業では、十分うまみのある製品であることが分かった。不足する技術についても、当初は親企業の支援が得られることになり取り組みを開始し、現在順調に推移している。

また、大企業が研究開発し特許も取得しているが、製品化せず放置されたままとなっているケースも多い。その中には、そのテーマに合致した企業なら成功率が高いと思われるものもたくさんあるはずである。

【自社の得意分野に絞る】

これといった技術を持ち合わせていない、ということですが、他社と比較して、技術、ノウハウの強み(優位な点)は何かを、再度認識しましょう。また、すべて自社でやろうとせず、自社技術の及ばない領域は、アウトソーシング、企業間の連携や公的機関の支援など、外部の力を積極的に活用する努力も大切です。

【会社全体で取り組む姿勢を明らかにする】

新製品開発は、特定の部署や人だけに任せきりにするのではなく、「新製品を開発する」という会社の取り組み方針をはっきり社内に発表し、わが社の新製品の定義も明確にして、衆知を集めた取り組みにもっていきましょう(企画・製品設計、品質保証、マーケティングなど各機能がうまく連携することが、成功の要因となります)。

【開発は短打主義で足元から!】

失敗しても致命傷に至らない手堅いテーマを選ぶことが大切です。小粒でも成功体験は貴重な体験となり、次の開発につながります。

【安心・安全・環境に配慮した設計をする】

ユーザーは安全、安心、環境に配慮した製品を選ぶ傾向にあります。これは時代の流れとも言えるでしょう。また、製造物責任法(PL法)に対応した厳しい品質が求められます。知的財産権の侵害にも気をつけなくてはいけません。あとから巨額の損害賠償を求められ、経営基盤に多大な損害を与えることになりかねません。

【情報収集は電子ネットワークや公的機関を活用する】

関連技術など最新技術情報の収集には、SBIR[中小企業技術革新制度]のJ-Net21特設サイト、国立研究開発法人産業技術総合研究所のホームページを活用するとよいでしょう。また、特許情報の検索には、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を活用し、特許情報全般については、独立行政法人工業所有権情報・研修館のホームページが充実しています。

さらに、独立行政法人中小企業基盤整備機構、都道府県等の中小企業支援センター、全国の公設試験研究機関などで、専門家による相談や助言が受けられるので、活用されるとよいでしょう。

回答者

中小企業政策研究会