ビジネスQ&A
ChatGPTの活用法について教えてください。
2023年 12月 1日
最近話題のChatGPTについて、中小企業での活用法について教えてください。
回答
ChatGPTは、文章生成から要約、アイデア創出、コードの生成など、幅広い分野において活用が可能です。中小企業にとって、業務効率化の可能性を秘める大変有用なツールと言って良いでしょう。ただ、生成された情報を鵜呑みにせず、人間がしっかりコントロールしていくことが活用のカギとなります。ChatGPTに対する正しい知識を身につけ実践することで、ビジネスに積極的に活かしていきましょう。
1.ChatGPTの基本機能
ChatGPTは、OpenAI社が開発した自然言語生成AI(人工知能)です。大量のテキストデータに基づく自然言語処理と機械学習により、まるで人間と対話しているかのような文章を生成できることが特徴です。これまでの文章系AIは、既存のテキストデータを要約したり、必要な部分を抽出したり、といった使い方が基本でした。これに対し、ChatGPTは文章の要約・抽出はもちろん、少ないキーワードから言葉を推測し、新しい文章を生み出すことができます。また、対話の履歴を踏まえたコミュニケーションが可能なため、生成される文章は対話を重ねることでより具体化させることができるのも大きなポイントです。
ChatGPTを使って、自分が求めている回答を引き出すためには、「プロンプト」と呼ばれる質問文が非常に重要です。条件や文字数など、自分が欲しい回答の理想像を質問内容と合わせて指定してあげることで、AIが質問の意図を汲みやすくなります。例えば、「『あなたは小学校の先生です。』『小学1年生でもわかるように』『200文字以内で』AIについて説明してください」というような感じです。ChatGPTは入力情報が少なくても、それらの言葉を推測して文章を生成できますが、その分、回答は曖昧なものになりがちです。仮に、自分の知人に、単に「AIについて説明してください」と尋ねたとしましょう。相手はどう回答すると思いますか? 自分がAIの何について聞きたいのか、どのように答えて欲しいのか、が相手に伝わっていないと、自分の想定した回答が返ってくる確率は相当低いはずです。ChatGPTとのコミュニケーションも、これと同様です。自分の考えを適切に伝達するスキルを磨くことが、良いプロンプトを作るコツです。
2023年8月現在、ChatGPTには、会員登録すれば誰でも利用できる無料版と、月額20ドルで利用できる有料版の2種類があります。両者の違いはいくつかありますが、最大の違いは「GPT-4」が利用できるか否か、です。「GPT-4」は、OpenAI社が開発したLLM(大規模言語モデル)の最新バージョンで、有料版に登録すると利用することができます。無料版では、旧バージョンの「GPT-3.5」しか利用できません。
「GPT-4」は、「GPT-3.5」に比べて回答処理能力が向上しており、25,000語の長文にも対応が可能となっています。より精緻な回答を求めるのであれば、有料版を利用するのが望ましいですが、無料版でもおおよそのことはできてしまいます。ChatGPTに不慣れな方は、まずは無料版で色々試してみましょう。その上で、有料版の利用を検討するのが良いと思います。
2.ChatGPTの活用法
ChatGPTを適切に利用することで、リソースや予算をかけずに業務効率化を図ることができます。以下、中小企業でも取り組みやすく、かつ効果の高い活用法を紹介します。
(1) 文章の校正・要約
「以下の文章を校正してください」というプロンプトと共に、既存の文章を入力すると、誤字脱字や表記揺れの統一などを修正した校正済みの文章が生成されます。もちろん日本語だけでなく、英文のスペルミスや文法ミスの修正も可能です。報告書や提案書において、第三者目線でのチェックが必要な場合に有効な活用法です。
また、ChatGPTは文章の要約作業も得意です。会議の発言録を要約することで議事録が簡単に作れたり、専門知識が必要な長大な論文をわかりやすくまとめたりと、人力ではかなりの手間がかかる作業も、あっという間に処理してくれます。
(2) 企画案の創出
ChatGPTは、企画案やキャッチコピー作成のブレーンストーミング相手としても、非常に有能です。「売上目標を達成するためのキャンペーン企画のアイデアを箇条書きで出してください」「新製品のキャッチコピーを10個考えてください」などと指示すれば、すぐに叩き案を出してくれます。案が気に入らない場合は、「Z世代が好むような」「このキーワードを使って」など、具体的な指示を出してみましょう。イヤな顔ひとつせずに次の案が出てきます。このようにChatGPTと壁打ちをすることで、アイデアをブラッシュアップしていくことが可能です。
(3) プログラミングコードの生成・レビュー
ChatGPTは文章だけでなく、様々なプログラミング言語を用いたコードの生成も可能です。必要な要件を日本語で指示するだけで、スラスラとコードを書き出してくれます。
ただし、生成されたコードは一回の対話で完成するとは限りません。いざ実行してみると、想定通りに上手く機能しないこともあるでしょう。その際は、実行結果やエラーメッセージをフィードバックすることで、ChatGPTは改善された修正コードを生成します。この対話を繰り返しながら、最適なコードを作り上げていくことが重要です。
また文章同様に、既存のコードを入力して、どこが不具合を起こしているのかをレビューすることも可能です。
上記以外にも、定型文のひな形や商品説明文、会議のアジェンダ作成など、活用シーンは多岐に渡ります。先述の通り、自分は何を望んでいて、ChatGPTに何をしてほしいかをプロンプトに落とし込むことで、活用法は無限に広がっていくのではないでしょうか。
3.ChatGPT活用時の注意点
ここまで、ChatGPTの基本機能と活用法について見てきました。ただ、使い方を間違えると不利益を被ることも考えられます。この項では、ChatGPTを活用する上での注意点について紹介します。
(1) ハルシネーション(幻覚)
いくら「文章を生成できる」と言っても、ChatGPTは言葉の意味を理解して文章を作っているわけではありません。ある言葉の次に来ると思われる最適な言葉を統計的に選定した上で、それらを組み合わせ、「それっぽい」文章を生成しているに過ぎないのです。そのため、質問に対して、事実と異なる情報をもっともらしく回答することがあります。この現象を、AIが幻覚を見るかのように誤った事実を生成する、という意味で、「ハルシネーション(幻覚)」と呼びます。特に、健康、法律、金融などの専門的な分野では、誤った情報提供が深刻な結果をもたらす可能性があるため、利用には特に注意が必要です。
(2) ChatGPTは検索エンジンではない
ChatGPTが学習した膨大なテキストデータは、2021年9月までの情報であると言われています。そのため、2021年10月以降の数値やデータについては、ChatGPTは情報を有していません。仮に最新の情報を教えてほしいと質問したとしても、結果は満足の行く回答が来ないか、先述のハルシネーションが起こるかのどちらかでしょう。Googleなどの検索エンジンとは、そもそも活用シーンが異なることを頭に入れておきましょう。
(3) 権利侵害のリスク
ChatGPTの生成する文章は、学習元のテキストデータに基づいています。そのため、生成された文章が既存の文章と似通っている可能性もゼロではありません。これは文章だけでなく、プログラミングコードも同様です。何気なく生成された文章やコードが、知らないうちに他人の権利を侵害していることも考えられるのです。
上記3点に共通する対策としては、「ファクト(事実)チェック」が挙げられます。ChatGPTを利用する際は、常に「すべてを疑ってみる」という姿勢を持ち、生成された文章の真贋を人間がしっかりと判断することを心がけましょう。
ChatGPTは、中小企業の業務効率化において非常に有用なツールです。ただ、あくまでも業務遂行の主体は人間であり、ChatGPTはそれをサポートするツールの一つに過ぎません。任せられる業務はツールにお願いしながら、自分が本来やるべきことに注力すること。これがChatGPT活用の本質なのではないでしょうか。
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中小企業診断士 佐合 和行