ビジネスQ&A
製品開発手順のデザインレビューについて教えてください。
製品を開発する段階で、デザインレビューを行うと聞いていますが、具体的にどんなことを、どのようにすればよいのかわかりませんので、教えてください。
回答
デザインレビューとは、設計開発活動をこのまま進めることにより、品質・納期・コストなどの設計開発の条件を満たす設計開発活動の結果を出すことができるかどうかを、設計開発活動を担当する人だけでなく複数の人で判断することをいいます。設計開発プロセスにおける企画・設計完了・量産移行などのフェーズで、仕様書や設計書、図面、プログラムなどの成果物を、第三者(営業、経理、購買、生産管理、品質保証などの部門の責任者)とともに設計品質及び製造品質を検証します。
デザインレビュー(DR:Design Review)とは、設計開発活動を見直すことです。製品の品質やコストは、設計の段階でその80%が決まるともいわれていますが、DRはこの段階で品質を確実につくり込み、後工程の活動をスムーズに実行できるようにするための仕組みです。品質マネジメントシステム規格ISO9001でも、その実施が必要事項とされており、その手順も整理されています。
【DRの目的:なぜデザインレビューが必要か】
DRの大きな目的は、品質と納期の確保です(広義にはコストが含まれます)。
1.品質の確保と向上
顧客の品質に対する要求は多様化し、製品機能も高度化しています。効率的な製品開発のためには、過去のノウハウや失敗を設計や生産準備に活かさなければなりません。さまざまな角度からの評価や改善を事前に行っておくことが品質の向上につながり、クレームの再発防止、PL(製造物責任:Product Liability)を問われるような製品欠陥の予防に役立ちます。
2.開発期間の短縮と納期の遵守
新製品を開発する際のトラブルは、加工してみなければわからない、組立てをしてみなければわからない、試作テストをしてみなければわからない、実際に使ってみなければわからない、などどのプロセスでも起こる可能性があります。
しかし、トラブルが顕在化してからの対策、見直しの着手では、結果として開発期間は長期化してしまいます。製品開発の上流で各部門の担当者が集まり、プロの目で見て評価しておけば、トラブルの芽を事前に摘み取っておくことができます。DRによって、開発から販売に至る各プロセスの納期遅れを防止することができるのです。
【DRの内容:デザインレビューでは何をするのか】
DRで審議する内容は設計品質に関することと、製造品質に関することに大別できます。
1.設計品質に関すること
- 製品の仕様(性能、機能)は、顧客の要求を満たしているか
- 使いやすさ、安全性、信頼性への配慮はどうか
- 使用されたときにおこる危険、想定される故障についての検討は充分か
- 法令、規制などへの対応は徹底されているか
- 環境への影響を把握し、適切に対応しているか
2.製造品質に関すること
- 製品の設計にムダはないか、標準部材を使っているか
- JISなどの標準規格および社内の規格を満たしているか
- 製造工程や設備の情報が反映されているか
- 技術力、人的資源など製品を実現する能力はあるか
なお、DRの結果は次期製品の開発、設計に役立つように、社内情報として整理し、記録しておくことが大切です。
【DRの実施時期:デザインレビューはいつ行うのか】
DRは、設計開始前、実際には図面ができたとき(出図前)と生産に入る前に行います。
1.設計開始前
設計開発の目標が適当か、十分か、効果的かを判定します。
2.出図前
設計品質を確保するため、図面や試作品の問題点を抽出し、対策を協議します。
3.生産着手前(量産移行前)
製造品質を確保するため、品質のレベルを審議し、製造の力量を確認します。また、製品出荷後にクレームなどの不適合が発生した際に、実施することもあります。
【DRの体制:デザインレビューは誰がやるのか】
DRには組織内の関連するすべての部署(営業、技術、製造、生産技術、品質管理、資材調達)の責任者が出席します。開発の技術的水準やリスクの程度によっては、経営陣の参加も必要となります。
DRを取り入れたものの、形や名前だけの会議となっては意味がありません。DRの目的、DRを効果的、効率的に実施するためにはどうすべきかをつねに意識しておくことが重要です。
- 回答者
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中小企業診断士
渡辺 英男