経営ハンドブック
PDCAサイクルを回すことで生産性を高める
具体的な計画で実行率を高め、次に生かす
改善を定着させ、生産性を向上させるにはPDCAが欠かせない。PDCAは言葉としては既によく知られている。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の頭文字を集めた言葉で、計画して実行したものについて効果を確認し、より高いレベルで次の行動につなげていく一連の取り組みを指す。ほかにもPDS(Plan、Do、See=観察)などいくつかの概念があるが、「実行して、検証して、次に生かす」という動きのループが出来上がっている点では共通している。
仕事におけるPDCAサイクルの重要性について異論のある人はあまりいないだろう。
きちんと機能させられれば、社内にノウハウがたまり、スピードは遅くとも着実に改善していく。しかし、特に中小企業ではこうしたサイクルが機能していないケースが大半だ。
PDCAサイクルを機能させるポイントについて紹介する。
PDCAサイクルを回すコツ
- まずは動き出すことが大事。最初の目標は低くていい
- 実行の確認と、中身の評価は別で考える
- 実行率を高める施策、負担を軽減する手を打つ
- 「悲観的にP、楽観的にD」の意識を持つ
1.まずは動き出すことが大事。最初の目標は低くていい
まったく実行されていない状況からスタートするのであれば、まずは、何かしらの行動が行われることを目標にするべきだ。ここではあえて、難易度の低い事例で紹介する。
例えば、特定の書類の未提出が頻発して困っている企業であれば、最初は完全な提出の実現を計画する。ポイントは、提出の方法や時期を具体的に定めること。例えば「書類は締切日までに提出する」では曖昧さが残る。「毎月最終営業日の午後5時までに直属の上司に提出」と、解釈の余地を残さない表現で計画を明文化する必要がある。
2.実行の確認と、中身の評価は別で考える
計画が定まったら、次は実行段階に移る。その達成具合を確認するわけだが、大事なのは、実行の有無と内容の評価を分離する姿勢だ。
このケースでは、提出タイミングと出す相手が明示されているのみだ。この作業が実行されたかどうかを確認する。書類が提出されていれば、計画は達成だ。
ところが実際は、「出してはいるけれど、書式や内容がおかしい」などと、計画になかった点について指摘し、計画をきちんと実行した点を評価しない、といった事態が起きる。こうした対応を取りたくなる経営者の気持ちは分かるが、いったんはこらえてほしい。まずは計画が達成されたかどうかのみを評価するように意識したい。
3.中身の評価や実行率の改善を目指す
計画の達成具合を確認したら、より高い次元を目指して次のAにつなげる。
ここで初めて提出された書類の内容をチェックして評価する。そこから「計画に抜けがあったから、この項目を書類に追加しよう」「そもそも提出書式が複雑で記入に時間がかかっているから、簡素化しよう」といった改善案が出てくるはずだ。この際にもPと同様、実行に関する難易度を考慮して設計しなければ、実行率が低下する。
4.「悲観的にP、楽観的にD」の意識を持つ
うまく機能させるコツに、「悲観的にP、楽観的にD」という言葉を挙げる経営者が多い。
「悲観的に」という言葉には、複数の捉え方がある。市場成長性などを過大に評価せず、「よっぽどの想定外の事態が起きなければこの見通しを下回ることはないだろう」と前提条件を低めに想定したり、「指示したらこれくらいはやるだろう」ではなく「ここまで計画に盛り込まないと、解釈に困るかもしれない」と計画に具体性を持たせたりといった具合だ。
ここで示した事例でも、そもそも書類の未提出の改善という課題なので、「ただ指示しただけでは提出率は上がらない。提出率を高めるための具体的な計画を立てる」という悲観的な見通しに基づいている。
そして、実際に行動に移ったら、楽観的に考えることが事態を前に進めるコツだ。計画段階とは違い、「まずはやってみる」ことを重視し、精度を気にしすぎて実行に移せない状況に陥らないようにする。そのためには、楽観的に臨む姿勢が大事になる。その結果、課題が見つかれば、しっかりと検証して次の行動につなげればいい。