売上アップの教科書

まとめ企画を立案して運営してみよう(売上アップ7回目)

これまでは事例をもとに具体的な販促アイデアを紹介してきました。

最終回は、そもそも企画立案をして、実際に効果的に運営するにはどうしたら良いのかを、ステップ別にお伝えいたします。

そして、最後には販促のトレンドをご紹介します。

ご自身のお店にあった企画立案のヒントとしてご活用ください。

1.販促企画を効果的に運営していくステップ

販促企画を立てたいと思ってから、実際に実行するまでのステップをご紹介します。一つ一つのステップを確実に行うことが、販促企画成功の近道となります。

ステップ1 成功事例を元に業種の特徴を理解

本連載の第2回~6回にてお伝えしてきましたが、まずは自店の業種の特徴を理解しましょう。業種を理解せず、やみくもに販促企画を立てたとしても、業種の特徴と合っていなければ、期待した効果は得られません。

例えば、口コミが重要な美容院で、路上などで不特定多数に値引きクーポン配布をしても、なかなか使用されません。

ステップ2 企画立案

特徴やお店の課題を整理して、企画を立案します。ここで、どのような要素を整理すべきかについては、後で詳しく解説いたします。

ステップ3 店頭の展開

実際に店頭で企画を展開します。漠然とこなすのではなく、「ステップ2」で設定・立案した企画の概要を意識しながら行いましょう。作成した企画概要を関係者全員に事前に説明すると効果的です。

ステップ4 効果検証

販促企画終了後には、企画がどれだけの効果があったのかを検証します。企画はやりっぱなしではなく、検証をすることで、より良い企画にバージョンアップしていきます。

ステップ5 企画の改善

ステップ4の結果をもとに、より効果が出るよう企画を改善します。

1~5のステップを繰り返すことで、販促企画は自店の状況に合った、より良い企画へと「継続的に成長」させていきましょう。

2.企画立案のポイント(ステップ2詳細)

企画立案をする際は、次にあげる6つのポイントを検討、確定する必要があります。どれかひとつでも欠けてしまうと、企画自体が曖昧なものになり、実施する際に支障がでたり、効果の精度が落ちたりします。

(1)課題

企画立案のスタート地点です。今、お店で抱えている課題をすべて抽出します。構えて考えず、箇条書きで良いので、数を多く出すことに専念することが大切です。 そして、抽出した課題の中から、先んじて解決すべき課題を1つだけ設定します。

(2)目的

(1)で設定した課題の「根本」にあることが、「何か」を考えます。具体的には、

  • 新規顧客を増やすこと
  • 既存顧客の来店回数を増やすこと
  • 一回当たり販売数量を増やすこと
  • 単価の高い商品を売ること
  • 従業員のやる気や技能をあげること

などに集約して考えるとよいでしょう。

(3)目標

(2)で定めた目的を達成した結果、獲得したい「数値目標」を設定します。この数値の「達成率」を、効果測定をする際の指標とするわけです。

(4)ターゲット

(3)の「目標」を最も効率的に達成するには、どのようなお客さまに向けて販促企画を行うべきか、そして、(1)の「課題」の直接対象となっているお客さまはいるのか、(2)の「目的」を達成をするためには、どのお客さまに対して販促企画を行うべきか、など多角的な視野でターゲットを設定します。

(5)仕組み

(1)~(4)で定めた企画内容と本連載第1回~第6回の内容などを参考にして、販促企画の仕組みを決めます。これらすべての要素が互いに「矛盾」することがないようにすることがコツです。

例えば、目的を新規顧客獲得としているのに、来店回数を増やすポイントカード策を実施したとしても、そもそも来店をしたことのない新規のお客さまには響きません。

(6)予算

(3)目標と、(5)仕組みを中心に、販促企画を実施するのに必要な予算を算出します。

<主な予算項目>

  • 景品代もしくは値引き代
  • ポスター、チラシなど告知物制作費
  • イベントなど行う際の備品代

3.効果測定のポイント

販促企画を実施した後は、分析基準を明確にして分析します。

(1)分析方法/数値的

  • そもそも目標値を越えているか
  • 昨年の同時期と比較
  • 先月と比較

(2)分析方法/数値以外

数値以外については、以下のように分析してみましょう。

1)お客様の声

お客様が販促企画に参加した際の生の声を、接客した担当者より収集します。「くじ引きは楽しいですね。ついいつもよりも多く買っちゃいました」といったような意見が多ければ、くじ引き参加条件金額は適切ですが、「ちょっとくじ引きへのハードル高すぎないですか?」といったクレームが多く入れば、設定条件は高すぎることになります。

2)従業員の声

実際、運営してみての「不都合な点」、もしくは「円滑にいった点」などを把握します。例えば、「くじ引きのことをお客様が知るのはレジがほとんどだったので、あまりプラスαの購入につながっていない様子だった」、あるいは「娘のぬり絵はいつ店頭で発表されるのかの問い合わせが多く、数字以上に影響がありそうだ」など、より具体的なエピソードや感想を収集します。

4.改善のポイント

実績や集めた生の声をヒントに、実施済みの販促企画をより効果的な企画へと改善していきます。

主な改善の視点は次の通りです。

(1)販促企画の参加条件

金額や来店回数などの条件を設定した際、そのハードルは低すぎないか、高すぎないかを検証し、必要であれば条件を変更するようにします。

(2)販促企画で提供する景品

値引きであれば値引き金額、賞品であればそのものの価値が、お客様の購買行動を変えるだけの魅力的なものだったか。もしくは、過剰に提供しすぎて費用対効果の面で悪化させていないかを検証し、変更の必要があれば新たな景品を考慮するようにします。

(3)販促企画の展開期間

販促企画が短期間だったために、本来ならば獲得できていた販促効果を失ってはいないか、つまり、機会損失になっていないか、もしくは、長期間にわたり展開することで、販促効果が薄れてきたなかでの展開になっていなかったかを検証し、最適な期間を設定するようにします。企画期間中に効果が認められれば、期間を延長するのもよいでしょう。

5.さらなる飛躍へのヒント、販促2.0

最後に、さらなる効果的な販促企画を、自店の状況に合わせて立案するためのヒントをご提供したいと思います。新しい販促の視点、考え方を3つ紹介します。

「売り場主義」から「プロセス主義」へ

お客様の購買行動を考える際に、商品やサービスがあるその場、だけではなく、その場に行きつくまでのプロセス(過程)もすべて販促のチャンスと考えましょう。 例えば、お店に入ってから販促していきたい商品の売り場に辿り着くまで(過程)に、いかにその商品に関連する情報を提供できるかを考えてみます。 ケーキ屋さんであればケーキができるまでの様子を店頭で見せることで、食べたいと思わせることも出来ます。

「顧客満足」から「顧客感動」へ

お客様がお金を払う前の期待(事前期待)に対して、期待通り価値が提供されると、それは「顧客満足」となります。ただし、この場合は、レストランだとしたら、そのお店は「満足できた、合格なレストラン」というレベルで記憶されます。 しかし、事前期待以上の価値を提供することが出来たらどうでしょうか。

事前期待以上ですので、予想をしていなかった体験となり、「顧客感動」になります。

この場合はレストランに対する思いは「白金高輪にある、感動したお店ハンバーガーレストラン、ケンズバーガー!」というように、固有名詞その場所とともに記憶されていきます。そして、この「顧客感動」は人に伝えたくなる体験であり、口コミを誘発するわけです。 「顧客満足」ではなく、「顧客感動」を目指しましょう。

「お客さま」から「親愛なる友」へ

一般的には自社の商品やサービスを購入してくださる方は「お客さま」と呼び、一定の距離を置いて、敬いながら接すべきだとされています。 しかし、長い期間にわたってのおつき合いを目指す場合は、この距離感が障害となり、関係を深める妨げとなります。一歩踏み込んだ、深い縁になれないわけです。

この事態を避けるには「お客さま」ではなく「親愛なる友」というスタンスで接してみてください。親愛なる友が来たら何と言うだろう、どういうことをしてあげたいだろう、と考え、接するわけです。

その結果、自然と「お客さま」ではなく「亀田さん」とお名前でお呼びするようになり、マニュアルを越えた、店員らしさ、個性のある接客になります。この関係、距離間になることで、長いお付き合いへとつながっていくわけです。

今回で本連載は終了となります。7回にわたり様々な販促企画のノウハウ・ヒントをお伝えしてきました。ただし、実際に企画をし実行されるのは読者の皆さんになります。

どうか、企画を立てること、実行することを苦しい作業と思わず、自らお客様以上に楽しむように心がけてみてください。

その気持ちは、必ずお客様に伝わりお客様も自然と楽しくなっていきます。なぜなら、あなたのお店はあなたのお家であり、販促企画は、そのお家で親愛なる友を招いた「パーティー」なのですから。

プロフィール

亀田 憲 (かめだ けん)

1975年生まれ。中小企業診断士。1998年(株)東急エージェンシー入社。セブン・イレブンのプロモーション企画に携わり、100本以上の販促企画を立案・運営。「セブン・イレブン10,000店企画」で2004年プロモーションアワード受賞。2007年より、ウォルト・ディズニー・ジャパン(株)にて商品開発、広告宣伝のマネジメントに従事。現在は大手スポーツメーカーで、マーケティング全体をマネジメントしている。
診断士としては、月刊「企業診断」での連載ほか、企画立案・ブランド構築を主テーマにセミナー講師としても活動。著書に「お金をかけずにスグできる!販促Q&Aノート」(同友館)がある。
著者コメント:「販促Q&Aノート」では、本連載のチェックシートを基礎力とした販促アイデアを70紹介。(1)1テーマが見開き完結、(2)実行までのステップを丁寧に解説した、買ったその日から行動できるアイデア集です。ぜひ、本連載と合わせてご活用ください。

お金をかけずにスグできる!販促Q&Aノート

掲載日:2012年2月28日