売上アップの教科書

小売業2回目-専門店(精肉店・書店・文房具店など)(売上アップ3回目)

事例紹介の2回目は、精肉店・書店・文房具店といった、特定の商品カテゴリーを専門に取り扱っている「専門店」を対象とします。

1.事例

さまざまなお店で実施されていて、効果が出やすいのは、次のような販促企画です。

【店員が主体となって実施するイベントの開催】

店員が裏方ではなく、主体・中心部となって、お客さまに対して直接働きかけるイベント。次の2点がポイントです。

(1)販売する商品を主役とする

店頭で販売している商品そのものをイベントの軸に添え、イベントを通じてその魅力を伝えます。ですので、ヒーローショーや大道芸など、客寄せが主たる目的で、商品がイベントに登場しないものは、この企画には該当しません。

(2)商品購入を参加条件とする

原則として、イベント単体では料金を発生させません。理由は、「イベント自体も、イベントの運営もお店の本業ではないから」。また、「お金をとった瞬間にイベント自体の品質に値段相当のクオリティを求められるから」です。 ここで適切なのは、イベントで主役となる商品の購入を参加の条件にすることです。

具体的な展開例
  • 精肉店の場合
    「肉屋自慢のひき肉を使った、コロッケの料理教室」
  • 書店の場合
    「絵本をつかった読み聞かせ会」
  • 文房具店の場合
    「話題の高性能ボールペンを使った、ボールペン字講座」

2.ねらえる効果

この「イベント」企画では、2つの効果がねらえます。

(1)イベントをきっかけとする来店頻度の向上

ワンストップで欲しいものが揃う、品揃えの幅が広い総合店舗(スーパー、百貨店など)に来店する予定だったものを、イベントへの参加を理由に、自店への来店を促すことができます。

(2)イベント参加を理由とした、客単価の向上(高単価商品の購入)

イベントの参加条件を、こだわりの商品(単価の高い商品)を主役にすることで、普段よりも客単価を高めることができます。

3.効果を出すポイント

(1)「専門店の特徴」をアピールする

専門店は取り扱い商品の幅が狭くて、深いのが特徴です。そのため、自店の商品を主役とするイベントを実施することで、その特徴をお客さまにアピールすることができます。 具体的には、店員が専門的な深い知識を有することを、イベントの内容や対応を通じてお客さまは理解することになります。

(2)品揃えの「深さ」をアピールする

また、イベントをきっかけにお客さまはお店の中を見て回ることになります。このことで、専門店は総合店舗と比較すると狭い店舗ですが、その割には深い品ぞろえであることを知ることになります。

これらの結果、総合店舗にはない、専門店ならではの「魅力・価値」を体験・理解してもらえるようになるわけです。

4.留意点

今回ご紹介した企画が成功するためには、店員にある能力が一定以上あることが必要となります。具体的には、「取り扱い商品の深い商品知識」と、それをベースとした「コンテンツ(イベント企画)の制作」ができる能力です。

仮に、自店の店員にそのスキルが不足している場合は、あきらめてしまわず、そのスキルを高めることを考えてみましょう。例えば、比較的小規模で短時間のイベント行い、店長などが横につきながら実際のイベント行い、この経験を通じてスキルアップを図るのも有効です。

プロフィール

亀田 憲 (かめだ けん)

1975年生まれ。中小企業診断士。1998年(株)東急エージェンシー入社。セブン・イレブンのプロモーション企画に携わり、100本以上の販促企画を立案・運営。「セブン・イレブン10,000店企画」で2004年プロモーションアワード受賞。2007年より、ウォルト・ディズニー・ジャパン(株)にて商品開発、広告宣伝のマネジメントに従事。現在は大手スポーツメーカーで、マーケティング全体をマネジメントしている。
診断士としては、月刊「企業診断」での連載ほか、企画立案・ブランド構築を主テーマにセミナー講師としても活動。著書に「お金をかけずにスグできる!販促Q&Aノート」(同友館)がある。
著者コメント:「販促Q&Aノート」では、本連載のチェックシートを基礎力とした販促アイデアを70紹介。(1)1テーマが見開き完結、(2)実行までのステップを丁寧に解説した、買ったその日から行動できるアイデア集です。ぜひ、本連載と合わせてご活用ください。

お金をかけずにスグできる!販促Q&Aノート

掲載日:2012年2月 1日