売上アップの教科書
小売業1回目ー地域密着型スーパー/コンビニ(売上アップ2回目)
前回は、販促企画の基本をお話ししましたが、今回から5回にわたり、具体的な事例をもとに、業種別の特徴を踏まえた販促企画の考え方をお伝えします。今回の対象業種は、地域密着型のスーパーやフランチャイズによる運営をしているコンビニエンスストアです。
1.事例
実際に、さまざまなお店で見かけるは、次のような販促企画です。
【店頭でのくじ引きイベント】
くじを引くためには、店内で一定金額以上お買い物をすることが条件。
景品は、店内で販売している商品そのもの。
つまり、「店内で○○○○円以上買うと、抽選でくじが引けて、その場で人気の商品がもらえる」というものです。
2.ねらえる効果
この「くじ引き」では、3つの効果がねらえます。
(1)客単価UP
企画に参加するために、普段より高い買い物をするようになります。中でも、買い上げ点数の増加によるところが大きいです。
(2)ロイヤルティの向上(ファン化)
楽しい企画を実施する、お客さまのことを考えるお店というイメージがつきます。
(3)商品のトライアル機会の提供
商品現物をプレゼントすることで、普段購入しない商品をお客さまがトライアルすることもあります。トライアルした結果、その商品を気に入れば、次回以降、購入する機会、つまりリピート購入につながります
これらは、販促企画実施期間だけではなく、終了後もその効果がつづきます。特に(1)においては、このような消費者の購買行動の変化によって、客単価は、販促企画が終了した途端に一気に通常通りに戻るのではなく、リピート購入により緩やかに下がるため、平均的な客単価UPが継続し、全体的な売上向上が期待できます。
3.効果を出すポイント
(1)プラスワン購入が狙いやすい特徴をふまえる
この企画が、スーパーやコンビニエンスストアといった業態で効果が出やすい理由は、これら業態が、店舗での取り扱い品目数が多く、取扱商品の単価が高くはないため、プラスワン購入が狙いやすく、買上げ点数が増加しやすいからです。 逆に、取扱商品の価格幅が小さく、高額商品が少ないため、点数を増加させないと、購入単価の向上は難しくなります。
(2)客単価を考慮した企画参加条件にする
このため、企画の参加条件を、販促企画実施前の客単価よりも、少し高い金額で設定することがポイントになります。 少し高い金額とは、 「くじを引くためには、あと一品買えば参加できる」という金額です。
あと一品とは、その店舗で取り扱っている商品の最低限価格帯です。これにより、企画参加のためのプラスワン購入をねらいます。例えば、コンビニであれば、お菓子・飲料の単価100円程度になります。そのため、平均単価600円のコンビニであれば、企画参加条件を700円にするのが適切です。
4.他業態への応用
上記の販促企画の考え方は、スーパー・コンビニ業態以外にも応用可能です。たとえば、家電など高額商品を扱うお店でしたら、カバー・スタンド・ケースなど付属品を購入することを企画の参加条件にすると良いでしょう。
サービス業であれば、サービスの提供時間を平均時間より長くする、飲食店であれば前菜やデザートなどメイン以外の料理をプラス一品頼むこと、を条件にすることで、効果的な企画実施が可能になります。
なお、プレゼントする景品もサービス延長券・配送費無料・ドリンク券など、提供する商品やサービスに関連する商品にする、といった応用が可能です。
プロフィール
亀田 憲 (かめだ けん)
1975年生まれ。中小企業診断士。1998年(株)東急エージェンシー入社。セブン・イレブンのプロモーション企画に携わり、100本以上の販促企画を立案・運営。「セブン・イレブン10,000店企画」で2004年プロモーションアワード受賞。2007年より、ウォルト・ディズニー・ジャパン(株)にて商品開発、広告宣伝のマネジメントに従事。現在は大手スポーツメーカーで、マーケティング全体をマネジメントしている。
診断士としては、月刊「企業診断」での連載ほか、企画立案・ブランド構築を主テーマにセミナー講師としても活動。著書に「お金をかけずにスグできる!販促Q&Aノート」(同友館)がある。
著者コメント:「販促Q&Aノート」では、本連載のチェックシートを基礎力とした販促アイデアを70紹介。(1)1テーマが見開き完結、(2)実行までのステップを丁寧に解説した、買ったその日から行動できるアイデア集です。ぜひ、本連載と合わせてご活用ください。
掲載日:2012年1月24日