闘いつづける経営者たち
「笠原健治」株式会社ミクシィ(第2回)
02.タウン構想で新しい風を
伸び悩む利用
交流型サービスの乱立で個性や存在感が揺らいでいるmixi。業績や利用者数も伸び悩んでいる。ミクシィの2011年4-12月期決算は、売上高が95億円(前年同期比1.7%減)、営業利益は13億円(同50.0%減)、当期利益は4億円(同61.6%減)。1カ月に1回以上mixiを使ったことを示す月間ログインユーザー数(MAU)は、09年3月時点の1174万人から、10年3月には同1386万人になり、11年3月は同1537万人に達した。しかし、それ以降は1500万人台のまま横ばい、もしくは微減傾向にある。
mixiが強みとする利用者同士の濃い関係を生かしつつ、新たな風を吹かせて場の活性化も図るにはどうすればいいのか—。この問題意識から笠原が打ち出したのが「タウン構想」だ。
「家」と「街」で交流の場を活性化
タウン構想では、従来の友人と交流する場を「家」、家の中で話す情報を収集できる空間を「街」と定義。さまざまな企業に街で情報発信をしてもらい、人とモノ・情報のつながりを生み出すことを狙う。例えば、ネット上につくられた仮想的な娯楽施設でソフトウエア開発会社がゲームを公開し、利用者がその場で新たな人と知り合いになったり、遊んだ感想をmixi上で友人と共有するような流れだ。
笠原は、mixiの主要顧客層である10-20代の若者は基本的に限られた人同士での濃密な関係を望んでいるとみている。だが「閉じた空間でありすぎるのも良くないし、魅力に欠ける部分もある。タウン構想で少しmixi内をリフレッシュしたいと思う」と笠原は狙いを説明する。
企業など第三者の参加促す
タウン構想実現のカギとして笠原は「mixiページ」という仕組みもつくった。mixi利用者や企業、個人事業主などが自由に作成し公開できるウェブサイトのことだ。mixiで濃い人間関係が形成されたとしても、笠原が指摘するように濃密さは閉鎖性と表裏一体。閉じた集団には外部の人間が関わりづらく、企業が何かを提案するのが難しくなるケースも想定される。オープンなサイトをつくることで、第三者の参加を促そうという考えだ。
従来はmixi利用者が日記などを書いても限られた友人・知人にしか公開されないが、mixiページはヤフーやグーグルといった検索エンジン経由での来訪が可能。閲覧者が気に入った情報は友人に知らせられる仕組みで、口コミ効果が期待できる。
mixiの個性が問われているのは間違いないが、「さまざまな関係者が満足できる空間を目指す」という趣旨はブレてはいないだろう。それをどこまで具現化できるのか、笠原のバランス感覚と実行力が試されている。
プロフィール
笠原 健治 (かさはら けんじ)
1975年12月6日、大阪府生まれ。東京大学経済学部のゼミで学んだITビジネスの事例や、米国におけるインターネットビジネスの興隆に触発される。紙の求人情報誌を見てアルバイト採用に応募するのが非効率的だと感じたことなどがきっかけで、在学中の97年に求人情報サイト「Find Job!(ファインドジョブ)」を開始。企業からの受注を伸ばし、ITの世界で生きていくことを決意する。1999年イー・マーキュリー(現ミクシィ)として法人化し、社長に就任。01年に東大を卒業。04年に参加交流型のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「mixi(ミクシィ)」を立ち上げ、現在に至る。休日もインターネットへアクセスし、新しいサービスを構想していることが多いという。
企業データ
- 企業名
- 株式会社ミクシィ
- Webサイト
- 設立
- 1999年(平11)6月
- 資本金
- 37億6500万円
- 所在地
- 東京都渋谷区東1の2の20
- Tel
- 03-5738-5900
- 事業内容
- 参加交流型のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)運営
- 売上高
- 132億2900万円(11年3月期)
掲載日:2012年5月1日