闘いつづける経営者たち
「山下 徹」株式会社NTTデータ(第3回)
03.国内事業の変革
国内事業と海外展開は表裏一体—。NTTデータは海外のITサービス市場に挑む一方で、IT投資の抑制で低迷する国内の同市場で収益を伸ばすための糸口を見いだす必要がある。山下徹社長は「グローバルなスタンダードに合わせて海外事業を展開するには、国内のこれまでの仕事のやり方を変えなければいけない」と強調する。
リ・マーケティング
国内のITサービス市場が伸び悩む中、NTTデータが顧客拡大に向けて進めているのが「リ・マーケティング」と呼ぶ取り組みだ。以前にシステム構築(SI)などを受注できなかった企業に対して、改めて営業活動や提案でIT需要を掘り起こす。従来のマーケティングで難しいと見込んでいた案件も、技術面や顧客の経営環境の変化で獲得できる可能性が出てくるため、リ・マーケティングが持つ意味は大きい。
NTTデータは自治体や法人分野などを開拓する余地を残しており、リ・マーケティングが新規顧客の獲得にも生きてくる。手が行き届いていなかった分野のIT投資を取り込み、顧客基盤の拡充を狙う。
NTTデータは2008年のリーマンショック以降、国内事業の苦戦が続き、12年3月期国内売上高は前期比5.7%減の1兆円の見通し。M&A(合併・買収)を通じて拡大する海外事業とは対照的に、低調な国内事業が業績の足かせになっていることは否めない。山下社長は「国内売上高は大きな伸びは望めない」との見方を示すが、リ・マーケティングのように収益を下支えする取り組みが求められる。
オフショア開発の強み
ITサービス各社と受注を巡って厳しい競争が続き、NTTデータにとって強みとなるのが、中国やインドに設けている大規模なソフトウエアのオフショア(海外委託)開発拠点だ。開発コストの低減を迫られる中で競争力を高めるにはオフショア拠点の活用が不可欠。そのためNTTデータは12年度末までに、日本向けオフショア開発要員を現在の約3400人から約5000人に5割程度増員する。特に中国がオフショア開発の要となる。ソフト開発の外注に占めるオフショア比率を現在の約6%から、12年度に10%まで高めることを目指す。
またNTTデータは中国のオフショア拠点を活用し、企業が利用しているアプリケーション(応用ソフト)の運用・保守のアウトソーシング(外部委託)サービスも始めた。顧客から運用・保守業務を引き継ぎ、コストを20%から50%削減するという。
山下社長は今後の国内事業のあり方として、「提案型や(クラウドコンピューティングなどの)サービス型のビジネスを進める必要がある」と指摘する。国内事業の変革が海外事業を拡大する布石となる。
プロフィール
山下 徹 (やました とおる)
生年月日1947年10月9日、神奈川県出身。71年3月東京工業大学工学部卒業。71年4月日本電信電話公社(現NTT)入社、96年7月NTTデータ通信(現NTTデータ)産業システム事業本部第一産業システム事業部長。99年6月取締役、03年6月常務取締役、05年6月代表取締役副社長執行役員、07年6月代表取締役社長。
企業データ
- 企業名
- 株式会社NTTデータ
- Webサイト
- 設立
- 1988年(昭和63年)5月23日
- 資本金
- 1425億2000万円
- 所在地
- 東京都江東区豊洲3-3-3
- Tel
- 03-5546-8202
- 事業内容
- システム構築事業
- 売上高
- 1兆1619億円(2011年3月期)
掲載日:2012年1月5日