闘いつづける経営者たち
「山下 徹」株式会社NTTデータ(第2回)
02.2つのガバナンス
「M&A(合併・買収)で海外拠点が増えても、各拠点が『点』として存在しているようではだめだ」。山下徹社長は海外事業を展開するうえで、M&Aを通じた単なる企業規模の拡大では不十分との見方を示す。NTTデータの海外子会社はすでに約150社に上る。そのため海外事業の効率化や各社の有機的な連携に向けて、地域ごとに子会社の統合・再編に動きだした。キーワードは「縦軸と横軸によるガバナンス(統治)」だ。
ブランド力訴求
縦軸は地域を指し、地域統括会社を各地域に設けてガバナンスを強化する。中国では子会社のNTTデータチャイナ(北京市)と北京NTTデータ(同)を統合して12月に設立する新会社が現地の事業を統括する。NTTデータチャイナが現地企業や日系企業への営業活動を手がけ、北京NTTデータがソフトウエアのオフショア(海外委託)開発拠点のため、統合で開発と営業の一元体制の確立を狙う。
また地域統括会社の設置に関連して、「NTTデータ」のブランド展開も進める。「米国では子会社化したキーンやインテリグループのほうが知名度が高いが、浸透しているのは特定の地域に限られている」(山下社長)という。海外のITサービス市場を開拓するには、各社のブランドよりも、「NTTデータ」のブランドを顧客企業に訴求することが受注競争を勝ち抜く武器になる。そのため「米国ではできるだけ早くブランドを『NTTデータ』に統一する」(同)考え。
連携を重視
横軸は業種や分野ごとのITサービスとし、各社の技術やノウハウを結集してグローバルで展開する。具体的な取り組みの一つとして、大手企業が利用する独SAP製の統合業務パッケージ(ERP)などを用いたSI事業の拡大に向けた連携組織「SAPグローバル・ワンチーム」を立ち上げた。国内子会社だけでなく、キーンやインテリグループ、独アイテリジェンスなど海外子会社も参加。グローバルでSAP製品のSIや運用・保守に対応する体制を築くことを目指す。
山下社長は「各拠点がつながり、一つのチームとして動く必要がある」と海外事業の拡大で「連携」を重視する。米IBMなどのITの巨人たちに対抗するには、2つのガバナンスでNTTデータグループとして一体感を出せるかがカギだ。
海外3000億円へ
NTTデータは2013年3月期海外売上高3000億円を設定し、北米、欧州、アジア・太平洋の各地域で1000億円ずつ稼ぐ戦略を描いている。北米と欧州ではM&Aが順調で売上高を伸ばす一方、アジア・太平洋地域の売上高は100-150億円程度にとどまる。山下社長はM&Aと子会社の統合・再編を並行して進め、海外事業を実績として残すための正念場を迎えている。
プロフィール
山下 徹 (やました とおる)
生年月日1947年10月9日、神奈川県出身。71年3月東京工業大学工学部卒業。71年4月日本電信電話公社(現NTT)入社、96年7月NTTデータ通信(現NTTデータ)産業システム事業本部第一産業システム事業部長。99年6月取締役、03年6月常務取締役、05年6月代表取締役副社長執行役員、07年6月代表取締役社長。
企業データ
- 企業名
- 株式会社NTTデータ
- Webサイト
- 設立
- 1988年(昭和63年)5月23日
- 資本金
- 1425億2000万円
- 所在地
- 東京都江東区豊洲3-3-3
- Tel
- 03-5546-8202
- 事業内容
- システム構築事業
- 売上高
- 1兆1619億円(2011年3月期)
掲載日:2011年12月28日