闘いつづける経営者たち
「上田 準二」株式会社ファミリーマート(第3回)
03.再編の主導権握る
エーエム・ピーエム買収
ファミリーマートは現在、同社の将来の経営を大きく左右する二つの事業に取り組んでいる。一つは国内市場飽和を見越し、2015年度までに海外店舗を現状の約3倍、2万5000店に引き上げる構想。もう一つは国内で、買収したエーエム・ピーエム・ジャパンの看板替え・ワンブランド化だ。
コンビニは国内約4万3000店規模となり、すでに業界内、業界外から飽和状態が指摘されている。とくに都市部での競争は激しく、淘汰(とうた)の時代に入ったともいわれる。そんな中でファミリーマートは首都圏中心に約1100店を持ち、経営不振に陥っていたエーエム・ピーエム・ジャパンを09年に買収した。
コンビニは周知の通り、1店1店オーナーがいるフランチャイズ制。店ごとに契約形態が違うし、オーナーそれぞれ経営方針も違う。それを1店1店説得して12年春までに約600店をファミリーマートブランドに一本化するのだから、「想像通りの大変な作業」(上田社長)となっている。
ワンブランド化のモデル狙う
昨年12月末までに約280店をファミリーマート化した。計画では今期(11年2月期)目標の店数を転換できたとして売上高は転換前に比べ同10%増、年間6億円の赤字を見込んでいた。だが、現状は売上高が同30%増にまで増えた。今後転換店がさらに増えることで、今期同20%増程度に落ち着くと予想されるが、売り上げ増加が予想以上に順調なため転換初年度から黒字化の可能性も浮上。さらに来年の利益貢献は予想より上積みできる可能性も高い。
例えば昨年11月は単月で約50店の看板替えを実施した。契約の変更から看板替え作業、商品政策の入れ替えなどと、新店の開店よりもやることがたくさんあるだけに大変だ。しかし、上田社長は「社員も得難い経験。ワンブランド化に取り組む社員のモチベーションは高い」という。
上田社長はこのエーエム・ピーエムの転換の成功にこだわる。というのも、飽和局面に入ったコンビニでは今後、小規模チェーンのM&A(合併・買収)が活発化するとみられるからだ。「ワンブランド化のモデル」と評価されれば、再編の主導権を握れる可能性もあるというわけだ。
プロフィール
上田 準二 (うえた じゅんじ)
1970年(昭和45年)山形大学文理学部卒業、同年伊藤忠商事株式会社入社。 食料部門長補佐、CVS事業部長を経て、2000年(平成12年)株式会社ファミリーマート顧問。2001年(平成13年)常務取締役、2002年代表取締役社長、現在に至る。 1946年(昭和21年)12月、秋田県生まれ。
企業データ
- 企業名
- 株式会社ファミリーマート(FamilyMart Co.,Ltd.)
- Webサイト
- 設立
- 1981年9月1日
- 資本金
- 16,658百万円
- 従業員数
- 3,065名(10年2月末)
- 所在地
- 〒170-6017 東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60 17階
- 事業内容
- フランチャイズシステムによるコンビニエンスストア事業
掲載日:2011年3月10日