闘いつづける経営者たち
「上田 準二」株式会社ファミリーマート(第2回)
02.国々に合った店を
見えない障壁との闘い
ファミリーマートが純国産コンビニとして中国での500店達成したことは、世間的には静かに通り過ぎた一事象にすぎない。しかし、中国ビジネスは一筋縄ではいかないというのが業界の共通認識。見えない障壁との闘いでもある。上田準二社長は「(小売業の海外展開では)進出先の国々に合った店を作るしかない。(現地の生活者に)受け入れられる企業にするには7、8年はかかる」と話す。
国内では年間に500店、1000店と出店する大手コンビニチェーンが、中国では出店が加速できていない。その背景には、まだ一人当たりの所得が低く、コンビニ利用者が発展途上にあることもある。しかし、最大の要因は"人治国家"とやゆされるように、同国では人脈なくして何事も前に進めないからだ。
海外店舗拡大へ
党幹部などに人脈がないと、あらゆる法規制の網に縛られ、事業が進められない。「やれ消防法だ、やれ、食品衛生や、環境面の許認可だと、たくさんある許認可が簡単におりない」(あるコンビニ)といわれる。人脈があればその時間を短縮できるともいわれているが、それもこれも実際にやってみなければ分からない。
しかも、海外は先行投資の期間が長い。とくにコンビニはシステム産業であるために、インフラの整備が重要。物流や店舗システムを整備し、ベンダーの開拓なども行う必要がある。
1000店規模を目標に、インフラを整備すると「10年や15年はかかる」(上田社長)という。ファミリーマートは台湾で現在約2600店を展開しており、提携先の現地企業は現地証券取引所に上場したが、「そうなるまでに10年かかった。(海外が順調なら)ベネフィットを国内に回せる体制ができる」(上田社長)。中国・上海地区では海外でのリスクをはねのけ、2012年度の黒字化計画を1年以上前倒しし、昨年7月から9月までの期間を黒字化した。
上田社長は「とにかく、海外で成功するには国々に合った店を作ることだ」と力説するが、ベトナムでも展開を始めた海外事業で、15年度までに海外店舗を現状の約3倍、2万5000店に引き上げる計画だ。
プロフィール
上田 準二 (うえた じゅんじ)
1970年(昭和45年)山形大学文理学部卒業、同年伊藤忠商事株式会社入社。 食料部門長補佐、CVS事業部長を経て、2000年(平成12年)株式会社ファミリーマート顧問。2001年(平成13年)常務取締役、2002年代表取締役社長、現在に至る。 1946年(昭和21年)12月、秋田県生まれ。
企業データ
- 企業名
- 株式会社ファミリーマート(FamilyMart Co.,Ltd.)
- Webサイト
- 設立
- 1981年9月1日
- 資本金
- 16,658百万円
- 従業員数
- 3,065名(10年2月末)
- 所在地
- 〒170-6017 東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60 17階
- 事業内容
- フランチャイズシステムによるコンビニエンスストア事業
掲載日:2011年3月7日