ビジネスQ&A

株式上場した場合の手順やメリット・デメリットを教えてください。

創業30年を迎える食品卸売業です。そこで、30周年をきっかけに飛躍を目指して、5年後をめどに株式の上場を目標にしようと思っています。株式上場した場合、どのようなメリットとデメリットがあるのかアドバイスをください。また、どのような手順を踏むのか、スケジュールについても教えてください。

回答

一般的な公開スケジュールは、株式上場の検討からプロジェクトチームの立ち上げ、社内体制の整備、監査法人などへの依頼、そして上場審査となります。メリットとしては信用力の増大、デメリットは会社の乗っ取りの危険性などが考えられます。

5年後の株式公開を目標とされているようですね。株式公開までには長期的な準備が必要なものや、時間的な制約のあるものがあります。できるだけ効率的に進めるために、スケジュール表を作成して、着実に実行していきましょう。

【株式公開のスケジュール】

一般的なスケジュールとしては、次のとおりです。

  1. 株式公開の検討
  2. 株式公開プロジェクトチームの設置(公開準備室)
    プロジェクトリーダー決定(社長または管理部門取締役)、スタッフの補充、事業計画の策定・見直しなどを行います。
  3. 社内体制強化
    組織・業務フローの構築、会計処理方針、原価計算制度の確立、在庫管理システムの確立、予算管理・月次決算制度の確立、内部監査体制の確立、社内規程の整備などを行います。
  4. 監査法人・主幹事証券会社の選定と依頼
  5. IR(株主や投資家に情報提供を行うことで、企業活動を深く理解してもらい、良好な関係を築いていく活動全般のこと)の作成
  6. 事前審査
  7. 証券取引所・日本証券業協会に上場申請
  8. 上場

【株式公開のメリット・デメリット】

株式上場は、経営者の夢の実現であり、同時にさまざまな経営上のメリットを獲得し、事業を拡大する手段でもあります。しかしながら、株式の買い占めによる乗っ取りの可能性や事務量やコストが増大するなどのデメリットも存在します。表1に、株式上場の主なメリット・デメリットをまとめましたので、参考にしてみてください。

表1 株式上場の主なメリット・デメリット

メリット

デメリット

優良企業としての知名度向上、企業信頼度の向上

買占め等により会社支配権を失う可能性

資本調達力の増大

株主総会対策が必要となる

優秀な人材の確保が容易になる

事務量が増大、会計監査によりコストが増大

創業者利潤が得られる

企業内容開示の義務が生じる

組織強化、内部管理体制の充実

株主代表訴訟による経営者責任の追及を受ける可能性

従業員持株会やストックオプションによる従業員の資産形成が可能

株価の維持・配当の維持などが必要

財務体質の充実

コンプライアンスへの対応が厳しくなる

【株式上場の上場審査と市場の種類】

企業が株式上場をするためには、上場会社として適切な企業かどうかの審査を受けなければなりません。この審査基準には、形式基準と実質基準があります。

形式基準は、満たさなければならない最低基準と申請前の一定期間に行ってはならない事項とからになります。各証券取引所において具体的に定められており、この基準に達しなければ上場申請そのものが受理されませんので注意しましょう。たとえば、株式上場市場により異なりますが、最低公開株式数、純資産額、公開時の時価総額、設立経過年数などの最低基準が設けられている場合が多いようです。

これに対して、実質基準とは形式基準を満たした企業が受ける審査のことをいいます。実質基準では、「企業の継続性・収益性」「企業経営の健全性」「企業内容などの開示の適正性」などが審査されます。

詳しくは、下記の各証券取引所をご参照ください。

このように、株式上場を実現するためには膨大な時間と労力を必要としますが、企業を発展させるためのメリットは計り知れないものです。長期的な作業になると思いますが、スケジュール管理をしっかりと行い、株式上場を実現させてください。

回答者

中小企業診断士 渋谷 雄大