ビジネスQ&A
持分会社の社員の持分は譲渡できますか?
2021年 8月19日更新
合同会社をはじめとする持分会社の社員が出資の回収を行う方法として、持分の譲渡が考えられますが、合同会社の持分の譲渡には規制があると聞きました。具体的にどのような規制があるのか、教えてください。
回答
持分会社の持分の譲渡は、必ず社員の承認を要します。原則総社員の承認を要しますが、業務を執行しない有限責任社員の持分譲渡については、業務を執行する社員の全員の承諾で足ります。
【持分会社の持分とは】
会社法では、会社の種類を大きく「株式会社」と「持分会社」の2つに分けて規定しています。
「持分会社」は、合名会社、合資会社または合同会社の総称です(会社法第575条第1項。以下すべて会社法の条文番号。)。
さて、会社法では、株式会社の株主は、その有する株式について次の3つの権利を有すると規定しています(第105条第1項)。
- 剰余金の配当を受ける権利
- 残余財産の分配を受ける権利
- 株主総会における議決権
一方、持分会社においては、議決権が出資の価額に応じるという規定にはなっていないので、株式会社の株式と持分会社の持分は同じようなもの、とまでは言えせんが、
- 社員の持分の差し押えは、利益の配当を請求する権利に対してもその効力を有すること(第621条第3項)
- 残余財産の分配の割合について、定款に定めのない場合には、その割合は各社員の出資の価額に応じて定めること(第666条)
- 業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部または一部を他人に譲渡することができません(第585条第2項)。
- それ以外の場合は、社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部または一部を他人に譲渡することができません(第585条第1項)。
と規定されていることから、会社に対する財産的な権利という意味では、株式会社の株式と持分会社の持分はかなり類似したものである、ということができます。
【持分の譲渡についての規制とは】
株式会社の株式の譲渡は、原則自由です(第127条)。ただし、譲渡制限株式については、その譲渡につき、会社の承認を要します(第2条第17項ほか)。
一方、持分会社の持分の譲渡は、必ず社員の承認を要します。
具体的には、次のとおりです。
なお、持分会社の社員の氏名・名称および住所は、定款に記載される事項のため、持分譲渡があった場合には定款変更に該当し、原則的には総社員の同意が必要となります(第637条)。
しかし、前述した業務を執行しない有限責任社員の持分譲渡による定款変更については、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができるとしています(第585条第3項)。
【その他の留意点】
株式会社の株主が負う責任は、「その有する株式の引受価額を限度とする」となっていますが(第104条)、持分会社の社員は、持分を譲渡した後においても一定の責任を負います。
具体的には、「持分の全部を他人に譲渡した社員は、その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う」です(第586条第1項)。
また、持分会社は「その持分の全部または一部を譲り受けることができない」こととなっており(第587条第1項)、もしこれを破って取得した場合には、「その持分は、その持分会社がこれを取得したときに、消滅する」こととされています(第587条第2項)。
株式会社が自己株式を取得することができるのとは対照的です。
- 回答者
-
税理士・中小企業診断士
野村 幸広
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