ビジネスQ&A

監査役を置かなくてもよい条件について教えてください。

当社は現在監査役がいますが、新会社法では必ずしも監査役を置かなくてもよいと聞きました。どのような条件のときに、監査役を置かなくてもよいのでしょうか?

回答

中小企業を想定した場合、監査役は(1)取締役会を設置していない場合、(2)取締役会を設置し会計参与を置いている場合に置かなくてもよいのです。監査役の業務は、適正な会社運営のためにも必要なものです。よって実効性のある監査役の設置を考えることが必要です。

【会社法では自由な機関設計が可能】

「監査役を置かなくてもよい条件」はさまざまなケースが考えられます。従来の画一的な機関設計(株式会社であれば取締役3名、監査役1名は必須でした)に比べ、会社法ではかなり自由な機関設計が可能になっているからです。

【監査役を設置しなくてもよい条件】

(1)株式譲渡制限会社であること

株式譲渡制限会社とは、株式を譲渡する際に会社の承認が必要である旨を定款に記載してある会社のことを言います。自由に株式を譲渡することができませんので、望まない人物に株式が渡ることがありません。
監査役を設置しなくてよいほとんどのケースは、株式譲渡制限会社であることが前提になっています。
なお、公開会社(株式譲渡制限をしていない会社)の場合は、以下の(4)委員会設置会社の場合で説明する委員会設置会社をのぞいて監査役を設置する義務があります。

(2)取締役会を設置していないこと

取締役会を設置しない場合は、原則監査役は設置する必要はありません。

取締役会を設置するには、最低3名の取締役が必要になります。よって、取締役が3名未満の会社は、自動的に監査役の設置義務がないことになります。
なお、「設置する必要がない」ということは、取締役会を設置しなくても監査役を置くことは可能だということです。
また、公開会社は取締役会を設置しなければなりませんので、自動的にこのケースには当てはまらないことになります。
なお、例外として、大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)の場合は、監査役を設置しなければなりません。

(3)取締役会を設置して、会計参与を置く場合

取締役会を設置している場合でも、会計参与を設置している場合は、原則監査役を設置しなくてもよいことになっています。
会計参与は税理士、税理士法人、公認会計士、監査法人がなることができ、経営者と共同で計算書類の作成を行う、会社法で新たに作られた機関です。
なお、会計参与と監査役を両方設置することも可能です。

(例外) 大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)の場合は、監査役の設置は必須となっていますので、会計参与を置いても監査役は設置しなければなりません。

(例外)
会計監査人を置く場合は、監査役を設置しなければなりません。

(4)委員会設置会社の場合

委員会設置会社の場合は、監査役を置くことはできません。注意していただきたいのは、「置かなくてもよい」ではなく、「置くことができない」という点です。公開会社で唯一監査役を置かないパターンです。
委員会設置会社については、以下にある関連情報リンクから「委員会設置会社について教えてください」の項を参照してください。

【中小企業の監査役】

株式譲渡制限会社であり大会社でないケース、つまり中小企業に限っていえば、取締役会を設置していない、あるいは取締役会を設置していて会計参与を設置している場合に、監査役を設置しなくてもよいと考えてよろしいでしょう。

従来の株式会社では、監査役の設置が必須だったため、監査業務を行わない名ばかりの監査役が多く存在したことも事実です。しかし、条件が許せば監査役の設置は任意になりました。だからといって、監査役は不要なわけではありません。

監査役は、会社の業務・会計が適切に行われているかどうかを監査するという重要な業務を担っています。ときには取締役の暴走を食い止める役割も果たします。形骸化している監査役は確かに不要でしょうが、会社法施行を機にきちんと監査業務が行える人物を監査役に迎える、あるいは顧問税理士などを会計参与に迎えるなどの対応をし、会社の運営を適切に行う仕組みを整えることが、企業が永続的に発展していくためには重要です。

また、このような取り組みをしっかり行っていることは、金融機関や取引先からの評価を高めることにつながり、円滑な事業運営につながっていくことでしょう。
ぜひ積極的に監査役、会計参与の制度を活用し、御社の成長に役立ててください。

回答者

中小企業診断士
遠藤 康浩