経営ハンドブック
クラウドファンディング
2023年 9月 20日
クラウドファンディングは資金調達と同時に、会社のPRや集客も可能
近年、新しい資金調達の方法として、クラウドファンディングが注目を浴びている。クラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する仕組みのことである。起業家や中小企業、社会貢献活動など、さまざまなプロジェクトに対して資金の支援が行われる。
本記事では、クラウドファンディングの種類や始め方、メリット・デメリット、成功要因と失敗要因について解説する。クラウドファンディングの活用によって、新たな可能性がひらける一方で、成功のためには、さまざまなポイントを押さえる必要がある。クラウドファンディングに興味がある方や、資金調達を考えている方は、ぜひ参考にしていただきたい。
クラウドファンディングのポイント
- クラウドファンディングとは
- クラウドファンディングの種類
- クラウドファンディングの始め方
- クラウドファンディングのメリット・デメリット
- クラウドファンディングの成功要因と失敗要因
1.クラウドファンディングとは
クラウドファンディングは、資金を調達したい人がプロジェクトを公開し、不特定多数が支援を行う仕組みだ。この言葉は、「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語であり、その名の通り、多くの人々が資金調達に関わることができる。
クラウドファンディングの魅力は、手軽さと広い拡散性にある。インターネットを通じてプロジェクトを公開することで、多くの人々に知ってもらいやすくなる。また、SNSやメディアを通じて情報が広まることもあり、支援者の範囲を広げることができる。支援者は少額の支援でもプロジェクトに参加できるため、気軽に支援することができるのも特徴の一つだ。
2.クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングは、大きくは「購入型・寄付型・金融型」の3つに分類される。分類の仕方によっては、4~6つに分けることもあるが、それぞれのタイプで特徴があり、自社の目的や状況に合わせて選ぶことが重要だ。
(1)購入型
購入型では、支援者がお金を出す代わりに、リターン(特定の商品やサービス)を受け取ることができ、もっとも一般的な形式となっている。例えば、新しい商品やサービスを開発する際に、そのプロジェクトの資金を集めるために利用される。支援者は、プロジェクトに興味を持ち、その商品やサービスを手に入れたいと思う場合に、一定の金額を支援する。この出資額に応じて、支援者は特典やリターンを受け取ることができる。
(2)寄付型
起案者が立ち上げたプロジェクトに対して、支援者が寄付を行う形式で、主に社会貢献度の高いプロジェクトに利用される。例えば、被災地の復興支援や、人権・福祉の分野での支援などがある。これらのプロジェクトは、自治体や非営利団体など公共性の高い組織が、起案者となることが多い。
(3)金融型
金融型には、大きく分けると融資型と投資型の2つのタイプがある。融資型は、資金を必要とする企業や個人が、一般の人々から融資を募り、金利を支払うことで資金を調達する仕組みだ。
一方、投資型は、非上場企業の株式などへの投資を通じて、資金を調達する仕組みだ。一定額の投資をすることで、その企業の成長に応じてリターンが期待できる。
3.クラウドファンディングの始め方
クラウドファンディングに成功するためには、魅力的な企画や広報活動、支援者とのコミュニケーションなどが重要だ。プロセスを把握し、計画的に行うことが、成功への第一歩となる。クラウドファンディングを始めるためには、以下の手順を踏む必要がある。
(1)目標の設定
達成したい目標を明確に設定する。資金調達の目標額やプロジェクトの内容、目的などを具体的に決めよう。
(2)プロジェクトの企画
目標が設定できたら、プロジェクトの詳細な企画を立てる。プロジェクトの内容や特徴、支援者に提供するリターンなどを決定する。
(3)クラウドファンディングの種類やサイト選定
プラットフォームの特徴を見極めながら、適切なクラウドファンディングの種類やサイトを選定する。人気のあるサイトや、プロジェクトのテーマに合ったサイトを選ぶことが重要だ。
(4)プロジェクトの公開
選んだクラウドファンディングサイトで、プロジェクトを公開する。プロジェクトの概要や魅力を伝えるために、わかりやすく魅力的なプレゼンテーション資料を作成しよう。
(5)資金調達のための広報活動
プロジェクトを公開したら、広報活動を行う。SNSやメディアを活用して、プロジェクトを多くの人に知ってもらうことが、成功のポイントになる。
(6)支援者へのリターンを提供
プロジェクトに支援してくれた方への、リターンを準備し提供する。リターンの内容や提供方法を明確にし、支援者に感謝の気持ちを伝えることが重要だ。支援者は、今後も自社のファンとなりサポートしてくれる可能性があるので、誠意を持って対応する必要がある。
(7)プロジェクトの運営と進捗報告
クラウドファンディングが成功した場合でも、プロジェクトの運営や進捗報告を怠ってはいけない。支援者とのコミュニケーションを大切にし、信頼関係を築くことを心がけよう。
4.クラウドファンディングのメリット・デメリット
クラウドファンディングを利用する中小企業(起案者)には、以下のようなメリット・デメリット・注意点がある。
(1)クラウドファンディングのメリット
a. 新たな資金調達手段の獲得
従来の方法では資金調達が難しい場合でも、クラウドファンディングを利用することで多くの人々からの支援を得ることができる。これによって、商品開発やプロジェクトの実現が可能となる。
b. マーケティング効果
クラウドファンディングはプロジェクトを一般公開するため、多くの人々にプロジェクトの存在を知ってもらうことができる。支援者は、自身の関心や共感からプロジェクトに参加するため、情報を広く拡散することが可能で、マーケティング効果が期待できる点も魅力だ。
c. 事前の市場検証
クラウドファンディングによって集まった資金や支援者の数は、プロジェクトの市場における需要や関心度を示す指標となる。このため、事前の市場検証や商品開発の方向性を確認できるという利点がある。
(2)クラウドファンディングのデメリットや注意点
a. 資金調達できないことがある
クラウドファンディングの最大のデメリットは、資金調達ができないことがあるという点だ。クラウドファンディングは、インターネットを通じて多くの人々からの資金を募る仕組みだが、必ずしも目標金額を達成できるわけではない。プロジェクトや商品に魅力がない場合や宣伝が不十分な場合、または競合が多くて注目されない場合など、資金が集まらないことがある。
このデメリットを回避するためには、十分な準備と計画が必要だ。プロジェクトの魅力や独自性をアピールするための、マーケティング戦略や広告宣伝の充実、SNSやメディアを活用した情報発信などが重要だ。また、支援者に対して魅力的なリターンや特典を提供することで、支援意欲を高めることも有効だ。
b. 資金調達までに時間がかかる
一般的に、クラウドファンディングのプロジェクトでは、準備期間から実際に資金が入金されるまでに3~5ヵ月程度かかることが一般的だ。急いで資金を調達しなければならないプロジェクトにとってはデメリットとなる。
特に、資金が必要な時期や期限がある場合には、クラウドファンディングの利用は不向きとなる。プロジェクトが予定通りに進まない場合や、目標の金額が集まらない場合もあることに留意して利用を検討しよう。
c. アイデアを盗まれる可能性がある
クラウドファンディングは、起案者が自分のアイデアやプロジェクトを公開し、多くの人々から支援を募る仕組みだ。しかし、この公開された情報は誰でもアクセスできるため、第三者によってアイデアが盗用される可能性がある。
クラウドファンディングを始める前には、アイデアやプロジェクトに関する特許や著作権などの保護を検討することが重要だ。アイデアの保護には、手間や時間・費用がかかることもあるが、自社のアイデアを守るためには必要なステップとなる。
5.クラウドファンディングの成功要因と失敗要因
(1)成功要因
例えば、平成24年に設立された小規模な鞄製造事業者のK社(香川県)は、防弾チョッキにも使われる強靭なナイロンを使用してカバンを試作した。このプロジェクトはテレビでも紹介され、目標金額50万円を大幅に上回る250万円以上の支援を集め、一般販売を開始した。
K社の成功例から学べることは、クラウドファンディングを行う際には、魅力的なプロジェクト設定やリターンの提供だけでなく、広報活動やコミュニケーションも重要であるということだ。商品開発に至るまでのストーリーや、商品の具体的な魅力をSNSなどで多くの人に伝え、共感を得ることが成功の鍵となる。
中小企業は、クラウドファンディングを利用することで、資金調達だけでなく、知名度の向上や新たなビジネスチャンスの獲得などの副次的な効果も期待できる。しかし、それに成功するためには、計画的なプロジェクト設計と、綿密な広報活動が必要となる。
(2)失敗要因
クラウドファンディングは、中小企業が資金調達を行うための有力な手段として注目されている。しかし、資金調達に失敗してしまった企業も多く存在する。以下が、クラウドファンディングの、主な失敗要因となる。
a. 不適切な目標金額の設定
b. PR活動の不足
c. 魅力的なリターンの提供が不十分
d. 準備不足
e. 支援者とのコミュニケーション不足
f. プロジェクトがプラットフォームの特徴に不適
逆に言えば、クラウドファンディングに成功する企業は、これらの失敗要因をすべてクリアしている企業が大半だといえる。これらのことから、クラウドファンディングを成功させるためには、
a. 適切な目標金額の設定
b. 効果的なPR活動
c. 魅力的なリターンの提供
d. 十分な準備
e. 適切なコミュニケーション
f.プロジェクトがプラットフォームの特徴に適している
が必要ということが分かる。
クラウドファンディングは、新たな資金調達の手段として、中小企業にとっても非常に魅力的だ。クラウドファンディングの基本的な方法などを把握し、今後の資金調達の参考にしていただきたい。