売上アップの教科書

モノではなく「人」と「コト」で魅せる(POP3回目)

手書きPOPの設計図

2010年10月28日更新

こんにちは!船井総研の今野良香です。今回は、商品そのものを直接紹介するPOPではなく、間接的な方法で、より魅力的に見せるための手法についてご紹介しましょう。

通常、POPは商品名と価格、そしてキャッチコピーや商品説明文を書くことで、直接的に商品の魅力を伝える手法です。そして、この連載でご紹介している通り、商品の味や機能、効能をお客様に伝えるためには、そこにセオリーというものが必要となってきます。しかし、それでは同じ商品であれば、POPも似たものになってしまうことになります。店としては差別化を図りたいのに、POPが同じになってしまう可能性があるのです。

そこで、競合店とは絶対に同じにならずに、かつ、商品価値を高めながらその魅力をお客様に伝えるPOPを、いち早くご紹介したいと思います。

図1

私はこのPOPを、「人打ちPOP」と呼んでいます。今までは、POPに書かれる内容は商品主体でしたが、今回のPOPは店のスタッフやお客様が主体となり、該当の商品の魅力を語りかけるものです。例えば、「明太フランスパン」という商品があったとしましょう。通常であれば、「カリカリに焼いたフランスパンの上には福岡の有名明太子がたっぷり!」といった内容を書くことでしょう。しかし、私がご紹介する「人打ちPOP」は一味も二味も違います。まず、POP紙面の半分ほどを占めるのはスタッフさんの笑顔の顔写真。そして、文章はスタッフさんの体験談。「私がシフトに入ったときのお昼ゴハンはコレ!フランスパンはちょっと硬めだけど、ゆっくり噛んで食べることで食べ応えもあるし、なんといってもこのピリ辛がたまらないのです!本当ならビールのお供にしたい・・・さぁ、今日もお仕事がんばろっ!」となるのです。

このようなPOPをお客様が見ると、そのフランスパンを食べる情景が目に浮かびます。「お昼ゴハンにおすすめなのね!」や「ビールとも合うんだ!」といった情報も伝えることができます。顔写真が付いていることにより、お客様にとって信頼度も増すのです。

このような「人打ちPOP」は、まだほとんどの業界、店舗では採用されていませんので、一見すると作成事例もなく難しく感じてしまいます。しかし、売場での接客を観察していると、お客様に「これはどんな商品なの?」と尋ねられたときにスタッフさんはしっかりと受け答えをしているのです。その内容を文字にすればいいのです。

図2

「人打ちPOP」を作成する際の手順として、右のようなアンケートを行っています。本来ならば個々人にPOPを作成してもらうのがいいのですが、中にはPOPを描くのが苦手な人もいるでしょう。POPを描くのが得意な人に依頼するためにも、POPの内容となるスタッフのおすすめコメントや体験談をまとめておくのです。

あるお菓子屋さんでは早速このPOPを採用したところ、お客様との会話が増えたといいます。顔写真も掲載しているため、「もっと詳しく聞きたい!」というお客様がそのスタッフに話しかけてくれるようになったのです。

図3

POPは商品を魅力的に見せるためのツールですが、接客が完璧なお店には必要のないものでもあります。本来は、お客様との会話の中でスタッフが自らの言葉で伝え、それ以外のお話しもすることでお客様との絆を深めることが重要なのです。しかし、配置人員が少ない場合は、いくら接客レベルの高いお店であっても全てのお客様とお話しするのは不可能に近い・・・つまり、POPの本質は「接客の代用」なのです。そう考えると、スタッフが前面に出ているPOPは理にかなっているのです。

さらに、スタッフの笑顔を出したことで、商品が売れること以外にも良い点が出てきています。それは、スタッフが売場で笑顔でいる機会が圧倒的に増えたことです。自分の笑顔が売場に掲示されているので、スタッフ自身の意識が高まり、写真以上の笑顔を見せざるを得ないのです。

図4

これからは、商品自体の説明をしたPOPはもちろんのこと、「人打ちPOP」の価値が高まると考えられます。是非、このコラムをお読みいただいた皆様には、いち早く取り組んでいただきたいと思います。

プロフィール

今野 良香 (こんの りょうか)

船井総合研究所コンサルタント。成蹊大学経済学部卒業後、船井総合研究所に入社。食品製品小売業のコンサルティングに従事し、「手書きPOP」と「売り場づくり」による短期間・ローコスト・リニューアルで業績アップを実現してきた。POPおよび売り場づくりの研修も行う。著書に『誰でもすぐにつくれる!売れる「手書きPOP」のルール』など。

掲載日:2010年10月28日