売上アップの教科書
五感を重ねて、五感に訴えよう(ついで買い8回目)
2011年10月25日掲載
文:山﨑泰嗣(中小企業診断士)
入口から出口まで、五感をフルに使って楽しんでもらい
次回来店、次回注文につなげよう
たまたま行ったお店だけど「また行きたい!」、「今度はアレを注文しよう」とお客さまが思う飲食店って、どんなお店でしょうか?
もちろん、おいしい食べものと飲みものがあって、お腹が満足出来ればまた行きたいと思ってもらえるはず。でもいまの時代、そういうお店がここそこにたくさんあります。そんな中でお客さまに選ばれるお店、印象に残るメニューを提供するにはどうすればいいでしょうか。
今回のキーワードは「五感」。まずは、シズル感を重ね盛っていくアイデアです。シズル(sizzle)とは、ステーキなどが焼けるときのあのジュージューという音を表す英語。そこから派生して、その様子を見ている人が食欲をそそられる状態を「シズル感」と表現するようになりました。ステーキがさらにおいしく感じられるのは、あのジュージューという音があるから。味覚以外にも、お客さまの聴覚、嗅覚、視覚、(場合によっては触覚も)を刺激するシズル感は、店舗や食べ物に期待感を持たせ、満足して帰って頂くための重要なポイントになっています。
【五感に訴えるポイント】
(1)とにかく出来たてを早く出そう
(2)テーブルの上での変化を楽しんでもらおう
(3)入口から出口まで、五感を発揮してもらおう
五感を刺激、しかも、さまざまな感覚を重ねて刺激するメニューなんて、うちの店では難しいかなと思う方もいるかもしれませんが、実は、どんなメニューでも可能です。
シズル感でよく語られるのは、語源の通り、肉を焼くときのこと。焼いた肉を熱々の鉄板にソースをかけて提供する場合、ジュージューという音(聴覚)だけでなく、ソースの香りや匂い(嗅覚)、油やソースが弾ける様子や熱々の湯気(視覚)もあり、もうこれだけで、聴覚、嗅覚、視覚三拍子がそろっています。
シズル感の基本は、とにかく出来たてを早く出すこと。出来立てであれば、シズル感の基本とも言える、熱さや湯気、照りといったものは、あえて重ね盛らなくても揃っています。ただし、これらは時間が立つとどんどん劣化しますから、メニューの工夫をする前に、まずは出来立てを味わっていただけるようにしましょう。
この基本に加え、シズル感をさらにメニューで実現するためのポイントがあります。それはお客様のテーブルの上で「変化」を出すこと。
例えば、出来たてのお好み焼きの上にかける踊るかつお節、お客様がお箸で切ったら中からクリームが出てくるジューシークリームハンバーグ、食べている途中に中から新たなソースがでてきてソースの色と味が変わるドリアなど、「変化」を五感で感じさせる。これなら、ちょっとした工夫でどんなお店のメニュー開発でも可能なはずです。
そして次のポイントは、入口から出口まで、お客さまに五感を発揮させるということ。当たり前の話ですが、お客さまは入口から入ってテーブルにつき、食事をされ、会計をしてお帰りになります。この時、お客さまに期待感を持たせて入店していただいているか? そして帰り際、また来たいと思っていただけているか? そんなところまで、五感を働かせていこうということです。
入口には、期待感を感じさせる五感が必要です。清潔な佇まいをはじめ、おいしいものが食べられそうな雰囲気作りや、どんなものが食べられるかが一目でわかる大きなバナーPOPでもいいでしょう。入口に入った時の「いらっしゃいませ」の声かけも同様です。「この店でこれから食事をするぞ」、「おいしいものを食べるぞ」という期待感を高めるための仕掛けは、入口から始まっています。
また出口では、また来たいと思えるようなひと工夫が必要です。焼肉店では、臭いを気にしなくてもいいように、ガムやミントキャンディを配ったり、におい消しスプレーをかけるサービスをしたりしているところがあります。帰り際に改めておしぼりを出すサービスも、触覚をリフレッシュさせる効果があります。
入口、メニュー、食事で刺激し発揮された五感を、出口では通常に取り戻し、その余韻を楽しんでもらう。お店やメニューを五感で味わい楽しんでもらう、こうした工夫で、「おいしかった」「楽しかった」を強く印象づけて、次の来店、次回の注文につなげていきましょう。
掲載日:2011年10月25日